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オークの振り払いを屈んで避けると、今度は蹴りが飛んでくる。
俺がそれを躱すと、次は盾で俺の事を吹き飛ばそうとしてくる。
それを剣で受け止めると、大剣が勢いよく振り下ろされる。
エルヴァンがいたら、嬉しがりそうな相手だった。
単純な力だけでなく、様々な戦いを経験し成長するオーク。
知性があり会話が出来たなら、欲しい逸材だった。
だが俺も生きていく為に、そして亜人族を保護するお金としてその命を頂くとしよう。
俺はそう思い、一気に攻撃を仕掛ける!
剣を振るうと、オークは盾で攻撃を防ごうとしてくる。
しかし、
「ガア゛ッ!?!?」
盾は俺の振り払いで上部を横に切断され、オークが持つには心もとない大きさになってしまった。
その事で盾を捨てたオークは、大剣を両手で握りしめると、
「ガア゛ア゛ァァァァッッ!!」
咆哮しながら俺に向かって振り下ろしてきた。
俺がそれを剣で受け止めると、流石に全力の攻撃を受け止められた事に驚いたのかオークが一歩だけ後ろに片足を引いた。
そのお陰でオークと俺の体の間に隙間が発生し、俺は片手剣である振り回しの良さを活かしてその空間に滑り込ませて剣を振るい、オークの両腕を切断する。
剣で斬られた痛みにオークが声を上げるが、俺は更にオークの後ろに移動する様に跳びながらオークの頭を刎ねた。
オークの頭を刎ねた俺は、少しオークから離れると少ししてドシンッと音が聞こえて頭が無いオークの体が地に伏せた。
面白いモンスターだった、本当に会話が出来ないのが惜しい…。
俺はそう思いつつ、刎ね飛ばしたオークの頭を掴み体の元に置く。
流石に盗賊達みたいに放置しておくのはマズいな、他の生き物のエサになる…。
でも持ち運ぶには図体が大きくて邪魔になるし…。
俺はそう考えて、
「そうか、どうせ後で運ぶんだから盗賊達の所に置いておけばいいのか」
オークの死体を持ち上げると、それを持って駆け出して先程の気絶させた盗賊達の元へ戻った。
盗賊達の元に戻るが、彼らは未だに気絶しているらしく地面に転がっている状態だ。
下手にオークの死体が荒らされない様に、オークの死体を囲む様に盗賊達を配置し直して俺はマンドレイクの採取をする為に森へと急ぐ。
マンドレイクを見つけた森に辿り着くと、前回見た花を探して回る。
前回は酷い目に合っているから、しっかりと用心しないといけない。
俺はそう思いつつ花を探していると、
「見つけた」
見覚えのある花を見つけたのだが、この花の主が前回あったマンドレイクなのか完全な別人なのか分からない事に俺は、自分の考えがちゃんとしていなかった事に気付いて愕然とする。
仕方がない、即死耐性はあるから引き抜いてからどうにかしよう。
俺はそう思い、あらかじめ回復薬を準備した後に花を雑に掴むと、一気に引き抜いた。
瞬間、
「キィヤァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!」
全身を貫通するんではないかと言っても良いくらいの甲高い悲鳴が聞こえ、俺はまた意識を失う程の痛みを感じた。
しかし、即死はしていない故にこの悲鳴をどうにかしてしまえば依頼は達成できる!
俺は近くに置いてあった回復薬を一気に呷ると、少し人型に見える根の口部分を手で押さえてみる。
少し声量が下がるものの、それでも聞こえてしまう絶叫にこれではダメだろうと考え、
「アイテムで使えそうな物…」
地面に無造作に置いたマンドレイクの根の口の部分を片手で押さえると、もう片方の手でアイテムが入っている袋を弄る。
回復薬を飲んだが、痛みが中々引かない…。
ある程度思いつくアイテムを思い浮かべるが、痛みの苦痛の所為で考えが上手く纏まらない…。
すると、手に当たるガラスの球の感触に俺は一か八かで試してみようとアイテムを取り出す。
毒煙球、投げた相手や物にぶつかるとガラスが割れて中の煙が拡散されるアイテム。
電球の様な丸いガラスの中に紫色の煙が漂っている。
…煙球の事も思い浮かべたが、種類が多いから結構な数のアイテム選択になっている様だ…。
しかし、今必要なのは毒よりも睡眠や麻痺などの煙球が欲しい。
俺はそう思い改めて袋を漁り、コロコロと手に当たるガラスの球体を掴むと今度は欲しいと思っていた睡眠煙球。
今度はある程度考えていただけあって、しっかりと欲しいアイテムが掴めた。
それをすぐ目の前のマンドレイクに当たる様に煙球を投げると、ガラスが割れ中身の水色よりももう少し薄い煙が辺りに拡散する。
投げたプレイヤーに効果が無いのは、この世界に来ても変わりないか。
俺は眠っているのか、静かになったマンドレイクを見ながらそう思いアイテムとして袋の中にマンドレイクを入れる。
すると、
「ふぁ~」
「あ゛…」
前に聞いた欠伸の声に、俺はまたもや体力が削られて死にかける…。
見ると、少し離れた地面から胸の下辺りまで飛び出しているマンドレイク改め、アウラウネが姿を現していた。
急いで回復薬を飲んで体の激痛と倦怠感から回復をすると、俺はアウラウネの姿を確認する。
こう思うと、面白い外見をしている。
上半身は人の姿に近いのだが、腕の先は植物の根に近い見た目をしている。
下半身はどうなっているのだろうか?
俺はそう思っていると、
「??」
アウラウネが周囲を見て何故か首を傾げ、そのまま上半身をぐでーっと地面にくっ付ける。
何をしているのだろうか?
アウラウネの様子を見ながらそう思っていると、
「あ゛?」
俺とアウラウネよりも森の奥から、何やら怪しい男が姿を現した。
何かを警戒しているのか、周囲を見回しながらアウラウネに近づいていくと、
「おら、目を覚ませ」
小瓶に入っている赤黒い液体とアウラウネに浴びせると、アウラウネはむくりと起き上がり、
「…何の様ですかぁ?」
怪しい男にそう質問をした。
「何の用じゃねえ!お前の仲間が引っこ抜かれただろ?なら、引っこ抜いた奴の死体が倒れてるはずだ。そいつの死体はどこだ?」
怪しい男がそう聞くと、アウラウネは首を左右に振るい、
「私も知りません」
そう答えた。
ん~、これはどう見ればいいのだろうか?
怪しい男が悪い事をしているのは理解できるが、あのアウラウネはどういうつもりで男と協力しているのだろう?
俺が疑問に思っていると、
「チッ…、血の与え損かよ」
男性がそう言って悪態を吐く。
アウラウネに浴びせた液体は、血だったのか。
すると、
「人、傷つけたくない。静かに寝てたい」
アウラウネがそう呟いたのが聞こえた。
どうやら、強制させられている様だ。
なら、解放させてあげよう。
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