表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/501

175頁

俺は草むらから抜け出して姿を現すと、怪しい男とアウラウネが俺に気付いて視線を向けてくる。


「お前、今の話聞いてたな?」


怪しい男が短剣の柄に手を伸ばしながらそう聞いてきた。

俺は男の言葉に、


「あぁ。事情は詳しく知らないが、彼女があんたに強制的に何かをさせられているのは理解しているつもりだ」


そう答えた。

すると、


「チッ、なら帰す訳にはいかねえな。お前がこの事を話すと、俺は商売が出来ねえんだ」


舌打ちをして短剣を抜いてそう言う男。

商売、マンドレイクを売るという事か?

しかし、目の前の男はマンドレイクよりも抜いた者を探していた様な気がする。

俺が男の言葉を聞いてそう考えると、


「変な正義感か知らねえが、この事に首を突っ込むんじゃなかったな」


男がそう言ってくる。

俺は男の言葉に、


「正義感かどうかは分からないが、その人が苦しそうだった。今の状況が苦しいなら、解放してあげたいと思っただけだ。その過程で、あんたが邪魔をするなら倒すまで」


アウラウネの事を手で示し、男に向かって冷たい声で答える。

俺の言葉を聞いた男がアウラウネを一瞥すると、


「ただの植物に何言ってんだお前?気でも狂ってるのか?」


馬鹿にする様な表情と声でそう言ってきた。


「俺からすれば、こんな可愛い子を植物だと接しているあんたの方がどうかしてると思うがな」


俺も口の端を上げて、少し相手を挑発してみる。

案の定、


「その挑発、後悔させてやるッ!」


男は短剣を手に俺に突撃してくる。

動きが速い所を見ると、ただの商人とか犯罪者ではなさそうだ。

俺がそう観察している内に男が目の前まで迫ってくる。

彼の表情を見ると、俺が一切動かないからか下品な笑みを浮かべているのがよく見える…。

そうして男から刺突されるのだが、俺の防御力の方が上だったらしく短剣の方が負けて軌道が逸れてしまい、男が刺突の体勢のまま俺の脇腹の方に滑る様に移動している。

しかし、せっかく向こうから近づいてきたのだ。

まずは一発入れよう。

俺はそう思って拳を握り軽く腕を振り下ろして男の背中を殴りつけると、


「ご…ォ…」


短く息が吐かれて男性が地面に激突する。

土煙を少し舞い上がらせて男が地に伏せてしまい、俺は足元に倒れた男が邪魔で蹴り飛ばす。

すると、


「がッ…」


俺が蹴り飛ばしたおかげで意識が覚醒したのか、男は声を出して転がっていく。

死なない程度に攻撃しているが、これなら先程戦ったオークの方が断然強かったな。

起き上がろうと動き出した男を見つつそう思っていると、


「な、何が…何が起きた?」


男は混乱してそう呟きながら体を起こして地面に座り込む。

俺はそんな男に歩いて近づくと、


「少し聞きたい事がある、答えろ。拒否をしたら、その瞬間に首は体から離れてると思った方が良い」


剣を抜いて、未だに呆けている男の首に剣を当てて話を切り出す。

すると、ようやく自身が陥っている状況を思い出したのか男が恐怖に染まった表情で、


「こ、殺さないでくれ…」


命乞いをしてきた。


「早く話せ」


俺がそう短く声を出すと、男は首筋に当たっている俺の剣を見る。

その表情は、俺が剣を振る事を恐れている様だ。

俺が剣を少し動かすと、


「わ、分かった!何が聞きたいッ?!」


男が慌ててそう聞いてくる。


「まずあんたが彼女を利用して何をしていたのか答えろ」


俺が質問をすると、


「お、俺はあの植ぶ…」


男がアウラウネを植物と呼ぼうとした瞬間、僅かに剣に力を籠める。

すると剣が僅かに動いて、男の首筋に刃が当たって血が少し垂れる。


「あ、あの女を利用していたのは、マンドレイクを育てるのにあいつの力が必要だったんだ!」


男が痛みで訂正をすると、俺の質問にそう答えた。


「育てる?何故そんな事をした?」


俺が更に追及をすると、男は頭を少しだけ左右に振り、


「俺も依頼されただけなんだ!マンドレイクの適した飼育環境と、その方法をッ!しっかりと飼育して納品すれば、言い値で取引するって!それに乗っかっただけなんだッ!」


質問にそう答えてきた。

しかし、それを聞いても謎は多い。


「マンドレイクは、抜いた時に出す声で周囲の者を死に至らしめる事が出来る。あんたは自分で抜いていた訳では無いな?」


俺が更にそう質問をすると、男は剣を気にしながら首を縦に振るい、


「そ、そうだ!冒険者ギルドで高い報酬を提示して依頼を受けさせて、そこに大した処理方法を知らない冒険者が報酬目当てに群がってくる!抜いた瞬間、あいつらは死ぬか気絶をする!その隙に俺は予め用意してあった血をマンドレイクに掛ける!それでマンドレイクは大人しくなる!」


少し元気を取り戻した様に饒舌に答えてくれる。

つまり、俺の様な第二級冒険者になったばかりの冒険者とか、俺みたいな金欠の冒険者が良い餌になった訳だ。


「死んだり気絶した冒険者はどうした?」


あまり興味は無いが、この男をどうするか考える為にそう聞く。

すると、俺の質問を聞いた男はゆっくりと動いて自身の腹辺りを指差すと、


「死んでても生きてても、装備や持ち物は頂いた!この装備も、死んだ冒険者が使ってた物だ!いらねえ物は売っちまった!」


そう答えてくる。

冒険者ギルドに連れて行けば、報奨金とか貰えるだろうか?

結構悪い事をしているし、この事を聞けば冒険者ギルドの犠牲を未然に防ぐ事が出来て向こうは感謝するだろう。

とりあえず、殺さない方が良いかもしれない。

俺は目の前で怯えている男をとりあえず殺さないと決め、


「それで、彼女があんたみたいな奴に従っている理由はなんだ?」


アウラウネの事をチラリと見て、改めてそう聞く。

その言葉に男は、


「あいつは元奴隷なんだ!しかも主から逃げ出したな!取引相手からそれで脅せば言いなり出来るだろうって言われたんだ!あいつに関しては、俺はあまり情報を持って無い!それに俺も取引相手の事はあまり知らねえんだ!」


そんな事を答えたのだ。

元奴隷、しかも逃げ出した。

それだけで、彼女が脅しの言葉に屈するのは容易に理解できた。

この男の取引相手の事を調べたいが、目の前の男自身もその者の事を知らないという事はこれ以上は調べようがない。

この男を解放すると見せかけて尾行し、取引相手を探し出す事も出来るかもしれない。

俺はそう思考しながら男から剣を引いて鞘に納めると、男は安堵の表情でため息を吐いた。


読んでくださった皆様、ありがとうございます!

ブックマークしてくださった方、ありがとうございます!

評価や感想、ブックマークをしてくださると嬉しいです。

誤字脱字がありましたら、感想などで報告してくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ