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馬車が動き出すと、俺はお尻がこれから痛くなるのを察してアイテムが入っている袋から余っているクッションを取り出してそれを敷いた。

それにしても、馬車の中に1人というのも退屈なモノだ。

しかし、同時に考え事をするには丁度良いなと思い、俺は馬車の小窓から外の移り変わりを眺めながら考え始める。

今問題なのはジーグと帝都の戦争だろうが、それを防ぐ事は出来ないだろう。

おそらく帝都の王族などは亜人族と対談をしたり、交流を深めようとする考え自体無いと思う。

亜人族の者達も、それを理解しているからこそ戦いで自分達の意思を見せつける気でいるのだ。

俺は亜人族がこれからの未来で、自由に虐げられていない彼らを見たいから亜人族側に付く事は決定している。

だけど、そこで俺が全ての力を貸して戦いを制した所で意味はあまり無い。

元々持っていた亜人族の力の底上げをする程度の助力をして、彼らが人族に勝つ事でこそ意味があると俺は思う。

それに、人族にも亜人族を差別視していない人達がいる。

彼らを戦闘に巻き込ませたくない気持ちもある、彼らには亜人族が戦争で勝った後の人族と亜人族の橋渡しを頼みたいと思っている。

特に学園の皆が良いな、あそこの人達は貴族の家系しかいない。

そういう話し合いというか上品な対談は得意そうな気がする。

ブルクハルトさんはあまり亜人族からよく思われ無さそうに感じる。

まぁ、職業が職業だから仕方がない。

あと、騎士団長のレオノーラさんをどうにかしたいな。

あの人は亜人族を護りたいと思っているが、役職の所為で亜人族との戦いには帝都側に付いてしまう。

それは、戦力的にも話し合いや亜人族のまとめ役的にも良い事が無さすぎる。

彼女をどうにかして亜人族に取り込まないといけないが、彼女はスラム街の人達を護ろうとしているから簡単に帝都から離れようとはしないだろう。

彼女とスラム街にいる亜人族をどうにかするのも、今度の問題になってくるな。

亜人族の皆をまとめている者達が話を理解し、もう少し時間を延ばしてくれたら良いのだが…。

センジンという者のお爺さんが俺の事を知っているという事も気になるが、それよりもジーグにいる亜人族の事が気になってしまう。

亜人族が自由に過ごしている国、それはつまり俺が理想だと思っている光景ではないか。

参考にしなければいけない部分もあるだろうし、しっかりと勉強させてもらおう。

そう思っている内に外の景色が暗くなり始めると、馬車は速度を落とし始めてゆっくりと道を進んでいく。

すると、


「そろそろ野営が出来そうな広場になるので、お待ちくださいね」


馬車の前方の小窓が開き、外にいる御者がそう声をかけてきた。

俺はその声に分かりましたと返事をした後、少しして馬車が止まる。

馬車の扉が開き、御者の人がお疲れさまですと言ってくるのを聞きつつ俺は辺りを見回す。

特に怪しい気配もないし、ここは安全な場所なのだろうか?

俺がそう思っているうちに、冒険者の男が焚き火を準備し始める。

護衛の冒険者はこういう事をするのか、それに少し明るくなったから冒険者の顔が分かる様になったが、帝都の冒険者ギルドでは見た事が無い顔だ。

こういう旅の護衛専門の冒険者なのだろうか?

そうして考えている内に野営の準備が整い、俺と御者と冒険者2人が軽く食事を済ませた後、俺は馬車の中で寝てくれとお願いされて馬車に再度乗り込んだ。

その際に、薄いシーツを渡されたのだが…。


「枕にしよう…」


気温はまだ下がっていない故に、被る必要を感じずに綺麗に折りたたんで簡易的な枕にした。

御者と冒険者の2人は見張りを兼ねて外で寝るらしく、少し外から声が聞こえている。

眠気は無いが、あまりに何もする事が無く自然と眠りにつく事が出来た。

翌朝は昨夜の寝る時間が早かった所為か起きる事が早く、俺は馬車を降りて見張りをしていた冒険者に挨拶をして少し話を聞く事にした。

どうやら、彼らは様々な国を商人や旅の護衛をしながら移動している冒険者らしい。

しかしそれ故に色々と大変な事があったらしく、少し悪い商売をしている商人の護衛をしたりしていると、

少し危険な目にもあったと言っていた。

詳しく聞くとその商人達の取引の内容を知ってしまい、監視されたり命を狙われたりしたらしくあまりそういう者の護衛の仕事は受けない事にしたと言っていた。

そんな興味深い話をしている内に御者と仮眠をしていた冒険者が起きて、朝食の準備が始まってそれを食べた後すぐに出発した。

森を進み山を越えても進み続けて数日、旅を経験していない故にストレスを感じる事もあったがようやく目的地、港街テンダールに到着した。

馬車の小窓を開けて外の空気を馬車に入れると、海特有の塩の匂いを感じリアルでもあまり行かなかったが何故か懐かしく感じる。

それから馬車が止まるのを待ち、馬車が停車してから御者と2人の冒険者にお礼の言葉を言ってテンダールの様子を改めて見る。

屈強な男性が荷物を船に運び入れたり、小舟に乗って海に潜っている人もいる。

海風に晒されているからか、少し髪が軋んでいる様に感じるな。

俺はそう思いながら歩き始め、まずはジーグに行く船を探し始める。

近くにいた男性にジーグに行く為の船を聞くと、周りとは少し違う大きな船を指差して、


「あれがそうだが、次の出発は少し先かもしれないぞ」


少し気になる事を言った。

俺は男性にお礼を言うと、その船の近くに行ってみる。

近くで見ると、船が損傷している事に気がついた。

周りの船よりも損傷が激しいという事は、ジーグへの船旅は相当大変なんだろう。

俺がそう思いながらジーグ行きの船を見ていると、


「おいあんた、この船に乗りたいのか?」


損傷した船から、肩から袋をぶら下げた男性が降りてきた。


「はい。しかしここまで船が損傷していると、もしかして難しいですかね?」


俺がそう聞くと、


「もう一隻船があるから大丈夫だ。これはその船で航海している間に、修理してもらう予定だからな」


男性は俺にそう言ってくれた。

良かった、ここで立ち止まる事は無さそうだ。


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