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フランメさんに背を向けて洞窟から出ると、少し離れた所に木に寄りかかっていたセンジンさんが歩いてきた俺に気づいた。


「ありがとうございます。とても有益な情報を聞けました」


俺がお礼の言葉を言うと、センジンさんは軽く返事した後来た道を引き返し始める。

その様子に何か違和感を感じつつ、俺は何も言わずに彼の後を追いかけ始める。

少し沈黙の間があったが、少ししてセンジンさんが、


「あの人は、爺さんとも話していました。俺はまだガキで難しい話で、理解できていなかったしもう記憶に話している内容は思い出せない。それでも、凄く真剣な話をしていたのは、子供ながらに分かっていた」


真っ直ぐ前を見ながらそう声を出す。

それを聞いた俺は、


「…戦鬼さんも、フランメさんもこの国の事を…亜人族の皆の事を考えていたんですね。俺が()()へ来る前から、亜人族の事を考えて動いていた…」


前を歩くセンジンさんに聞こえる様にそう言うと、


「…爺さんも、あの人も、ヴァルダ・ビステルがこの世界を変えると言っていた。…他人に押し付けている様に感じて嫌だが、今はあんただけが頼りだ。…爺さんの気持ちを、受け取って欲しい」


センジンさんがそう言ってきた。

そんなの、受け取るに決まっている。


「最善を尽くします」


俺がそう答えた後、センジンさんも俺も一言も話す事なく町まで戻った。

センジンさんの屋敷に戻ると、エルヴァンとアンリが何やら話し合っている。

どうやら、剣聖陣営にどの様な情報を流すのか話し合っている様だ。

俺が近づくと、


「おかえりなさいませヴァルダ様」

「ヴァルダ様、おかえりなさい!」


2人が出迎えてくれる。

俺は2人にお礼を言うと、一緒に剣聖側に流す情報を考え始める。


「問題は剣聖達の動きだな。センジンさん達の動きを察知した剣聖達が、鎮圧の為に剣を抜いてしまったらマズい。もう少し剣聖達を情報で操りたい気持ちはあるが、あまり長過ぎるとエルヴァン達の冒険者としての技量の問題扱いになりそうだ。エルヴァンとアンリの冒険者としての知名度は、今後俺が利用したいと思う機会がある。その為に2人の知名度を、冒険者としての技量を下げる様な事はしたくない」


俺がそう言うと、


「私はむしろ、剣聖達に仕掛けて倒してしまった方が良いのではないだろうかと思います。剣聖達が情報を流さなければ、帝都側も後手に回るかと思うのですが…」

「でもそれじゃあ、反対に剣聖さん達の連絡が無い事を不審に思った帝都の人達が先に仕掛けてくる可能性だってありますよエルヴァン様!」


エルヴァンとアンリがそう自分達の考えを言ってくる。

確かに、エルヴァンの考えは理解できるが、アンリの予測も十分に可能性がある。

帝都の指揮を誰がしているのかは分からないが、警戒しておいた方が良いだろう…。

というかエルヴァンは、むしろ剣聖と戦い為にそう言っているのではないだろうな?

俺はそう思いつつも、


「剣聖とその配下の騎士達を倒す事はせず、それでいて帝都に嘘の情報を流す様に動くのであれば、やる事は1つしかないな」


エルヴァンとアンリに思い付いた事を切り出す。

それを聞いたエルヴァンとアンリが、少し考える様な素振を見せる。

時間も惜しいから、今は2人に考えさせる時間は割くしかないな。

俺はそう思い、


「剣聖とその配下の者を、俺達の言う通りに動く操り人形にしてしまえば良い。幸いな事に、俺達にはそういうスキルを持つ者がいるではないか」


そう言い、アンリの事を見る。

俺と同じ様に、エルヴァンもアンリの事を見る。

俺とエルヴァンの視線を受けたアンリは、少し驚いた表情で自分の事を指差す。


「ぼ、僕がするんですか!?」


アンリが緊張した声でそう言う。

その言葉に俺は、


「そうだが、あまり重く受け取らなくても大丈夫だ。もし上手くスキルの効果が与えられなくても、まだ他にもやり方は考えてある。まずアンリにスキルを試して貰い、それで彼らを操る事が出来たらそのまま行動を開始し、もしダメだったら他の者にも同じスキルを使って貰う。もしくは、幻覚を見せて仲間だと思わせたリと、方法はいくらでもある。気負わずにやってくれて構わない」


アンリの緊張を和らげる為に声を掛ける。

それを聞いたアンリは少し落ち着いた様子で、


「分かりました。頑張りますッ!!」


そう意気込んだ。

それを聞いたエルヴァンは、


「しかしヴァルダ様、私達は剣聖の姿を見た事がありませんし、どの様な背丈かも性別すら知らないのですが…」


そう言ってくる。

俺はその問いに、


「まずは剣聖の配下の者を操り、そこから少しずつ調べて行くしかないだろうな。剣聖がどれほど慎重なのかは知らないが、こちらも慎重に動いていくしかない」


そう指示を出して、次に言おうとしている言葉を少し躊躇う。

本当なら2人には一緒に行動してもらいたいのだが、効率良く動くためにはこれが一番だと思っている。


「そこでだ、エルヴァンとアンリ。2人には別々で行動してもらいたい」


そう思い2人にそう提案をする。


「アンリはこのまま、剣聖達が帝都に送る情報を操作するために剣聖の配下を少しずつ操って欲しい。エルヴァンは帝都に戻り冒険者としての名を上げて欲しい。前にアンリが盗み聞きをした、帝都の騎士団長の推薦みたいな話が来る様に頑張って貰いたい」


俺がそうお願いをすると、エルヴァンとアンリは互いの事を見て、


「エルヴァン様、あまり好戦的な態度は駄目ですからね!僕がいないんですから、あまり剣だけで解決しようなんて考えちゃ駄目ですよ!」

「アンリこそ、私がいないからと言って指示を放棄して町見学だけしていてはいけないぞ。それと、私はそこまでいつも考えナシに行動していない」

「僕だってヴァルダ様の指示はしっかりと聞きますよッ!」

「その言い分だと、私だから指示を放棄していたという事だぞ?」


そんな言い合いをし始めた。

あぁ、こうやって言いたい事を互いに言い合える仲間の光景を見ると、俺と戦鬼さんやその中にシュリエルがいた時の事を思い出してしまうな。


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