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ヨルムンガンド、レヴィアタンと同じ海中で生きている大蛇。
「ヨルクッ!レヴィアタンを拘束しろッ!」
「シャァァァァッッ!」
俺がそう指示を出すと、ヨルクはレヴィアタンの体に巻き付き始める。
「ヤメロッ!」
レヴィアタンがヨルクの体から抜け出そうと暴れようとするが、ヨルクはそれすらも許さずに拘束を続ける。
ヨルムンガンドの体長は、レヴィアタンの5倍以上はある。
すばしっこさはレヴィアタンが上回っているかもしれないが、その素早さをレベルで補わせている。
それに加えて、俺は本来の召喚士としての役割を担っている。
召喚士の役割、それは契約した者を召喚するだけでは無い。
様々なバフを召喚した者に使い、契約してくれた者を強くするのだ。
前はステータス画面とか色々出てきていたが、今はヨルクの感覚が分かる。
目の前にいるレヴィアタンを拘束するのに、どの様に体を動かして拘束していくか悩んでいる様に感じる。
同時に、自身の体の大きさがあればレヴィアタンを拘束できるという自信も感じられる。
「ヨルク、レヴィアタンの首元を拘束しそのまま体に巻き付け」
俺がそう指示を出すと、ヨルクは返事をする様に声を出す。
さて、ヨルクの方はあまりバフをしなくても大丈夫そうだな。
ひとまず、噛まれたりしない様に防御系のバフを掛けておこう。
俺はそう思いつつ、レヴィアタンの近くにいたウンディーネを探し始める。
彼女に俺の事情と船にいる者達の話をして、状況を落ち着かせて貰える様に頼もう。
「ヨルク、苦しませない程度に頼む!」
俺がそう言うと、ヨルクが返事をして体の拘束を少しだけ緩める。
「ウンディーネ!話がしたい!姿を現してくれないかッ?!」
俺がそう声を張り上げるが、ウンディーネは姿を現してくれない。
先程の威圧スキルの所為で、怯えさせてしまっただろうか?
俺がそう思っていると、
「…ヒト、ナニヲ、スルツモリ?」
レヴィアタンが少し苦しそうな声を出しながらそう質問をしてきた。
ウンディーネを探す為に海を見ていた視線をレヴィアタンに向けると、レヴィアタンがヨルクに絡まれながらも俺の事を見ていた。
俺はレヴィアタンとしっかりと目を合わせて、
「俺達…というか俺と君に絡まっているヨルクは君達を殺すつもりは無い!危害を加えるつもりも無い!少しだけ、話を聞いてもらえないだろうか?」
レヴィアタンに聞こえる様に声を出す。
すると、
「レヴィ!惑わされては駄目よ!」
海面の水が突然人の形になると、レヴィアタンに忠告の言葉を放つ。
良かった、威圧スキルで気絶とかさせていたかと思っていたから、とりあえず大丈夫だった事に安堵しつつ、
「ウンディーネ、話を聞いてくれ。あの船に乗っている者達はレヴィアタン討伐を目的としていたが、俺はそんなつもりは無い。出来ればレヴィアタンの肌とか、牙とか……あっ…」
俺は自分達が危険では無い事を伝えようとしたのだが、緊張が少し解れてしまった所為か欲望を吐露してしまった…。
それに気づいた俺が慌てて口を噤むと、ウンディーネは訝しんでいる様な表情で俺の事を見てくる。
俺は仕方なく、
「俺はこの海の先にある、亜人族の国ジーグに行く為に船に乗っていました。貴女達が目的では無いです」
そう言い出すと、
「ジーグ…。何故あの国に人族が行く必要が…。まさか、あの事が人族に…」
ウンディーネが何やら思考する様な素振りをしながらそんな事を呟いている。
ジーグの事を知っているのは予想できたが、セイレーンにマーメイド、ウンディーネとレヴィアタンと海の亜人やモンスターを集めている様子を見るに、もしかして海系の亜人族の国もあったりするのだろうか?
それに呟きから察するに、反乱の事もこの人達は知っている。
参加するかは分からないが、彼らにも事情とかしっかりと聞きたい。
俺はそう思い、
「ヨルク、レヴィアタンを解放してくれ。すまなかったな、久しぶりに呼び出して色々と命令してしまって」
ヨルクにそうお願いをすると、ヨルクは少しレヴィアタンの事を見てから巻き付いていた体を離す。
レヴィアタンから体を離したヨルクが動いて俺の元に来ると、俺に体をくっ付けてくる。
蛇の皮だが大きさ故に鱗が手に当たるザラザラ感は無く、むしろ水に入っているからかツルツルスベスベしている。
ただし、手を放して海水が乾いてくると気持ち悪いが…。
ヨルク本人は良い滑り心地をしている。
俺がそう思っていると、
「ナゼ、カイホウシタ?」
レヴィアタンが不思議そうな声でそう聞いてくる。
俺の行動にウンディーネも不思議に思っているのか、睨み付ける様に俺の事をジッと見つめてくる。
「今俺は貴女を拘束し、人質として扱いウンディーネに自分の事を強制的に信用させようとしていました。俺は貴女達に信用を押し付ける気はありません。むしろ、俺は貴女達としっかりと話し合いを持って信用してもらいたいです」
俺がそう自分の気持ちを述べると、
「…信用してもらえると思っているのですか?冗談じゃないです、人族が私達亜人族に何をしたのか知っていて、よくもその様な戯言を言いましたね…」
ウンディーネが俺にそう言ってくる。
彼女が言いたい事も理解できる俺は、彼女の言葉に何も反論せずに彼女の言葉を飲み込む。
すると、
「シンヨウ、デキナイ。ケド、ハナシヲキククライハ、シテモイイトオモウ」
「レヴィッ?!」
レヴィアタンがそう進言した。
レヴィアタンの言葉が想定外だったのか、ウンディーネが驚いた声でレヴィアタンの事を呼ぶ。
「モシダマシタラ、カミコロス」
俺の事を見ながらそう言い、レヴィアタンはウンディーネの事を見る。
どうやら、レヴィアタンの方がまだ話が出来そうだな。
俺がそう思っていると、
「…レヴィに感謝する事ね」
ウンディーネがそう言って、ふんッという様に俺に背中を向けた…。
話を聞く感じではないが、まさかこの状態で話をしないといけないのだろうか?
すると、レヴィアタンが動き出す。
どうしたのだろうか?
レヴィアタンの動きを見てそう思っていると、
「ツイテコイ」
そう言って泳ぎ始めた。
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