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アンリの言葉を聞いた俺は、その場から移動する事はせずにその場で話を進める事をする。


「どうしたアンリ?エルヴァンは一緒では無いのか?」


エルヴァンと一緒じゃない様子を心配すると、アンリはこの様な姿で申し訳ありませんと謝罪してから、


「僕はヴァルダ様にお伝えする事があり、エルヴァン様と一旦別れてここまで来ました」


そう言ってくる。

とりあえず、エルヴァンが危機に陥っている訳では無い事に安堵しつつ、伝えたい事とは何だろうと考えつつ、


「場所は移動した方が良いか?人混みではないが、開けている場所だから誰かが聞いていてもおかしくないぞ」


俺がアンリにそう聞くと、アンリははいと返事をする。

一度塔に戻った方が良いな、聞かれたくない話は一番安心して出来る場所だ。

俺はそう思い、


「帰還」


そう呟いて、目の前に黒い靄を出現させてその中にアンリと共に入る。

塔に辿り着くとアンリが窓の外から浮いている島々を見て、


「少しずつ人が増えてきてますね。賑やかで楽しそうです」


そう言うと、コウモリの姿から人型の姿に変化する。

姿が変身するのを見届けると、俺は自室にアンリを伴って入ると、


「座ってくれ」


ソファにアンリを案内する。

あまり俺の自室に来慣れていないアンリは、扉に近い場所で立ったまま報告してきそうだと思ってそうしたが…。


「ありがとうございます!」


俺の予想は当たっていて、アンリは扉の前で立ち止まっていた。

セシリアやシェーファの様に、もう少し自由に動いても良いのだが…。

俺はそう思いながらアンリに案内をしたソファの向かい側に先に腰を下ろすと、それを見てからアンリが腰をソファに下ろす。


「エルヴァンとアンリは依頼でジーグへ遠征していたと聞いたが、そこで何か問題でも発生してのか?」


俺がそう話しを切り出すと、


「問題と言いますか、ヴァルダ様のお耳に入れておいた方が良いとエルヴァン様と相談してお伝えに来たんです。ジーグの方達が、帝都に亜人族の自由と人権を主張する戦いをするつもりなんです。それに気づいた帝都側も動いて、剣聖という人と騎士達がジーグに潜入しています」


アンリがそう説明してくれる。

突然の事でどういう事かまだ理解するのに時間が必要だ。


「詳しく説明してくれると助かる。突然の話でまだ整理できていない、詳細に説明してくれ」


俺がアンリにお願いすると、アンリは少し深呼吸をして、


「元々僕達はギルドからの依頼で、詳細を明かされずにジーグへ向かいました。ジーグは亜人族しかいない国で、昔は帝都があるこの大陸や他の国との交流も断っていたらしいです。しかし、亜人族の差別を知った人達が、それを正そうとジーグに攻める予定なんです。でもそれを帝都の上の人も気づいたらしく、ジーグに剣聖と隠密に行動できる騎士達を派遣してジーグの人達の行動を監視しているんです。僕とエルヴァン様の受けたギルドの依頼が、そのジーグの反乱の首謀者に近づいて情報を騎士達に伝える事でした。その状況を知った僕達は、この事をヴァルダ様にお伝えする事にして情報を集める為少しの間行動しました。そうして今は、僕とエルヴァン様の報告する真実と嘘の情報を信じて剣聖達は僕達の情報待ちの状態です。ジーグの人達にも剣聖達の情報を流し、下手に怪しい行動が見つからない様に準備を待たせている状態にしてあります。ここまで情報を操作して、僕とエルヴァン様はヴァルダ様にお伝えする状況になったと判断して僕が来ました」


丁寧に詳細を説明してくれた。

その言葉を聞きながら俺は今起こっているジーグでの状況を理解する。

完全にとは思っていないが、アンリの説明のお陰で今のジーグと帝都の状況は分かった。

それにエルヴァンとアンリが事実を知ってすぐに俺に伝えに来るのではなく、情報を操作し自分達の優位な状況にしてから俺に報告してくるという、その考えと行動の成長に感動してしまう。


「そうか、状況は理解した」


俺は一度アンリにそう言うと、少し考え込む。

今ジーグと帝都の戦争が起きた場合、明らかに負けてしまうのはジーグだろう。

帝都には実力は知らないが剣聖と呼ばれる程の者がいるし、騎士団長のレオノーラさんと彼女が率いている騎士団、それに争い事に慣れている冒険者。

これが亜人族と人族の戦争となれば、他の周辺国からも手練れの者が召集されるかもしれない。

明らかに分が悪い、結果は目に見えていると言っても過言では無いだろう。

ジーグ側は亜人族の差別を無くそうと考えている様だが、おそらくそう簡単には変えられない事だと俺は思う。

あそこまで人族が亜人族を差別している光景を見て、そんなすぐに意識改革をする事は無理だ。

俺個人としてはジーグ側の意見に賛同するが、この状況をどうするかが問題だな。

まずジーグに肩入れするのは決定事項だ。

だがその為に俺が出しゃばって動いても意味が無い。

結局俺は人族であり、人族に亜人族の力を見せつけるならジーグの者達に頑張って貰わないといけない。

しかし今のままではジーグの者達が勝てる実力は無いと思う。

俺はそう思い、


「アンリ、ジーグの人達はどれくらいの強さを誇っているんだ?1人が冒険者50人を相手に出来るくらいの強さなら少し考えが変わるが…」


アンリに質問をしてみる。

俺の問いを聞いたアンリは少し考える様な素振を見せると、


「正直、それくらいの人は数人しかいません。エルヴァン様の評価では首謀者であるセンジンさんは見込みがあるそうですが…」


質問にそう答えた。

となると、ジーグの戦力を底上げするのと同時に帝都側の戦力を削ぐ必要がある。

それに、帝都の上の者達が戦争の事を思案していると考えると問題はまだあるな。

スラム街の亜人族や奴隷達。

彼らを囮にして、ジーグの者達の勢いを消そうと考える者が絶対にいるはずだ。

そしてその者達を救おうとしてる騎士団長レオノーラさんに、何かしらの行動を起こす事が考えられる。

ヤバい、一気に問題が増えてきた…。

俺がそう思って少し焦っていると、


「そうだヴァルダ様、もう1つ報告します。ジーグの人にセンジンという人がいるんですが、その人がヴァルダ様の事を知っていました」


更にアンリが、俺を愕然とさせる事を言ってきた。


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