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帝都に戻った俺は、道具屋などに寄って必要な物を揃える。
その後、俺はアンジェの指輪を装備し姿を消して帝都を出ると、近くの森へ行き資源の調達に勤しむ。
太陽も結構な高さまで昇っている頃、俺はある程度調達できたアイテムを確認して満足をした後塔の世界へ戻る事にし、帝都に戻った後に人がいない空き地で塔へと帰還した。
塔に戻った俺は、
「セシリア、シュリカはどこにいる?」
セシリアを呼ぶと、
「今はヴァルダ様が案内されました自室におります」
彼女が姿を現して、シュリカの居場所を教えてくれる。
「ありがとう。わざわざ呼び出してすまなかったな。仕事に戻ってくれ」
俺が感謝の言葉を口にすると、セシリアは一礼をして姿を消す。
靜佳の部屋に行く為に塔の階段を上っていると、窓から近くを漂っていた畑が目に入り、そこに少し怯えられながらも説明を聞いているのであろうルミルフルの姿と、畑のまだ耕されていない所で追いかけ合いをしているサールとソル、そんな2人をアワアワしながら見ているヴィアンが見えた。
その光景に少し笑った後、階段を上り俺は靜佳の部屋の前にやって来た。
コンコン
「し…シュリ…」
「いらっしゃいヴァルダッ!」
部屋の扉をノックして靜佳と呼びそうになり、シュリカと呼び直す前に靜佳が扉を開け放った。
そのあまりに早い行動に驚いて固まっていると、
「ささ入って入って」
靜佳がそう言って俺の手を握って部屋へと入れようとしてくる。
俺はそれに従って部屋に入ると、
「さぁお兄ちゃん、これから2人っきりで私の面倒を見てね?」
何故かそんな事を言ってくる。
「お、おー」
俺がそんな間抜けな返事をしているうちに、どんどん部屋へと引き込まれていく。
そうして、
「ではお願いします」
靜佳がそう言って頭を下げた。
ちなみにお互いに向かい合って立っている状態だ。
もっと気楽に、肩の力を抜いていても構わないのだが…。
俺はそう思いつつも、
「じゃあまずは、スキルの使い方だが…。先に俺がスキルを使って見せる。クラスチェンジ・錬金術師」
スキルを使用して錬金術師に変更する。
それを見ていた靜佳は、
「いきなり服が変わってびっくりした~。それもスキル?」
俺の周りを回りながらそう質問をしてくる。
俺は靜佳の質問に、
「そうだよ。「UFO」だとスキル欄から選択したり、予め設定しておいたスロットを使うだけで変える事が出来てたからね。そういう画面が出ないから、スキル名を言って発動する感じだよ」
そう答えて、懐から素材が入っている袋を取り出して床に座る。
俺が床に座ったのを見た靜佳は、俺の対面の位置にちょこんと座ると、
「それなら私にも出来るかな?」
そう言ってポーチを床に置き、中に手を入れる。
こう思うと、この袋もポーチも面白い気がするな。
中に何も入っていないみたいに萎んでいるのだが、欲しい物を思い浮かべるといつの間にか手に握っているんだもんな。
俺がそう思っていると、
「こう思うと私、素材はあまり持ってないよ。職業レベル上げる為に、どんな物も作ってたから」
靜佳がそう言って、2つの瓶を取り出す。
回復薬系の瓶だ。
「あぁ~、確かにそうだったな…。回復薬とかカンストしてたっけ?」
俺がそう聞くと、
「一応覚えてる数は、999個が2つの欄と800何個だったはず。貴重というか、蘇生薬も結構持ってたかな」
靜佳がそう答えてくれる。
それにしても、相変わらずの持ち物の量だ…。
俺の倍は持っている。
「装備は?」
「自分が戦わないから、数はほとんど無いかな。ただスキルは取得してるから、素材があれば作る事は可能だよ」
俺の問いに答える靜佳、俺はその答えを聞いて素材はまだ俺の方が持っていると思う。
自然に生えている薬草や木材は持っているが、金属系が無いのが心細いな。
装備も俺のスキルで作るより、靜佳に作ってもらった方が強いのが作れるだろうし…。
「必要な物は金属系か。モンスターの素材は持っているから、それを使う服や装備は大丈夫かな。薬草とかも、今日の午前中とか前に採取をしてるから大丈夫」
俺がそう呟いて考えこむと、
「えっと、錬成」
靜佳は目の前で短剣を取り出すと、スキルを使用する。
「UFO」の武器屋で売っているただの短剣が、靜佳のスキルによって鋭さが増した様に見える。
鑑定スキルを使用してみると、鋭さと強度が増されて強化されている。
おそらく、俺が同じ事をしても靜佳程の強さにはならないだろう。
「やり方は理解した?」
俺がそう聞くと、
「うん。意外に簡単だったね。画面を動かしたりしない分、こっちの方が便利かも」
靜佳はそう答えて、短剣を床に無造作に置く。
その後も俺と靜佳のスキル講座は続き、靜佳がある程度理解したスキル講座は終了となり、俺は靜佳と共に部屋を出て倉庫に案内をする。
階段を結構下っていると、
「流石にこの高さだと階段の上り下りがキツイ~…」
靜佳がそう言う。
俺は靜佳の言葉に歩みを止めずに、
「実際はここから飛び降りても落下する寸前でゆっくりと落ちる事になるから、安全ではあるぞ」
そう説明をする。
それを聞いた靜佳が、
「お兄ちゃん?それを本当にしろって言ってるんじゃないよね?」
迫力がある声で、圧を掛けてくる…。
今のは俺がいけなかったな。
「いや…。すまない」
俺が謝ると、
「良いけど…」
少し不満そうに声を出す靜佳。
こういう時の靜佳は、何かを俺に要求したい時だ。
靜佳がまだ小さい時はお菓子やアイスなどだったが、今は何が良いのだろうか?
俺がそう思っていると、
「ねぇお兄ちゃん、後で食堂に一緒に行かない?」
そんな要求をしてきた。
「それくらい構わないぞ。何か食べたいモノがあるのか?」
俺は靜佳の要求に応えてそう質問をすると、
「うぅん、紅茶一緒に飲みたい」
靜佳はそう答えた。
相変わらず、紅茶とかハーブ系のお茶とか好きなんだな。
俺は昔の事を思い出しながら、
「良いぞ」
靜佳のお願いにそう答えた。
その後倉庫を案内し、これから行いたい事を説明し作って貰いたい物を説明し、中の物を自由に使っていい事を伝えた。
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