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159頁

ブルクハルトさんとシュリエルとロープで縛り、スレイに乗って帝都付近の森へと帰ってきた…。


「はぁ……はぁ……」

「………」


ブルクハルトさんは2回目ということで少しだけ慣れたのか、息が荒い程度で済んでいる。

しかし初めてのシュリエルは色々と衝撃が強かったようで、スレイを召還してから表情が死んでしまった様に無表情で何も発する事無く座り込んでいる。


「おかえりなさいませヴァルダ様」


俺がシュリエルの様子を見ていると、バルドゥが一礼して迎えの言葉を言ってくる。

俺はバルドゥに特に問題が無かったを聞き、バルドゥが何もないと言う報告を受けて彼を塔に帰還させる。


「大丈夫ですか?立てますかブルクハルトさん?」



俺がブルクハルトさんにそう聞くと、


「だ、大丈夫ですが、もう少しだけ待って貰えますか?」


亜人の女性に淹れて貰ったお茶をちびちび飲みながらそう答えた。

俺はそんな様子に一言謝罪をした後に、未だに呆然としているシュリエルの元に行き、


「シュリエル、大丈夫か?」


そう聞いてみる。

すると、


「ヴァ、ヴァルダ?私生きてるよね?」


ターリットさんの商館で会った時よりも憔悴している様子でそんな事を聞いてきた。


「あぁ、死んだとしても生き返らすから安心しろ」


俺がそう言うと、シュリエルが立ち上がろうとする。

そんなシュリエルに手を差し出すと、彼女は両手で俺の手を握りゆっくりと立ち上がる。

すると、


「館に戻りましょうか。帰る準備をお願いします」


ブルクハルトさんがそう言い、彼の周りで心配している様にしている奴隷に指示を出す。

ブルクハルトさんの指示を聞き、奴隷の人達が動き出す姿を見つつ、


「それにしてもシュリエル、お前はどうしてこの世界にいるんだ?「UFO」のサービス終了時間前にログアウトしたはずだよな?」


少し小声でシュリエルにそう質問をする。

すると、


「そうだけど、それがどうかしたの?」


シュリエルが何故そんな事を聞くのか分からないといった表情をする。

本当に色々と話す事があるな。

俺がそう思っていると、


「準備が出来ました」


アルラトに行く際に隣に乗っていた亜人族の女性が、俺とシュリエルの元に来てそう言ってきた。

とりあえず積もる話は後にして、今はブルクハルトさんの商館に帰るべきだ。


「分かりました。シュリエル、行くぞ」


俺がそう言うと、シュリエルは軽く返事をして俺の後を付いて来る。

そうして馬車に乗り込むと、馬車がゆっくりと進み始め、


「…落ち着きますな」


ブルクハルトさんが外の景色を見ながらそう呟いた。

少し申し訳ない気持ちになりながら彼の言葉に苦笑で返す。

すると、


「ごめんヴァルダ、少し寝ても良い?」


シュリエルが少しウトウトしながらそう聞いてきた。

慣れない世界で、更に奴隷なんかにされていたんだ。

まともに寝れなかっただろう。


「着いたら起こす、それまで寝ていろ」


俺がそう言うと、シュリエルは馬車の背もたれと俺に寄りかかる様に体勢を崩して目を閉じた。

少しして、穏やかな寝息が聞こえてくる。

俺がそんなシュリエルを見ていると、


「ビステル様、これは破かせて頂きますがよろしいですよね?」


ブルクハルトさんがそう聞いてきて、ターリットさんから受け取ったシュリエルの契約書を懐から出す。

俺はそれを見て、


「ありがとうございます。俺の考えを汲み取ってくれて」


俺がお礼の言葉を言うと、


「いえいえ、金貨はビステル様がお出ししたんですから」


ブルクハルトさんがそう言ってくれる。

俺はそれを聞いて、


「そうだ、足りない分を渡しますよ」


金貨を多めに出してくれたブルクハルトさんにお返しをしようとしてお金が入っている袋を出そうとすると、


「元々の15枚で結構ですよ」


ブルクハルトさんがそんな事を言ってくる。

俺は彼のその言葉を聞いて、


「それではブルクハルトさんが割に合いません。金銭のやり取りはしっかりとしないと」


俺がそう反論をする。

すると、


「値を引き上げたのは私です。それにあのままビステル様とシュリエル様を契約させるのは、ビステル様に申し訳なかったですからね。お知り合いを奴隷にされる、それを更に自分の奴隷にする。私はそれをビステル様にされて欲しくなかったのです。いわば私の我儘です、気にしないでください。それにお得意様のビステル様を、ターリット様に取られまいと商売の邪魔をしたのです。ビステル様が気にされる事ではありませんよ」


ブルクハルトさんが笑顔で俺にそう言い、


「ですので、足りなかった金貨2枚と銀貨20枚で構いません」


そう続けた。

なんというか、俺に対するサポートが手厚過ぎて困惑する。

いったい彼のこの好意に、どうやって答えればいいのだろうか?

俺はそう思いつつ、お金が入っている袋を漁り金貨2枚と銀貨20枚を彼に手渡し、


「ブルクハルトさんにはいつも助けてもらって申し訳ないです。本当にありがとうございます」


お礼の言葉を伝える。

それを聞いたブルクハルトさんは、


「いえいえ、これからもお互いに亜人族の方達を助けられる様に協力しましょう」


そう言って隣に座っている亜人の女性の頭を撫でた。

………羨ましい、俺もシュリエルを塔に連れ帰れたら皆を撫でまわしたい。

そうしてのんびりとした時間を過ごしつつ帝都に戻ってきた。

途中の検問所で何故さっき出たのに戻ってきたんだ?

みたいな顔をされてしまったが、流石に長く話をするつもりは無かったのかほぼ素通り状態で通過する事が出来た。

帝都のブルクハルトさんの商館に戻ってくると、馬車が止まったと同時に寄りかかってきたシュリエルを起こす。

ゆっくりと起こすと、シュリエルも目を覚まし少し体が凝ってしまったのか伸びをする。

そんなシュリエルを少し待ち、動けるようになると俺が先に馬車から降りてシュリエルに手を差し出す。


「ありがとヴァルダ」


お礼の言葉を言いながら、シュリエルが俺の手を掴んで馬車から下りると、


「どうしますかビステル様?正直契約などの事は既に終わってしまっていて、やる事は無いのですが?」


ブルクハルトさんがそう聞いてくる。

彼の言葉から、とりあえず緊急でやる事が無いという事が分かる。

ならばと思い、


「じゃあ、すみませんが今日は一度彼女をゆっくりさせたいので帰っても良いですか?それに俺の所為で、ブルクハルトさんも疲れていそうですし…」


ブルクハルトさんにそう言う。

それを聞いたブルクハルトさんは、


「あははっ、そうですね。とりあえず今日の所は解散しましょうか」


少し何とも言え無さそうな表情でそう言った。

その表情に、俺は申し訳ない気持ちになりつつ彼にまた後日来る事を約束し、シュリエルと共に彼の商館を後にした。


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