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俺が剣を鞘にしまう所を見た男が安堵の息を吐くが、見逃すつもりは無い。

ついでに俺が採取したマンドレイクと一緒に眠ってもらおう。

俺はそう思い再び煙球を取り出して男に投げつけると、煙球は割れて中身の煙が辺り拡散される。

男は座って安堵している状況から、煙を吸った事で眠ってしまいそのまま地面に倒れる様に横になって眠った。

さて、これで当分は起きる事は無いしゆっくりと彼女と話をする事が出来る。

俺はそう思って地面に埋まっているアウラウネの元に行くと、彼女は何故か怯えた様子で俺の事を窺っている。

荒っぽい事をした自覚はあるが、この人にここまで怯えられる事はしていないんだが…。

アウラウネの彼女をこれ以上怯えさせない様に気を付けつつ、


「今話しかけても大丈夫だろうか?」


出来る限り、先程男と話した声とは反対の遥かに優しい声でそう声を掛ける。

それを聞いたアウラウネは、少し俺の事をチラリと見た後にコクリと頷いた。

アウラウネが頷いたのを確認した俺は、


「このままここに居ても、おそらくあの男の様にまた貴女を利用しようとする人が現れます。あの男の取引相手が分かれば良いのですが、貴女は見た事あります?」


アウラウネにそう質問をしてみる。

取引相手が分かれば良いのだが、実際に捕まえる事は出来るか不安だ。

帝都には人が多すぎるし、商人含め護衛の冒険者など様々な人が行き来をしている。

探し出すのは簡単ではないだろう。

それとも特徴だけでも分かれば、騎士団に探し出してもらう事とかも出来るのだろうか?

俺がそう思っていると、


「見た事は無い」


アウラウネが俺の質問に答えてくれた。

やはり情報は無いか、その取引相手は慎重に動いているのだな。


「そうですか。…あの男は俺が連れて行きますけど、おそらくあの男の様にまた貴女を強制的に脅して働かせようとする人が現れると思います。ここから離れた場所に移動した方が良いですよ」


俺がこれから起きるであろう事を話すと、


「まだ移動できない。手と足がまだ成長しきっていないから、移動する術がない」


アウラウネが地面から手を出してそう言ってきた。

なるほど、だから逃げ出す事が出来ないのか。

俺はアウラウネの言葉を聞いて、


「なら、2つ提案させてください。ここから貴女を抱えて俺が他の森に移動させるか、もしくは俺の仲間としてこことは別の場所に移動するか。貴女を利用している者を捕まえる事が一番かもしれないんですけど、情報が不足していて可能性が低いですからこの手段は駄目だと判断します」


少し躊躇いつつも今彼女を助ける事が出来る方法を提案させてもらう。

すると、


「ここの森、気に入ってる。それにこの土、とても私に適している。だから、出来ればこの土に埋まっていたい」


アウラウネが地面に視線を向けてそう言ってくる。

移動したくないという事か、ならこの方法しか俺には考えられない。

というか、彼女を仲間にしたい。


「なら、この土ごと俺の住んでいる場所に移動しないか?」


俺がそう提案をしてみると、彼女は俺の事を見て次に地面の事を見た。

そして、


「そんな事出来るの?」


首を傾げて質問をしてきた。

俺はそんな彼女の問いに、


「出来ます。ただ貴女を連れていくのに、仮契約が必要だからそれを了承してくれれば…」


しっかりとそう答える。

俺の言葉を聞いた彼女は、


「じゃあ、お願いします」


すぐにそう返答をした。


「クラスチェンジ・召喚士(サモナー)


俺はアウラウネの返事を聞くと、すぐにクラスを変えて本の中の世界(ワールドブック)を装備し仮契約を行い始める。

仮契約をあっさりと済ませると、


「これで良いの?」


アウラウネがそう聞いてくる。

俺はその問いに頷き、


「はい。後はここの土を持ってある程度掘って持ち帰り、貴女を移動させれば終わりです。他のマンドレイクとかは、連れて行かなくても大丈夫です?」


これからする事を説明し、他にも周りに生えているであろうマンドレイクの事を聞いてみる。

すると、


「他のマンドレイクはまだ自我が無い植物。それを抜かれてしまうのは、仕方がない。だから、大丈夫」


アウラウネが特に気にしていない様子でそう答えた。

彼女がそう言うのなら、彼女だけを連れて行こうと思い、


「帰還」


塔に戻るために、黒い靄を出現させる。

そこで気づいた、アウラウネを連れて行くのに彼女を担がなければいけない事に。


「す、すまないアウラウネ。この中に入るのに貴女を抱き上げないといけないのだが、問題無いですか?」


俺がそう聞くとアウラウネは、


「大丈夫。でもゆっくり抜いて。根は繊細だから」


頷いてそう言ってくれる。

注意事項を聞いた俺はしゃがみ込んで彼女の脇に手を差し入れると、彼女の体をゆっくりと持ち上げる。

重い訳では無いが、彼女の下半身の方が土から離れたくないのか抵抗を感じる。

そうしてゆっくりと抱き上げた結果、


「なるほど、こうなってるんですか」

「そう。もっと栄養欲しい」


アウラウネの全貌を確認し、俺は彼女が地面に埋まっている状況を理解した。

彼女の体は既に人の姿になっているのだが、手の指先が根の様になっているのと同じで下半身もまだ人の部分と植物の部分があったのだ。

太股までは人の部分に形作られているが、膝上辺りから根の部分になっている。

全体的に痩せているのか細い体に、根の部分が更に細い所為で儚く見えてしまう。

なるほど、これでは逃げる事は出来ないだろう。

俺がそう思っていると、


「あの、落ち着かないし辛いので早めに土に埋めてください」


アウラウネがそうお願いしてくる言葉を聞き、俺は急いで靄の中に入り塔へと帰還する。

塔の麓に到着すると、とりあえず俺は土をある程度掘ると彼女をそこに座らせて、もう一度俺は靄を通って外の世界に戻る。

そこから更に森の土を掘って集めると、また塔の麓に戻って森の土をアウラウネに被せて埋めてあげる。

そうしてとりあえず頭だけ地面から出している状態にすると、


「ありがとう。後は自分で潜れるから大丈夫」


アウラウネはお礼を言ってきた。


「そうか。………セシリア」

「はい」


俺がセシリアを呼ぶと、彼女はすぐに返事をして側に現れた。


「彼女の事をよろしく頼む。俺はまだ外の世界に用事があってな、彼女に色々と説明してあげてくれ」

「かしこまりました」


俺がセシリアにそうお願いをすると、セシリアが一礼してお願いを聞いてくれた。

そうして俺が外の世界に戻ろうと靄に入る瞬間、


「ありがとう」


後ろから聞こえてくるお礼の言葉に、俺は助けて良かったと思い外の世界に戻った。


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