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「まずお父さんとお母さんに連絡して、お兄ちゃんの捜索届を出したの。でも、何も証拠はなかったし、ただ時間だけが過ぎていったの。ただお兄ちゃんが帰って来る事を願って、自分でも心当たりがある場所を探すだけの時間が過ぎて行って、半年経過したの。もう帰って来ないかもしれないって思ったら、凄く後悔した。何で「UFO」の最後を、本当に最後まで一緒に居なかったのかって…。その時に、もしかしたらお兄ちゃんのハードで「UFO」を起動したら、何か手掛かりが分かるかもしれないって思って。ただすぐにそれをするのが怖くて、お父さんとお母さんの顔を見て、手紙を書いてからお兄ちゃんの部屋に行ったの。それで、ゲームを起動した瞬間、見た事も無い道にシュリエルとして立ってたの」


靜佳の言葉に、俺はただ申し訳ない気持ちが押し寄せてくる。

まさか、伯父さん伯母さんにそこまで迷惑を掛けていたなんて。

そして、大事な靜佳までこちらの世界に引き込んでしまった…。

俺がそう思っていると、


「そこからはすぐに亜人だ~なんだ~って言われて、いつの間にか捕まっちゃってね」


靜佳が軽くそう言って、アハハと笑う。

俺はそんな靜佳を見て、


「笑ってる場合じゃないだろ。伯父さんと伯母さんが、どんな思いをしてるか…。大事な一人娘なんだぞ靜佳は…」


そう言って手で目元を覆う。

何も見えない状態にすると、


「それは、お兄ちゃんにも言える事じゃん。………私がどんな思いしてたか、分かってよ…」


少し嗚咽が混ざった声が聞こえた。

その言葉と声に慌てて目元を覆っていた手を退けると、俺の事をじっと見つめている靜佳と目が合う。

靜佳のそんな様子に、自分の軽率な発言を反省し、


「…ごめん」


俺は謝罪をする。

すると、


「良いよ。お兄ちゃんが、お父さんとお母さんの事も考えてくれていた事が分かったから。でもそれなら、もう少し「UFO」の時間を減らして家に来てくれたら良かったのに」


俺にそう言ってくれる靜佳。

…今までリアルの、元の世界に帰るなんて考えてもいなかったが…。

靜佳を元の世界に帰す事も今後の視野に入れなければいけないな。

俺はそう思いつつ、


「その事については、悪いが考えもしなかったな。正直、「UFO」が実家レベルで生活してきたからな」


俺が正直にそう言う。

その瞬間、靜佳が俺の事をジトーッとした目で見てくる…。

俺はそんな視線に目を逸らしつつ、


「でも靜佳の説明を聞くと、俺は半年前から行方不明だったって事だよな?俺がこっちの世界に来て日は経つが、半年は経っていないはずだ」


少し気になる事を質問する。

すると、


「それについてはお兄ちゃんの方が考察出来るんじゃない?正直私は、そういう事を考えるのは得意じゃないし」


靜佳にも分からない様で、俺にその質問を投げてきた。

その事については、同じ世界から来た人に出会えた時に情報収集するしかないな。

靜佳、シュリエルは戦闘に関しては得意では無いから話題になっていないが、少しでもレベルが高い人がいれば話題になったりするだろう。

もしかしたら、俺みたいにヒッソリと行動している人もいるかもしれないが…。

俺はそう思い、


「話を変えよう。靜佳はこれからどうしたい?俺は保護したいと思っているが、「UFO」の錬成スキルを使って商売とか始めたいとか思ってるなら、靜佳の意見を尊重するつもりだぞ」


話を切り替えて、今後の事について話し始める。

俺のそんな言葉を聞いた靜佳は、更にジト目で俺の事を見てきて、


「これ以上私を置いてどこかへ行くつもりなの?」


俺にそう言ってきた…。

俺の気遣いが悪い意味で伝わってしまったようだ。


「いや、靜佳というかシュリエルは物の売買とか好きそうなイメージだし、ターリットさんの所でもそんな様子だったし…」


俺の言い訳を聞いた靜佳は、俺の言葉に頷きつつ、


「あれは趣味というか、オークションとかアイテムのコレクションが好きだったの。生活の基盤として考えてないから。元々「UFO」を始めたのだって、会話が少なくなったお兄ちゃんと遊びたくて始めたんだし」


説明をしてくれる。

そこまで靜佳が俺の事を考えてくれていたのか。

俺は靜佳の言葉に、家族としての温かみを感じて感動をしていると、


「まぁ、お兄ちゃんは鈍感でシュリエルが私だって気づかないし、プレイヤーよりもNPCの綺麗な人しか見てなかったもんねぇ~?」


またジト目で俺の事を見ながら、俺の手を握ったきた。

そして、


「お兄ちゃんが普通の人に興味を示さないのを知ってから、色々と考えて私はシュリエルになったんだよ?そんな私を置いていくのお兄ちゃん?」


そう言った。

靜佳のそんな言葉に、


「そんな事はしない。…分かった、これからはずっと一緒だ、その代わり少しだけお願いしたい事がある」


俺はそう答えた。

すると、


「何?この耳を甘噛みさせろとか?」


靜佳がとんでもない事を言ってきた!

それはとてもとても魅力的な提案なのだが、相手は義妹兼従妹。

落ち着け俺、気をしっかりと持て、これは罠だ、欲望に従ったらそのまま沼にハマってしまうぞ………。

俺がそう思っていると、


「大丈夫だよお兄ちゃん、お兄ちゃんの性癖は部屋を調べて把握してるから」


靜佳がそう言い放った。

………兄としての尊厳は地に落ちたようだ…。

俺は恥ずかしい気持ちやら、妹として兄のアレな部分を見させてしまった負い目やらを感じて、この世界に来て初めてと言っていい程の絶望を感じていた。

すると、


「………お兄ちゃんの事は、私が一番知ってるし理解してるよ。それに靜佳の時の体じゃ出来ない事も、シュリエルとしての血の関係もない体だから色々と出来るし、私としてもお兄ちゃんとしても嬉しい事だらけだね」


隣で靜佳が何か言っているが、今の俺はそれどころでは無い。

こんな義兄でごめんよ靜佳ぁ………。

それから少しの間俺は羞恥心と罪悪感で顔を伏せていた。

そうして時間が少し経過した後、俺は意識を切り替えて、


「ん゛んッ!!靜佳、俺と契約してほしい」

「良いよ」


そう言った。

…返事が速い。

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