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バルドゥに頼んで女性達を綺麗にしてもらっている間、俺は本の中の世界を開いて悩んでいた。
それは、どうやって契約して塔へ連れて行けば良いのかという問題があったからだ。
「UFO」の時は、契約出来そうになったらアイコンが出たから簡単だったんだ。
だが今はアイコンが出て来ない。
どうすれば良いのか必死に考えている。
とりあえず、何かきっかけでもあれば良いなと願いながら開いていく。
そうしてページを捲っている内に、ある事に気が付いた。
それは、契約しているモンスターのページの隅だけが、紙の質が変わっているのだ。
…これがもしかしたら契約のヒントになるのではないだろうか?
俺はそう思いながら、他のモンスターのページも確認した後、それとは全く違うアイテム倉庫欄を確認する。
すると俺の予想は当たっており、紙の質が変わっているのは契約したモンスターの情報が書かれているページだけだ。
とりあえず、この紙の意味を理解しないとな。
俺がそう思っていると、
「ひゃぁ~!そんな所触らないで下さい!」
「しっかりと綺麗にして下さい!でないと、匂いで他の者達に悪い印象を与えてしまうんですから!それにヴァルダ様の塔へ行くんですから、身嗜みは綺麗にしないといけません!」
女性の悲鳴とバルドゥが女性に厳しく言っている声が聞こえた。
…バルドゥ、お前はある意味主人公だな。
女性とのハプニングとか、ある意味お約束だしな。
俺は何とも言えない気持ちになりながら、空白のページを開く。
このページはアイテム倉庫にも使えるしモンスター契約でも使える、拡張ページと呼ばれているモノだ。
俺は拡張ページの隅を指で摘み、少し緊張しながら切る。
すると、まるで切れる様に出来ているかの様に綺麗に切る事が出来た。
俺は本の中の世界の状態を調べるが、破損状態になっていない事に確信する。
これで契約できると。
女性は全部で6人だったな、先にもう切っておこう。
そうしていると、
「ヴァルダ様、準備が出来ました」
後ろからバルドゥの声が聞こえた。
振り返るとゴブリンの体液は洗い流され、乱れた髪も綺麗に梳かされている女性達が並んで立っている。
「そうか。では貴女達は利き手を出して下さい。これから一時契約をします」
俺がそう言うと、女性達がそれぞれの利き手を伸ばす。
俺は女性達に近づき、女性達の手のひらに本の中の世界の紙の端を押し付ける。
すると、本の中の世界の拡張ページに女性達の個人情報などが記載されていく。
手のひらを見ると、契約印が刻まれている。
どうやら、成功した様だ。
ちなみに一時契約が手のひらなのを知っていたのかは、「UFO」の設定でそう出来たのを知っていたからだ。
それと正式な契約なら、契約印を心臓の位置にする様に設定しておいた。
う~む、もう少しこういうシステム的な情報とか知りたいな。
出来れば他のプレイヤーがいればいいのだが、今現在はそれらしき人は見ていないしな。
俺は別に特別な人間では無い、故にこの世界には俺以外にも「UFO」のプレイヤーは存在するはずだ。
まずはその人達と接触して友好関係を結び、情報収集をしないといけないな。
やる事がどんどん増えてくるな。
俺はそう思いつつ、
「契約は終了した。とりあえず、これから貴女達は俺の支配下に置かれる。それと同時に安全を保証しよう」
女性達にそう語り掛け、
「そして、これから俺は貴女達の村に戻って遺体の弔いをするが、付いて来るか?」
更にそう問いかける。
すると、女性達は少し体を震わせながらこくりと頷く。
しかし、
「あの、ブラム村の人がもし来ていたら、すぐに身を隠したいのですけど…」
1人の女性がそう言う。
まぁ、それは仕方がないな。
「分かりました。バルドゥ、気配察知のスキルを最大限活用して警戒をするんだ」
俺がバルドゥに指示を出すと、
「分かりました!」
バルドゥが大きな声で返事をする。
その後、俺達は移動を開始した。
流石に女性達に走らせるのは辛いだろうから歩いているのだが、走っている時とはスピードが違う所為で着くのが少し遅くなった。
すると、村が遠目で見ていている位置で、
「人の気配です。おそらく村の現状を確認しに来たのかもしれません。数は2人です」
バルドゥが声を出す。
流石にゆっくりとし過ぎてしまったか…。
俺はそう思いながら、
「人がいる様なので、貴女達には先に塔へ案内します。貴女達の村はまた後でも良いですか?」
女性達にそう質問すると、皆頷いてくれる。
俺は本の中の世界を開き、
「帰還」
塔へ帰るための言葉を発する。
すると、出てきた時と同じように黒いモノが出てくる。
その光景に女性達が怯えるのが分かったが、
「大丈夫ですよ。この中に入ればいいだけですので」
バルドゥがそう言って体の半分を黒いモノに入れて、大丈夫だとアピールしてから通った。
すると、女性達も怯えながら黒いモノに入っていく。
それにしても、これは何なんだろうな?
俺はそう思いながら、女性達が全員塔へ行くのを見ながら黒いモノに目を向ける。
何て言うか、靄よりもハッキリとはしているが扉みたいに形作られている訳でも無い。
言うなれば、空間に穴が出来た様な感じだ。
俺が穴を見ている間に女性達が全員穴に入り切ったのを確認して、俺も中に入る。
そして出た場所は、塔から少し離れた空中に浮いている島の1つだ。
ここは草原島だ。
主に草原に生息しているモンスターをここに住んで貰っている。
バルドゥもこの草原島で家を建てて暮らしている。
この草原島の他にも、様々な島があるのだが今は置いておこう。
俺がそう思っていると、
「お帰りなさいませ。ヴァルダ様」
いつの間にか姿を表したシェーファとセシリアが俺に頭を下げてくる。
「あぁ。塔の問題は無かったか?」
俺がそう質問をすると、
「はい。何も問題はありません」
シェーファが答えてくれる。
すると、
「ヴァルダ様、その女達は?」
セシリアが女性達の事を指差しながら質問をしてくる。
「失礼だから指を指すのは止めなさい。彼女達は塔の外でゴブリンに襲われていたのを助けたんだ。詳しい話はバルドゥに聞いてくれ。それと、塔の外の世界の状況の説明は俺からする。それまで待っていてくれ」
俺がセシリアの質問に答えると、シェーファとセシリアは頭を下げた。
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