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何故か不穏な空気が漂い始めた空間に、俺は何でセシリアがここまで警戒している理由が分からずに困惑している。

今までも塔に連れて来た者達はいるが、その人達と会わせた時の中で一番警戒している様に見える。

俺がそう思いつつ、


「突然現れたセシリアに驚いたのだろう。慣れていない者達からすると、いきなり目の前に人が現れるのだからな。少しの間は勘弁してあげてくれ」


セシリアにそう言うと、


「…申し訳ありません。分かりました」


セシリアが不満そうな声で謝罪をし、とりあえず靜佳の事は許せてもらえそうだ。


「謝る必要はない。セシリアのお陰で助かっている、いつもありがとう」


俺がそうセシリアに言うと、セシリアが優雅に一礼する。

すると、俺に頭を下げているセシリアを見て靜佳が俺から離れてセシリアの傍に寄ると、何やらコソコソとセシリアに言っている様だ。

最初は警戒していたセシリアも、靜佳が話していく内にどんどん警戒心を解いていき最後には、


「これからよろしくお願いします。シュリカさん」

「こちらこそ、色々とお互いに協力しつつ研磨し合いましょうねセシリアさん」


握手をしてそう言い合う姿に、何かの波長が合ったのだろうと推察する。

それにしても、一体何をコソコソと言っていたのだろうか?

俺が疑問に思っていると、


「ではヴァルダ様、私はこれで失礼します。そろそろ畑仕事をして下さっている皆様に声を掛け、夕食を食べに食堂に案内をしないといけませんから」


靜佳との握手を解き、俺にそう言ってくるセシリア。


「流石にまだ迷子になるか…。よろしく頼んだセシリア」


セシリアの言葉に俺はそう呟きつつ彼女に彼らの事を任せると、セシリアは返事をして姿を消した。


「セシリアとは何を話したんだ?いきなりあそこまで仲良くなるとは思わなかったぞ」


セシリアが姿を消したのを確認すると、俺は靜佳にそう聞いてみる。

俺の問いを聞いた靜佳はニコッと笑うと、


「乙女の秘密だよお兄ちゃん」


そう言って秘密にされてしまった。

そう言われてしまったら靜佳は何も答えてくれないだろうし、無理に聞いてセシリアを傷つける事になる可能性がある故に俺はそれ以上は聞かず、塔に入るために先に歩き始めた。

俺が歩き始めると靜佳も後に続いて塔の中へ入る。


「靜佳、何でさっきシュリカなんて名乗ったんだ?シュリエルでも、靜佳でも良いと思ったんだが」


靜佳に部屋を案内するために塔の階段を上りながらそう聞くと、


「今の私は、外見はシュリエルだけど中身は靜佳でしょ?だからシュリエルと靜佳を合わせたシュリカって名前をこれから名乗ろうかなって思って。あ、でもヴァルダと2人っきりの時は靜佳って呼んでね?私も普段はヴァルダって呼ぶけど、2人の時はお兄ちゃんって呼ぶから」


靜佳がそう答えた。

靜佳の考えは分かったが、間違えてしまいそうになるなと思う。

すると、


「それにしてもお兄ちゃん、話し方が少し変わってて面白かった!いつもあんな感じに話してるの?」


後ろから靜佳が笑いながらそう聞いてくる。

その言葉に少し恥ずかしい気持ちを感じつつ、


「俺も違和感があるとは思っているけど、セシリア達が俺の事を偉大な主みたいに接してくれるからな。出来れば皆の期待に応えたいと思っているんだ」


そう説明をすると、


「ふ~ん…。じゃあ私も皆といる時は敬語で話しかける様にするね!その方が塔の皆との関係に波風立たないだろうし」


靜佳がそう言って階段を少し早く駆け上がって俺の前に立つと、


「その代わり、2人の時は今みたいないつも通りの話し方で話しかけてね?」


そう続けて言ってきた。

俺はその言葉に笑いながら頷きつつ、


「随分と2人っきりに拘るけど、最悪長い間こっちに戻れない事もあるからな。戻れたとしても、夜だけとかの事もあるし」


そう忠告しておく。

俺の言葉を聞いた靜佳は、


「なら、夜にたっぷりと話すしかないね!」


そう言って笑う。

そんな軽い話をしつつ階段を上り、この塔の中では良いと思う部屋に案内する。

と言っても少し広い程度の部屋で、内装の家具などはどの部屋とも変わらないのだが…。

俺がそう思っていると、


「ふかふかベッド~~~ッッ!!」


まず靜佳がしたのは、ベッドに飛び込む事だった。

あまりの飛び込みに少しハラハラしたが、綺麗にベッドに着地出来て良かった。

俺がそう思ってベッドに包まっている靜佳を見ていると、


「ありがとうお兄ちゃん!これでこれからゆっくりと眠れるよ!」


ベッド包まっている所為でこもってしまっている感謝の言葉が聞こえた。

喜んでくれたなら良かった。

俺はそう思いながら、


「そういえば靜佳、シュリエルとしての装備とかアイテムとかはどうしたんだ?」


彼女にそう質問をする。

今更ではあるが彼女の持っていた、本人曰くコレクションされたアイテム達はおそらく俺よりも多いだろう。

種類も含め、在庫の数も消費しやすい俺に比べて沢山持っているだろう。

俺がそう思っていると、


「そういえば、あの女の人の所に捕まった時に没収されそうになって、急いで隠したんだった」


靜佳はそう言って、自身が着ている俺の服を脱いで簡易的な服装になると、少し動き辛そうにしながら体を動かしている。

明らかに何かを持っている様子ではあるのだが、俺の目にはただ靜佳が変な動きをしている様にしか見えない。

そんな光景を見ていると、


「ふぅ、流石に私もアイテムの使い方は分かったからね。この世界に迷い込んでも、これが貴重な物でありこれからの私の人生を左右する物だと思って、急いで包んで背負ったんだ~。日頃から身に着けてたし、手放さないでいたから背負ってるのが普通に感じてたよ~」


靜佳がそう言って、何も持っていない様に見える右手を前に出し、左手で何もない空間を摘んで取る動きをする。

そこには、かつてシュリエルが肩から下げていたポーチが姿を現す。

そして同時に、俺は靜佳がどうやってポーチの姿を消していたか理解する。


「タルンカッペの端切れ、よく持ってたな。「UFO」初期のPVPで不意打ちとかに使われたアイテムだぞ」


着た者を透明にする服の端切れ、装備に巻き付けると見えなくなり初見では何の装備を身に着けているのか分からなくするアイテムだ。

そんな初期のアイテムを持っていた事に驚いていると、


「ふふんっ!これがコレクターってもんよッ!」


靜佳が胸を張ってそう言った。


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