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シュリエルと共にブルクハルトさんの商館を後にした俺はまず2人っきりになれる場所、宿屋を目指して歩き始めた。

その際に、帝都の街を知らないシュリエルが危ない目に合わない様に彼女の手を握りながら歩いているのだが、


「凄いね、凄い人…」


シュリエルはあまりの人の多さに圧倒され、向かってくる人に結構ぶつかってしまっている。

一応、いつもの俺と同じ様にフードを被せてはいるが、あまり良い顔はされない。

…正直、俺が抱いて屋根伝いに歩いた方が良い気がするのだが、何しろ彼女は日本からきた友人だ。

簡単に抱き寄せて良いか聞けない…。

しかし、人波に負けているシュリエルを見て折角解放されたのにこんなに窮屈では嫌だろうと思い、これまでの付き合いがある、すぐに嫌われる事は無いだろうと決心し、


「シュリエル、人が多いから人が少ない所に行く。ちょっと持ち上げるが良いか?」


そう質問をした。

それを聞いたシュリエルは少し考えた後、


「お願い。流石に人多すぎでしょ…」


そう返事をしてくれた。

俺はシュリエルの返事を聞いて、繋いでいた手を少し引っ張りシュリエルの体を俺の体に寄せると、少し屈んで彼女の腰辺りに手を回し、一気に地面を蹴り空中に跳び出す。

流石にいきなり空中に跳び出した俺とシュリエルに、道を行き交っていた者達が驚いた声を出すが、正直に言えば俺の行動は珍しいものでは無い。

現に今露店で盗み食いをした者が様々な場所を蹴って屋根まで昇ってきている。

俺はそんな光景を見つつ、


「このまま一気に宿まで行く。掴まっていてくれ」


シュリエルにそう言うと、


「う、うん…」


何故か少しオドオドした様子で返事をするシュリエル。

そんなシュリエルを早く落ち着かせようと彼女をしっかりと抱きしめ、俺は足元の屋根を破壊しないようにしながら駆け出す。

そうして宿屋に着いた俺達は、とりあえず一番安い2人部屋を借りるとそこに入る。

すると、


「ベッドだ~!久しぶりのふかふ…か…??」


シュリエルが凄く嬉しそうにベッドに乗り込もうとしてベッドの上に手を置いた瞬間、凄く絶望した表情に変化していった。


「ターリットさんの商館では、あまり良い環境で寝れなかったのか?」


俺はそう言って、シュリエルが触れているベッドの隣のベッドに装備を外して置く。


「うん。一応布団自体はあったけど、どれもあまり良い物じゃなかったから…」

「どこも同じ様な物だろう。正直この世界にリアルの世界の技術を期待する方が間違ってる」


シュリエルの言葉に俺がそう返すと、


「それよりもヴァルダ、どうしてこんな世界にいるの?というか、もう色々と聞きたい事が多すぎて何から質問していいか分からなくて、頭が混乱してくるんだけど…」


シュリエルが質問の様な愚痴を言ってくる。


「それはこっちのセリフだと言いたいが、まぁシュリエルの言いたい事も分かるから何も言わないでおく。まずお互いに情報交換が必要だな」


俺はそう言うと、シュリエルの方を向いてベッドに座る。

すると、


「それが一番だね。それにしても、またヴァルダに会えるなんて驚いたなぁ」


何故か自分が触っていたベッドを乗り越えて、俺が座っている隣に座るシュリエルさん。

何故に向かい合わないで隣同士なのか?

俺は疑問に思いながらも、


「まず俺がこの世界に来た理由は不明だが、来た時の状況は「UFO」サービス終了の際にふと寝てしまったら、この世界に来てしまっていたんだ。だから、あまり詳しい事は知らないんだ」


俺の時の状況を説明する。

それを聞いたシュリエルは、


「それじゃあ、リアルでどんな状況になっていたか知らないんだ」


少し気になる事を言ってきた。


「リアルの方で、何かあったのか?」


俺がそう聞くと、シュリエルは俺の問いに頷いて、


「うん。「UFO」のサービスが終了してから少しして、同時に行方不明者が何人かいたらしくてニュースになってたんだ。それで警察とかが調査しても、その人達の共通のコミュニティとかは無かったらしくて、ただその人達が同じゲームをしていた事だけが分かったらしいの。サーバーが違ったから、知り合い同士では無いから関連性は無しって言ってた」


俺がこの世界に来た後のリアルの方の状況を説明してくれる。


「なるほどな、それが「UFO」って事か」


俺の言葉にシュリエルが頷き、


「それで、もしかしてって思ってヴァルダの家に行ったの」


そんなとんでもない事を言ってきた!


「待てシュリエル!俺はお前にリアルの住所を教えた事なんてないぞ!」


俺が驚いてそう言うと、シュリエルが首を傾げて、


「もしかしてヴァルダ、気づいてないの?」


そう聞いてきた。

な、何を言っているんだ?

シュリエルが実は探偵とか、自意識過剰かもしれないが俺のストーカー的な者だったりするのか?

いや、それは絶対にありえないか………。


「?????」


俺が様々な思考をして目を回していると、


「ハァ~、その様子じゃまだ気づいてなかったんだね…」


シュリエルがため息を吐いて自信を指差し、


「私、靜佳なんだけど」


そんな事を言った。

………。


「………」

「ちょっとヴァルダ?お兄ちゃん?駄目だ、完全に止まっちゃってる」


少しして、俺はようやくシュリエルが言った言葉を理解した。

しかし、理解は出来ても本当の事かはまだ決まっていない。

俺はそう思い、


「本当に靜佳なら、何か俺と靜佳だけが知っている事を言ってみなさい」


シュリエルにそう質問をした。

少し変な言葉遣いになってしまったが、今はそれどころでは無い。

俺がそう思っていると、


「う~ん、じゃあお兄ちゃんの部屋の本棚の下から2段目の端」


シュリエル、改めて靜佳が俺の秘密を言い放ったッ!


「というか待ってくれ靜佳さん。何でアレの場所を知っているんですか?」


俺がそう聞くと、靜佳は少し悲しそうな表情をして、


「ニュースを見て、もしかしてお兄ちゃんもって思ったの。だからまず、連絡したの。いくらお兄ちゃんでも、1日の間に一回も携帯を見ないのはおかしいから。それで連絡が来なくて、私はお兄ちゃんの家に行った。家で待っていてもお兄ちゃんは帰ってこなくて、私は確信したの。お兄ちゃんもだって………」


そう言った。

色々と前後でテンションの違いというか、話が一気に真剣な話になったが置いておこう。

俺はそう思いつつ、話を続ける靜佳の言葉に耳を傾けた。


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