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改めて見ると、様々な亜人族の人達がいるな。

獣が強く外見に出ている人や、ほとんど人と変わらないくらい獣の外見が見えない人もいる。

こう思うと、人と外見はあまり変わらない人達の方が帝都で見かけた気がする。

外見で奴隷として連れて行っている商人達もいるだろうし、亜人族差別が多い帝都では人とほとんど変わりない亜人族の方が売れるのだろう。

俺はそんな事を考えてしまって自分自身が嫌いな、悪い奴隷商人達の考えを察している事に嫌悪感を抱き、そこで考えを止める。

それにしても、面白い服装をしているな。

和服に近い感じだが機能性を重視しているのか丈が短い。

建物もレンガとかでは無く、木造や屋根が藁の建物すらある。

それと、あの街灯の様に一定の間隔で地面から伸びている筒も気になるが、今は置いておこう。

エルヴァン達をこれ以上待たせる訳にもいかないし、とりあえず先にそちらに行くか。

俺はそう思って歩き始めた。

自然と調和した様な雰囲気がある町を歩き、視線を少しだけ彷徨わせる。

帝都で見た亜人族は皆視線を地面に下ろしていたし、目立たない様に動きもあまり活発な感じでは無かった。

だがここにいる亜人族は、子供は楽しそうに笑い合いながら話をしたリ遊んでいたりしているし、家族と手を繋いでいる子もいる。

大人達も悔しそうな、絶望に満ちた表情をしておらず仲間との会話を笑顔でしていたり、仕事の愚痴を吐露している者もいる。

帝都の亜人族の人達にも、こんな顔をして貰いたいな。

俺はそう思って歩いていると、


「…あっ…」


ある事に気が付いて歩みを止めてしまう。


「エルヴァン達がどこにいるのか分からない」


俺はそう独り言を呟き、どうしようかと考え始める。

周りの人に聞いたら教えて貰えるだろうか?

でもエルヴァン達が交流しているセンジンという人は、このジーグでの主に近い人なんだよな?

そんな偉い人の所に、フードを深めに被っている者を案内するだろうか?

明らかに怪しいし、何をするか分からないだろう。

どうするか…。

俺がそう考えていると、


「ヴァルダ様、お迎えに来ました」


凄く丁度良いタイミングで、そんな言葉が聞こえた。

振り返ると、そこには久しぶりにあるエルヴァンの姿が見える。


「すまないな、丁度今どうすれば良いのか悩んでいた所だ。ありがとう。…それにしても、よく俺が来た事が分かったな」


俺がエルヴァンにそう言うと、エルヴァンは手で合図をしながら、


「ヴァルダ様の気配は、重みがありそれでいて穏やかな感じがします。それを感じ取りましたので、私はアンリと話し合いここへ来ました」


そう言ってくる。

俺って、そんな気配を出していたのか?

自覚は無いが、そういうモノなのだろうか?

俺はそう思いつつ、エルヴァンに促されるまま先に歩き出したエルヴァンの後を追いかける。

先程来た道を少し戻った後、少し細い路地を歩き進める。

この辺は家なのだろうが、先が簡易的だしあまり高さが無いから下手をすると他人の家が丸見えだな…。

俺はそんな事を周りの景色を見ながら思いつつ、


「アンリは無事に帰って来れていたか?俺に伝言を伝える為に結構な距離を飛んでくれていたが」


エルヴァンにそう聞くと、


「問題ありません。ただ甘いモノを食べたいと言っていたくらいでしょうか。食べても、あまり気に入ってはいなかったですが…」


エルヴァンがそう答えながら歩みを続ける。


「装備やアイテムの在庫はどうだ?何か足りなくなったら報告してくれると助かる」

「分かりました、後でアンリと相談してみます。それと装備は問題ありません。鎧の方はまず攻撃を当てられませんし、剣は一撃で斬りおとす様にしていますのであまり切れ味は落ちていません。最低限の手入れは自分でもしています」


俺が心配している事を聞くと、エルヴァンはしっかりとそう答えてくれる。

エルヴァンがそう言うのなら、俺は彼の言葉を信じてこれ以上言うのは控えよう。

俺は考えを改めて、


「それにしても、そのセンジンさんがこんな細い路地を通った先で暮らしているのか?」


エルヴァンにそう聞くと、


「はい。なんでも、大き過ぎない程度の家に住んでいる方が落ち着くらしいです」


エルヴァンがそう答える。

確かに、塔の部屋も広くはあるが実際に動いているスペースはあまり広くないな。

少し意見が合うな。

俺がそう思っていると、


「着きました」


エルヴァンが足を止め、そう言って体を脇にずらして俺を先に行かせようとしてくれる。

俺はエルヴァンの前を通り敷地内に入ると、


「ヴァルダ・ビステルです。センジンさん、いらっしゃいますか?」


玄関の扉をノックして少し大きな声を出す。

俺の呼びかけに返事は無く、ただ静寂が辺りを支配する。

…まさか留守?

いや、エルヴァンがここへ案内したという事はここにいる事は間違いない。

何かに熱中していて俺の声が聞こえていないのだろうか?

俺がそう思った瞬間、屋敷から気配が飛び出してきて俺の背後を取ろうとしてくる。

それと同時にその気配に気がついたエルヴァンが、背中に背負っている大剣を抜いた気配と音を察し、


「エルヴァンッ!大丈夫だ!剣を納めろ!」


俺はエルヴァンに止まる様に指示を出す。

おそらく今止めなかったら、容赦なくエルヴァンは背後に回った相手を斬り裂いていただろう。

俺がそう思っていると、


「…貴方が、ヴァルダ・ビステルですか?」


背後から女性の声で質問をされた。

俺の名前を知っているという事は、エルヴァンやアンリか、そのセンジンという者から聞いたのだろう。


「顔を隠していたのは謝罪しよう。港で人族の俺がいたら、凄く嫌そうな視線を送られたからな。顔が見えない様にフードを被らせてもらった。フードを取っても良いのだが、今の俺が信用できないのなら貴女がフードを取ってくれても構わない」


俺がそう言うと、ドカドカと屋敷の中から足音が聞こえてくると、


「失礼したヴァルダ・ビステル。俺が「様を付けろ…」………ヴァルダ・ビステル様。俺がセンジン・ムソウだ」


堂々と獣人が登場し挨拶をしようとして、エルヴァンに訂正されて挨拶をしてきた。

しかしそれが気にならないくらい、俺は彼の名前を聞いて寒気を感じた…。


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