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馬車から体を乗り出して俺にそう言ったブルクハルトさん。

見つかっちゃったぁ、とか言った方が良いのだろうか?

俺がそんなくだらない事を考えていると、


「見つけましたよビステル様ッ!?!?ご報告したい事があります!ささ!早くお乗りになってください!」


ブルクハルトさんはそう言って馬車の扉を開けてくれる。

俺が乗り込むと、馬車を一気に動き出す!


「だ、大丈夫なんですかこんなにスピード出していて…」


俺が心配になってそう質問をすると、ブルクハルトさんは何故か息を切らして、


「ひっ…ひぃぃ~~…。ゲホッ!…はぁ、だ、大丈夫です。ここら一帯は亜人族は道の真ん中などは通りませんから。あえて真ん中を通る事で、亜人族の皆様は轢き殺さない様にしています」


そう説明してくれる。

なるほど、なら問題は特にない…とは言い切れないが、まぁ亜人族の人達が安全なら良いだろう。

俺がそう思ってどんどん変わっていく窓からの景色を眺めている。

未だに大声を出していた反動で喉などが苦しいのか、ブルクハルトさんは咳き込んだりしている。

そうしている内にブルクハルトさんの奴隷商館に到着し、俺とブルクハルトさんは馬車を降りる。

馬車を降りるとすぐに商館の部屋に案内され、俺は何故ブルクハルトさんがあそこまで急いでいたのか質問する事も出来ず、黙って案内された部屋でブルクハルトさんを待っている。

ブルクハルトさんは報告したい事があると言っていたが、いったい何なんだろう?

そう思っていると、部屋の外から急いでいるであろう足音が聞こえてきた。

足音の大きさからして、ここにいる亜人族の人達ではなくブルクハルトさんであろう。

そして、


「お待たせしましたビステル様ァッッ!!」


いつもならノックをするブルクハルトさんが、ノックをせずに勢いよく扉を開け放って部屋へと入ってくる。

あまりの普段との違いに俺は驚きつつ、


「い、いえ。大丈夫ですよ」


そう言うと、ブルクハルトさんは俺の向かい側のソファに座り、


「見つけましたぞビステル様!」


またそんな事を言ってきた…。

どういう事なの?

俺が混乱していると、


「つい先日、ビステル様のお知り合いかと思われる奴隷が捕らわれたというので、手紙を出してみたのです」


ブルクハルトさんがそんなとんでもない事を言ってきた!


「誰ですかッ?!」


俺もあまりの事に驚愕し、冷静さを無くして声を張り上げてしまった。

幸い、大声という程でもなかったから部屋の外にまでは聞こえていないだろう。


「シュリエルという亜人族の女性です!」


ブルクハルトさんの言葉に、俺は彼女に出会えるかもしれないという嬉しさと、彼女に何か怪我などあったりしないかという不安で、体の力が抜けるのを感じる。

俺はゆっくりと、ソファに腰を下ろす。

突然の俺の様子の変化に、ブルクハルトさんは驚いた様子で俺の事を見ていたが、俺が座り直して一度深呼吸をすると、彼も俺と同じ様に深呼吸をする。

そうしてお互いが落ち着くと、


「大丈夫ですかビステル様?」


ブルクハルトさんがそう聞いてくる。


「大丈夫です。すみません、取り乱してしまって…」


俺はブルクハルトさんに謝罪の言葉を伝える。

それにしても、シュリエル…か。

会いたい気持ちはあったが、実際にこちらの世界に来ていると聞いてしまうと、来て欲しくなかったという気持ちの方が大きい。

しかし、もし本当に彼女が来ているならすぐにでも身の安全を確認したい。

出来る事なら、「UFO」の時の様に互いに協力していきたいと思う。

俺がそう思っていると、


「一応、先方には書状を送り契約に関する事を遅らせてもらいました。しかし、向こうも商人。あまり長い間待ってはくれないでしょう。出来ればこれからすぐに出かけたいと思っているのですが………」


ブルクハルトさんが俺の事を窺いながらそう聞いてきた。

俺はその言葉に、


「分かりました!すぐに行きましょう!」


勢いよく答える。

すると、俺の返事を聞いたブルクハルトさんが立ち上がって部屋の扉を開け、


「準備を始めてくれ!」


近くで待機していた奴隷の子にそう指示を出した。

おそらく、ある程度俺の返事を予想して動いてくれていたのであろう。

俺がそう思っていると、


「ビステル様のお知り合いという事で、シュリエル様とお呼びしましょう。シュリエル様がいる場所はここから少し遠くの王国、アルラトという国にいます」


ブルクハルトさんが説明を始めた。

アルラト、聞いた事が無い名前の国だな。


「どの様な国なんです?」


俺がそう聞くと、ブルクハルトさんは少し仕草をした後、


「正直言って、特筆する国では無いですね。まだまだ発展途上の段階です。帝都の街を小さくした国という様に想像していただければ、それが一番近いと思います」


難しそうな表情で説明してくれた。

いつもならスラスラと説明してくれる彼がここまで考えるという事は、本当に特徴が無いんだろうな。

俺はそう思いつつ、


「周辺に広い平原や丘はありますか?」


更に質問を続ける。


「広い草原ならありますめ。元々何もない平原に人が集まり始め、栄えて始めた国ですから」


俺の問いに、ブルクハルトさんが答えてくれる。

それなら、すぐにでも行けるな。


「ブルクハルトさん、準備の事なのですが口出ししても良いですか?」

「何でしょうか?私共で難しい事以外なら、すぐに準備させますが…」


俺の言葉に、そんな心強い言葉を返してくれるブルクハルトさん。

彼の言葉に俺は、


「冬に着る様な厚手の服と、ロープをお願いします」


特に必要な物を述べる。

それを聞いたブルクハルトさんは、何故そのような物をとでも言いたげな表情をしたが、特に意見をする事無く準備の品に加える様に指示を出した。

そうして準備が整った様で、奴隷の子が俺とブルクハルトさんを部屋へと呼びに来た。

その子に従って部屋を出ると、ブルクハルトさんは着替えの為に別行動になり、俺は先に商館の外に案内された。

商館の外に出ると、ここへ来た時とは違う少し造りが頑丈そうな馬車が佇んでおり、その脇には何故か武装した亜人族の子達が並んでいた。


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