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男性の体から発せられる炎を見ていると、
「閃光と女神は、詳しくは分かりませんが何かしらの兵器を作っている様です。試作品が駄目だとか、調整が難しいとか言っていました。まだ完成はしていませんが、それでも少しずつ完成に近づいているとの事です。出来る限り、早く動けると良いと思っています」
男性、フランメさんがそう言う。
早く、俺も動きたいとは思っているのだが実際はそうもいかない。
ジーグの人達を救うだけなら、すぐにでも行動を起こせることは可能だ。
だが俺はジーグの人達の他に、帝都で差別されている亜人族の人達も救いたいと思っている。
早急に、作戦を立てて行動を移さないといけないな…。
俺がそう思っていると、
「次に閃光についてだが、おそらく彼は私達と同じで「UFO」で使えていたスキルしか使えないみたいだ。ただ、女神が力添えをしていて威力などが上がっている可能性がある」
フランメさんが更に情報を伝えてくる。
俺達と同じで、スキルとかは「UFO」のまま…。
…確か、あの男は荒し行為をしている間に忽然と姿を消したよな?
もしそれが、この世界の女神に呼び出されたのと同じなら………。
俺が少し思考をしていると、
「女神は基本的にサポート程度にしか動かないつもりらしい。あまり自分が創った世界に干渉しすぎるのも、どうかと言っていたが…。今更な気がするね…」
今度は女神の事を伝えてくる。
と言っても、あまり女神の情報は無さそうだが…。
しかしフランメさんの言う通り、今更な気がしてならない。
自らが創り出した世界の、子供達とも呼べる亜人族を虐げる事に加担している分際で何を言っているのだろうか?
俺が苛立ちを感じていると、
「それと私達のこの…力…装備について話しておこう。貴方のその装備、本の中の世界と私の脈動する炎は同じ素材で作られているんですよ」
唐突にそんな事を教えてきた…。
脈動する炎、名前は確かに知っているがアレがそうなのか。
俺は最初から、本の中の世界を作る為に戦鬼さんとクエストを周回していたから実物を見るのは初めてだ。
確か脈動する炎は、防具だったような気がするな。
本の中の世界を作る際に確認していた事を思い出していると、
「この装備、クエストで取れる素材の数では10体もあの漆黒の魔術師を倒せば作れますが、本の中の世界はおそらくその数倍は必要になるくらい素材の量が違いますよね?」
フランメさんが、俺にそう聞いてくる。
俺はその問いに、
「そうですね。でも戦鬼さんがこの装備のシリーズは作るつもりが無かった様なので、素材を全て貰っていたので時間は短縮する事が出来ましたよ」
そう答える。
それを聞いたフランメさんは真剣な声色で、
「この装備に宿っている力は、おそらくこの世界では異質だ。推測だが、この力こそ女神に対抗できる力があるのではないかと思っているんだ」
そう言ってきた。
俺達自体が異世界からの来訪者ではあるが、この装備が更に異質だとフランメさんは言う。
神に対抗する力、確かに宿ってはいる。
しかし、それを自在に操れるのかは別問題である。
俺がそう思っていると、
「その表情、もしかして気づいて?」
フランメさんがやや驚いた様子で聞いてくる。
俺はその問いに対して、
「自信はありませんが、少しそう思っていた気持ちはあります。それにフランメさんの話し方からして、推測はしていました」
そう答えると、フランメさんは少し笑い、
「なるほど、確かに私の言い方的に分かりやすくはありましたね。ですが、正直に話しますと、脈動する炎は防具であり、所詮護る事しか出来ないのです。それにこの装備は何故か装備を外す事が出来ない。その所為で私はもう、長い間洞窟で暮らしていましたよ。歩けば周りの物が燃え、水場に近づけば蒸発してしまう…。もう長い間何も飲まず食わず、ここまで行くと護るでは無いですし、呪いと言っても過言では無いですよ」
そう言ったが、俺はその言葉に畏怖する。
笑いながら言う事でも無いし、飲まず食わずの状態で今生きている状態が、誰にも会えずただ黙って暗い洞窟に1人で座っている状態がずっと続いている状態が、俺には考えられない状況だった。
俺がそう思ってフランメさんを見つめていると、
「おかげで精神的に辛いね。ただ虚無の時間が続いているだけ。私は何も出来ない。今こうして話しているのも、実はやっとなんだ。今しっかりと話せているうちに、貴方に全てを伝えないと、今度はどのような状態の自分か分からないからね」
フランメさんは自虐的に笑い頭を下げる。
彼の言葉を聞いて、少し思い当たる時があった。
最初ここへ来た時、フランメさんは異音と言って良いくらい人が発する様な言語は話していなかった。
ただ音が出ていただけ…。
それで話しをされても、確かに俺は解読不能だから今話してもらった方が良いかもしれない。
俺がそう思っていると、
「出来る事なら、手助けをしてあげたいがそれは叶いそうにない。時間も…何よりこの状態ではね…」
フランメさんがそう言い、少しだけ声が変になっているのが分かった。
俺がフランメさんの声を聴いてそう思うと、
「…ヴァルダ・ビステルさん、閃光とこの世界の女神に気を付けてください。もし戦う事になったら、その時は……逾槭r縲?が逾槭r蜻シ繧薙〒謌ヲ縺」縺ヲ荳九&縺??ゅ◎縺ョ譛ャ縺ォ螳ソ縺」縺ヲ縺?k驍ェ逾槭r窶ヲ」
フランメさんはそう言いながら、肝心な所で言葉を発する事が出来なくなってしまった。
「…繧ッ繝医ぇ繧ー繧「窶ヲ縺昴m縺昴m隗」謾セ縺励※縺上l窶ヲ」
「…繝九Ε繝ォ繝ゥ繝医?繝??繧√?√け繝医ぇ繧ー繧「繧呈雰隕悶@縺ヲ縺?k謇?轤コ縺ァ遘√∪縺ァ谿コ縺呎ー励°窶ヲ」
それからフランメさんは、ただブツブツと少し視線を下げた灰の地面を見ながら異音を発し続けている。
何を言っているのかは、言葉でも分からないし表情も変化せずに呆然としている所為で理解も出来ない…。
彼は一生このままなのだろうか?
心配しつつ今俺がするべき事をする為に、フランメさんに一礼してから彼に背を向けて洞窟を出た。
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