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妖艶の女性の登場に、俺は少し驚いている。

奴隷商人は、ブルクハルトさんみたいに男性がしていると思っていたが、先入観で女性は奴隷商人にならないかと思ってしまっていた。


「ターリット様、件の亜人族の女性にお知り合いの可能性があるビステル様です」


俺が女性を見ていると、ブルクハルトさんが俺の事を手で差しながら紹介をしてくれる。


「初めまして、ビステルです」


俺が簡潔に挨拶をすると、


「ふぅ~。そいつがあの子の知り合い…ねぇ」


煙管の様な物を吸い、煙を吐いてから俺の事を見つめてくる。


「あまり失礼な事はしないでくださいね。ビステル様は私のお得意様です」


ブルクハルトさんが俺の事を庇ってくれると、


「イイ男だが、金の匂いがしないねぇ。私は金がある男の方が好みなんだ。手は出さないよ」


ターゲットさんがブルクハルトさんに視線を移してそう言った。

………貧乏ですみませんねぇ!

俺だって資金調達とか頑張ってるんだよ!

ターリットさんの言葉に俺がそう思っていると、


「その点ブルクハルト、お前は良い男だよ。私とお前の商館、合併なんかしたらもっと儲かるだろうねぇ?」


ターリットさんが、ブルクハルトさんに言い寄るようにしだれかかる。

しかし、


「申し訳ないですが私も男、まだ自分の力で店を大きくしたいと思っています。ターリット様の提案も悪くない話ではございますが、まだ貴女に頼る気は起きないのですよ」


ブルクハルトさんがきっぱりと断りの言葉を発した。

大人な対応だ…。

俺が彼の言葉に感心していると、


「…あんたもつれないねぇ。とりあえず、このまま外で話していても他の客の邪魔になるだけだ。入りな」


ターリットさんはそう言って踵を返し、商館の中へと入っていく。

俺とブルクハルトさんも彼女の後に付いて歩き始めると、商館の中はまたブルクハルトさんの店とは全く違う様子だった。

簡単に言えば、キャバクラみたいな空間だった。

扇情的な格好をしている奴隷達が、他の客の周りに集まって自身をアピールしている。


「男も女も、自分達の魅力を見せつけるのが一番買ってもらえるんだよ」


ターリットさんはそう言い、客に自身の体を見せつける奴隷を見てクスッと笑うと、


「こっちだよ」


更に奥に進んでいく。

俺とブルクハルトさんは、ターリットさんの元にいる奴隷の人達を見た後彼女に付いて商館の奥へと進んでいく。

そうして案内された部屋で待機するように通され、ブルクハルトさんと同じソファに座る。

俺は部屋の外に誰もいないのをある程度把握すると、


「ブルクハルトさんがここの主人と会うのを避けていた理由、それがどうしてか分かりましたよ」


俺が少し小声でそう話し出す。

俺のそんな言葉を聞いたブルクハルトさんがため息を吐くと、


「そうでしょう。彼女は奴隷を意思のあるヒトと見る事無く、ただの商品としか見ていません」


そう言う。

俺は彼のその言葉に、先ほど見た光景を思い出しながら頷く。


「でも周りから見たら、私の方が異端なのでしょうね。…しかし、それでも私はこの考えを曲げるつもりはありません」


続けて言うブルクハルトさんに、


「そうあってください。ブルクハルトさんが変わらない限り、貴方の元にいる奴隷達は救われると俺は思います」


俺がそう言った瞬間、部屋の外からこちらに近づいてくる気配を感じ取る。

部屋の外から声が聞こえない所為で、余計にこちらに向かって来ているのが誰か分からない。

すると、


「連れて来たよ」


特に部屋の扉をノックされる事無く、いきなり部屋の扉が開かれてターリットさんがそう言いながら部屋の中に入ってくる。

そして、


「ッッ!!お兄ちゃんッ!!」


シュリエル本人が変な呼び方をして俺に駆け寄ろうとしてきた!

しかし、


「おっと、まだ契約を済ませていないんだ。まだ簡単に近寄らせる訳にはいかないよ」


ターリットさんが俺とシュリエルの間に体を滑り込ませて、俺とブルクハルトさんの事を見ながらそう言ってきた。

彼女が俺の事を警戒しているのは理解できる故に、


「分かりました。…シュリエルも、無事に会えて良かった。どこか怪我などしていないか?」


俺はターリットさんの言葉に素直に従いつつ、彼女の背後にいるシュリエルにそう声を掛ける。

それを聞いたシュリエルは最初驚いた様な顔をした後嬉しそうに頷いて、とりあえず彼女が危険な目に合っていない様で安心する。

しかし、シュリエルからしたら予想も出来なかった再会に動揺したのか、俺の事をお兄ちゃんと呼ぶとは…。

リアルではお兄さんがいたのだろうか?

俺がそう思っていると、


「さて、じゃあ商談といこうか!」


ターリットさんはそう言い、俺とブルクハルトさんの座っている対面のソファに座る。

その隣にシュリエルが仕方なさそうに座ると、


「この亜人の娘、名前はシュリエル。年齢16歳、処女で性病に蝕まれていない。物を作るのが得意らしいが、まぁあまり必要事項ではないね」

「ちょっとッ!?ヴァルダがいるのに何でそんな事言うのッ!個人情報をしっかりと守ってよッ!」


ターリットさんの説明に、ブルクハルトさんはシュリエルに気を遣って顔を逸らす。

俺も流石に気まずいので、ブルクハルトさんと同じ様に少しだけ顔を背ける。

それにしても、なんというか個人情報という単語自体久しぶりに聞いた気がする。

やっぱり、こちらには無い単語を聞くのも色々と安心するんだな~。

俺がそう思っていると、


「これまでどんな環境で過ごしていたのか知らないけどね、あんたは今は奴隷なんだよ!あんたみたいな顔だけは良い亜人は、処女かどうかで値が変わるんだ!」


ターリットさんがシュリエルにそう怒鳴った。

しかしシュリエルもそんなターリットさんに負けずに、


「だから私は奴隷なんかじゃないんだってばッ!いい加減に私としっかりと会話してよッ!」


そう怒鳴り返す…。

シュリエルの言動などを見ると、ターリットさんはあまり奴隷達の言動を禁止している訳ではなさそうだ。

その後も少しの間、シュリエルとターリットさんの言い合いは続いた…。


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