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170頁

時は遡り、エルヴァン達がジーグへ来て初めてセンジン・ムソウの屋敷に案内された日。


「あの御方に勝つ事は出来ないだろう」


エルヴァンの、自分の主の誇らしさと自身の力不足が混ざった複雑な声で話した言葉を聞いたセンジンは、


「大男、あんたと剣を交えて理解した。ジーグで強いと認められていた俺より遥かに強い奴らが、帝都とかには大勢いるって事に」


そう言って、ため息を吐いた後に笑う。

それを聞いたアンリが、


「それは間違っています。本気を出したエルヴァン様に勝てる人は、帝都にはいません!」


訂正の言葉をセンジンに言う。

それを聞いたセンジンは首を振り、


「気分を害したのなら悪い。だが、大男程ではないにしろ、俺よりも強い奴らはいるって事だろう?」


アンリに謝罪をして、言葉を訂正する。

センジンの言葉を聞いたエルヴァンは少し考え、


「正直な話をすれば、貴様ほどの強さの者はそう多くは無い。実際に戦った事は無いが、騎士団団長の女性と、剣聖、後は互角くらいの者達が冒険者ギルドで働いている」


事実を教える。

それを聞いたセンジンは、


「その中でも偉才なのは、おそらく騎士団団長と剣聖だろうな。俺でも勝てないとなると、まだまだ問題は山積みだ~」


そう嘆いて、縁側の床に寝そべる。

センジンの言葉を聞いたアンリは、


「何が問題なんですか?帝都にエルヴァン様みたいな自分より強い人と戦う為に行くんですか?」


そう質問をした。

アンリの質問を聞いたセンジンは寝そべった状態のまま、


「今俺達は帝都に虐げられている同胞を助ける為に準…」

「センジン様ッッ!!」


特に気にした様子も無く答えようとして、従者であるユキに怒鳴られて遮られてしまう。

そんなユキの言葉を聞いてから、少しの間何故怒られたのか考えた後、


「あぁぁぁぁ~~~~ッッッ!!」


自分がしでかした事を理解して、絶叫に近い叫び声を上げてしまう。

センジンのそんな声に、エルヴァンとアンリは驚いて耳を塞ぐ。

近隣住民も一瞬センジンの声に驚いて動きを止めてしまうが、どうせいつものユキに叱られているのだろうと察してすぐに自分達のする事を再開する。

少ししてセンジンは、


「そ、そのだな?俺はこの先もっとな?強さも必要だが皆を導いて行くな?」


何を言いたいのか理解出来ない程、意味が分からない言葉を言い始める。

自身でも何を言っているのか理解できていないのか、言葉の端々に疑問符が付けられているのが証拠だ。

すると、


「………センジン様…」


屋敷の奥からため息と共に、主の慌てている姿に無駄に状況を悪くしているだろうと呆れてしまう。

そんなユキの声を聞いたセンジンは、自分を見てくるエルヴァンとアンリを見て、


「…ここで言っても、後でバレて制圧されても一緒だろうなぁ~」


そう言って落ち込む様な素振を見せつつ、心ではある決心をするセンジン。

そして、


「あんたら、剣聖との繋がりはあるか?」


エルヴァンとアンリにそう質問をした。

それを聞いたエルヴァンは、


「いや」


短く返事をするとセンジンは更に、


「それは、剣に誓えるか?」


エルヴァンにそう聞いた。

センジンのその問いに、


「構わない。私とアンリは剣聖との繋がりは無いからな」


そう答えた。

その言葉を聞いたセンジンは一度大きく深呼吸をすると、


「これから話す事は、他言無用で頼む」


そう言い放った。

センジンのその短い言葉に、緊張と決意を感じたエルヴァンとアンリは頷き、


「了解した」

「分かりました」


センジンにしっかりと返事をする。

2人の返事を聞いたセンジンは少し周りを警戒しつつ、


「俺達ジーグの亜人族は、帝都や周辺諸国にいる虐げられている亜人族を助ける事を考えている」


エルヴァンとアンリに、今計画している事の内容を話した。

それを聞いたエルヴァンは、


「亜人族としては、それは良い事だろう。しかし、その後はどうするのだ?」


仮に救出できた時の、次の行動を質問する。

それを聞いたセンジンは決意ある表情をし、


「亜人族に力がある事を証明し、1つの国として認めて貰った後に貿易を含めた交流を絶つ」


そう宣言をする。

更に続けて、


「この話はジーグの亜人族全てが承諾している。人族と亜人族は相容れない者同士だ、これ以上同胞が虐げられている事を長引かせちゃいけねえんだ」


そう言う。

その言葉を聞いたエルヴァンは、帝都で虐げられていた亜人族の者達を思い出し、更に亜人族を虐げていた者達の事を思い出し、


「おそらく、交流を絶つ事は簡単ではない。人族は亜人族を虐げ、物として扱う事が当たり前になっている。そんな状態を維持する事が出来なくなると、人族はまた亜人族を捕まえようとするだろう」


そう宣言に近い事を言う。

まだ帝都での生活は短いエルヴァンだが、それでもあの状況から亜人族がいなくなった際の人族が簡単に諦めないと予想する事が出来る。


「その時にはセンジン、貴様やジーグの者達はどの様に人族に対応するつもりだ?」


エルヴァンがそう質問をすると、センジンは自身の胸を叩き、


「それなら、戦うまでよッ!」


咆える様に決意を声にする。

しかしその決意の言葉は、あまりにも負けが見えてしまっている。

エルヴァンはそう思い、


「帝都や周辺の国の騎士達、剣聖、帝都の騎士団団長。それだけで戦力差は大きい、このジーグで戦える者はそれほど多いのか?」


核心を突く事を切り出す。

先程も同じ様な事を話したが、センジンが既に実力が剣聖に負けている時点で、ジーグの戦力はおおよそ把握できる。

心配というよりも、あまりにも後が分かり切った未来を想像出来てしまう状況にエルヴァンはため息が出そうになる。

エルヴァンの質問を聞いたセンジンは表情を歪めて、


「戦える奴らは全員だ。男も女も子供も老人も関係ねぇ」


そう言う。

その言葉には決意とは全然違う、後悔の気持ちしか籠っていない様に感じたエルヴァン。

2人の言葉を聞いていたアンリもそれは感じ取る事が出来、屋敷の奥で控えていたユキはセンジンと同じ様に表情を歪める。

しかしそんなセンジンにエルヴァンは、


「ただ死ぬ為に戦うのか?」


静かに現実を言い放った。


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