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冒険者ギルドを出た俺は、今貰った報酬金をブルクハルトさんの所で使おうか考えて、とりあえず今日の所は塔に戻ろうと判断し帝都の人がいない所を探して塔に戻った。

本の中の世界(ワールドブック)の塔に戻ると、まず一応塔の麓のアウラウネの様子を確認するために出向くと、そこには既に地面に埋まって少し土が盛り上がって花が咲いていた。

前に会った時も眠そうな状態だったし、地面に潜っている時は寝ているのかもしれないと思い、俺は静かにそこから離れて塔に入る。

塔に入った瞬間、


「おかえりなさいませヴァルダ様」


メヒテアが椅子から立ち上がって一礼して俺を迎えてくれる。

メヒテアとこうやって2人っきりで話すのも珍しい気がするなと思い、


「少し話さないか?」


そう切り出すと、メヒテアは少し慌てた様子でテーブルの上を叩いたりしている。

何をしているのかと思ったが、手の動きを見て何も乗っていないテーブルの上を簡易的に掃除している様だ。

少ししてメヒテアは落ち着くと、


「どうぞ。少し汚れているかもしれませんが…」


そう言って椅子をわざわざ引いてくれる。

メヒテアのそんな様子を見て、声や話し方は落ち着いているが仕草などが慌てている姿が可愛らしく感じる。


「見る限り汚れている様には見えない。あまり気にしなくても良いぞ。むしろ外に出ていた俺の方が汚れているかもしれない。すまないな」


俺が反対に申し訳なく感じてそう謝罪をすると、


「そんな事はありません。目隠しをしていても、ヴァルダ様はいつもお綺麗です。汚れている様には見えません」


メヒテアがそう言ってくれる。

これはメヒテア渾身の目隠しジョーク的なモノなのだろうか?

反応をしてあげなければ、メヒテアが恥ずかしく感じてしまわないだろうか?

俺はそう考えてしまって、どう反応したら良いのか混乱してしまう。

そこで俺は、


「メヒテア、たまにはその目隠しを取ってみないか?」


話題を少しだけずらして話を切り替えてみる。

すると、


「それは駄目です。この瞳はいくらヴァルダ様にもお見せする事は出来ません。見たら、石化の呪いが発動してしまいます」


メヒテアがそう言って、目隠しを両手で押さえる様に手を添える。

しかし、今俺はとてもメヒテアの瞳が見たいのだ。

故に俺は、


「そうか、ならばクラスチェンジ・魔法使い(ウィザード)


クラスチェンジをして、職業クラスを魔法使い(ウィザード)に変更し、異常耐性魔法とスキルを使用し石化耐性を極限まで高める。

俺がどんどんスキルや魔法を使う姿を見ていたメヒテアは、俺がそうする光景をジッと見つめていた。

内心はどう思っているか分からないが、少しだけ慌てている様な気がする。

そうして石化耐性を万全にし、


「これなら問題は無い。これでは駄目かメヒテア?」


そうメヒテアに聞いてみる。

これでも駄目だと言われてしまったら、流石に諦めるしかない。

俺がそう思っていると、


「…分かりました。しかしやはり危険な事に変わりはありません、あまり長くは駄目です」


メヒテアが目隠しを取る事を了承してくれる。

そして頭の後ろに手を伸ばして、目隠しの留め具を外す。

重力に従って目隠しがずれてメヒテアの瞳が露わになり、俺はメヒテアの瞳を見つめてしまった。

切れ長で黄金色の瞳、しかしその美しい黄金を裂く様に漆黒の瞳孔がある。

凛々しく、そして美しい瞳。

石化とは違うが、その瞳に俺は体を硬直させてしまう。

俺がそう思っていると、


「ヴァルダ様、お体は大丈夫でしょうか?」


固まってしまった俺のことを心配してか、メヒテアがそう聞いてきた。

その言葉にやっと俺は体をわずかに動かし、


「あぁ、問題はない。魔法とスキルの効果で石化はしていないし、メヒテアが心配する事はないぞ」


彼女を安心させる為にそう声を出す。

それを聞いたメヒテアは安心するように少し息を吐き出し、


「良かったです」


そう呟いた。

俺がそんなメヒテアを見つつ席に座ると、メヒテアは俺が座った所を確認した後に座る。

わざわざ俺が座るまで待っていたのか、申し訳ない事をしたな。

こう思い直してみると、セシリアやシェーファも今のメヒテアの様に俺が座る様子を確認した後に座っていたな。

これからはさっさと座るか、先に座っても良い事を伝えた方が良いな。

俺がそう思いつつ対面に座っているメヒテアを凝視していると、彼女は俺の視線に気づいて髪を弄ったり落ち着かなそうに視線を少し逸らし始める。

恥ずかしいのだろうその様子を眺めて、俺は凛々しいメヒテアが可愛らしい行動をする事に頬がだらしなく緩みそうになる。

俺はそんな自分の頬に気を付けつつ、メヒテアに最近は様々な者達が増えてきたが交流はしているのか聞き始めた。

そうして時間は過ぎていき、夕食になる時間まで彼女との話を楽しんだ後自室に戻った。

自室に戻って少し休もうと思ったのだが、俺が部屋に入って一分もしない内に扉がノックされて部屋の扉を開けるとそこには、


「お兄ちゃん、今暇?」


靜佳が満面の笑みでそう聞いてきた…。

あまりに突然の事で驚いてしまうが、特に用事が無かった俺は大丈夫だと返事をして靜佳を部屋に招き入れる。

俺の部屋に入った靜佳は、ソファに座って俺が装備を外すのを待っている。

靜佳に背を向けて装備を外していくと、凄く背後から視線を感じて、


「突然どうしたんだ靜佳?」


俺は視線を紛らわせる様に後ろにいる靜佳に質問をする。

すると、


「いや~、特に理由は無いんだけど少し話したいな~って思って」


あははと笑う声と一緒に聞こえた言葉に今はヴァルダとシュリカではなく、靜佳とその義理の兄として接しようと思い、


「たまには家族水入らずで良いかもな」


そう答えて自室でのラフな格好に着替えると、ソファに座っている靜佳の対面の位置に座る。

すると、靜佳が少し冷めたような視線を俺に送って立ち上がり、俺の座っているソファに勢いよく飛び込んだ。


「危ないぞ」


俺がそう注意をすると、


「何で隣に座ってくれないの?」


不満そうに声を出す靜佳。

俺はその問いに、


「家族として話すなら、適した距離感じゃないか?」


そう聞き返すと靜佳は、はぁ~と深いため息を吐いた…。


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