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翌朝俺が目を覚ますと、


「すぅ~…」


何故か靜佳が俺に抱き付いた状態で寝ている…。

ちゃんと部屋に案内して、しっかりと彼女がベッドに入ったのも確認したはずなのに…。

それにしても、どうしたものか。

結局あのまま風呂にも入らずに寝てしまったのは良くなかったな…。

それにしても、靜佳はどうして俺の部屋に来たのだろうか?

俺がそう思っていると、


コンコン


「おはようございます、ヴァルダ様。起きておられますか?」


部屋の扉がノックされ、シェーファが俺の名前を呼んでくる。

どうやら、起こしに来てくれた様だ。

俺は少し考えながらも、この状況はマズいという事は理解した。

昨日腕に抱き付いていただけであんなだったのだ、一緒の布団に入って寝ていたなんて彼女達が知ったら、同じ事をしてくれと言ってくるに違いない。

…悪くは無いが、色々とマズイからな。

俺はそう思いつつ、


「おはようシェーファ。起きれた、ありがとう」


扉の向こうにいるシェーファに、起きた事を伝える。

それと同時に俺に寄り添って寝ている靜佳を布団を被せて隠すと、


「失礼します」


シェーファが部屋に入って来る。

危ない、もう少し行動が遅かったら気づかれていたかもしれない…。

今も、いつバレてしまうか危ない状況に変わりは無いが…。


「大丈夫ですかヴァルダ様?あまり顔色がよろしく無いようですが?」


俺が危機に瀕しているのを素早く察し、声を掛けてくれるシェーファ。

いつもならありがたい言葉も、今の状況からしたら凄くマズい。


「あ、あぁ…。問題無い、昨晩風呂に入らなかったのが理由で、少し気分が良くないだけだ。体調に問題は無い。ありがとうシェーファ」


俺が本気半分、嘘半分の説明をした後に感謝の言葉を伝えると、


「湯浴みでしたら、今も出来る様に手配してあります。お入りになられたらどうでしょう?も、もし御必要でしたら、お体を洗わせていただきます」


シェーファが少し恥ずかしそうにしながらそう言ってきた。

俺はその言葉に一瞬、一緒にお風呂に入るシェーファを想像してしまった…。

サラサラの白に近い金髪から水滴が滴り、彼女の優美な肢体を照らしている姿を。

そしてそんな髪から見える長い耳、鋭く尖っている様に見えるそれは実際は柔らかく、軟骨の部分がコリコリと硬さと耳の美しさを際立たせる。

ってこれ、俺の勝手な想像なんだ…。

俺は意識をしっかりと持ち、


「気遣いだけで十分だ、シェーファ。ありがとう、下がって大丈夫だぞ」


彼女にそう言う。

今はシェーファとの風呂よりも、今の現状を彼女に見られない様にする事の方が重要だ。

今は何とか大きい掛け布団が活きて、あまり靜佳の体は目立っていない。

しかし靜佳が寝返りでもしたら、動きによっては怪しまれるかもしれない。

どうか、今だけは寝返りしないでくれ。

俺が静かにそう願っていると、


「…失礼しました」


シェーファが寂しそうな表情でそう言い、部屋から出ようとする。

シェーファにそんな表情をさせていられる訳にはいかない。


「そうだな、今度風呂に入る時にお願いしようか」


体が半分程部屋から出てしまっているシェーファに声を掛けると、


「是非。お呼びして下されば、すぐに伺います」


少し照れている様な表情をしてそう言い、一礼してから部屋から出て行った。

シェーファが出た部屋の扉を少し見つめた後、俺は安堵のため息を吐く。

すると、


「お兄ちゃん、あのハイエルフの女の人とお風呂に入るの?」


ベッドの中から不機嫌そうな声が聞こえてきた…。

起きていたのか…。


「彼女がそう言ってくれているんだ。あまり無下にしたくない」


俺がそう言うと、靜佳が掛布団を勢いよく持ち上げて姿を現すと、


「ご飯行ってくるッ!!」


靜佳はそう言ってベッドから降りて、部屋を出て行ってしまった。

寝起きが悪かったのだろうか?

たまに靜佳は朝に厳しい事があったからな…。

大半は俺に厳しい事があったが、たまに伯父さんも厳しくされてしょんぼりしているのを覚えている。

俺はそう思いつつベッドから降りて、風呂場に行くために部屋を出た。

そうして大浴場へと来た俺は、服を脱いで昨日の汚れを落としてから湯船に浸かる。


「はぁ~」


湯船の気持ち良さに声を出してゆっくりと過ごした後、俺は大浴場を後にして部屋に戻り着替えをし、


「セシリア、ダグスが今どこにいるのか教えてくれ」


そう声を出す。


「今は畑で作業の準備をしているところです」


俺の言葉に反応し姿を現すセシリア、俺はそんな彼女に、


「ルミルフルはどうだ?子供達と共にいるか?」


更に質問をする。


「はい、今は朝食をとられています」

「ありがとう」


俺の質問にそう答えたセシリアは、俺の言葉を聞くと一礼して姿を消す。

とりあえず畑に行って、ダグスにルミルフルの事を伝えてから朝食に向かうとするか。

それにしても、彼は相変わらず朝が早い。

もう働くために動き始めていると思うと、俺も見習わなければな。

俺はそう思いつつ塔の階段を下って外に出て、ダグスさんのいる畑へとやってきた。

畑に着くと、既に何人かは作業を始める格好になっており、ダグスさんを中心として何やらこれからする作業の説明と確認を行っている様だ。

今出て行ってダグスさんの説明を遮るのは申し訳ない。

俺はそう思い少し物陰で様子を見ていると、ダグスさんの言葉に周りの人達の表情が感心した様な、新しい発見をした様な表情をしている。

おそらく彼の作業の事を聞いて、彼の技術の新鮮さに驚いているのだろう。

そうして皆が作業をし始めたところを見定めて、俺は物陰から出る。


「あ、おはようございます」

「!おはようございますヴァルダ様!」


俺が突然現れた所を目撃した周りの者が、俺に挨拶をしてくる。

俺がそれに答えて、ダグスさんの元に行き昨日ルミルフルから言われた事を彼に伝えると、最初は大丈夫だろうかと心配しつつも了解してくれて、俺は彼によろしく頼むと伝えて塔に戻った。

その後朝食を済ませた俺は何をするか考えて、一度帝都で何か耳寄りの情報が無いか聞くために外の世界へと出かけた。


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