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リザードマンの店主がティーカップをテーブルに置いて離れていくのを確認していると、


「さて、落ち着いた所で改めて君に聞きたい事がある」


レオノーラさんが話を切り出してきた。


「何ですか?」


俺が彼女の言葉にそう返すと、


「まだ会った事は2回目であるが、君は他の者達に比べれば亜人族に対して悪感情を抱いていない様に見える。それは何でか聞いてもいいかい?」


そんな普通の事を聞いてきた。

俺はレオノーラさんの質問を聞いて、


「特に聞かせる様な話なんて無いですが、それでも聞きたいですか?」


俺が彼女に聞き返すと、レオノーラさんはあぁと答えて頷いた。

レオノーラさんの返事を聞いた俺は、少し深呼吸をすると、


「元々は、俺自身が虐げられていた事がある…からですかね。まぁここの亜人族の皆さんに比べれば、天と地の差があるんですけどね。それに虐げられる理由も、俺自身の自業自得がほとんどなんですけど」


なるべく軽い感じで彼女にそう伝える。

それを聞いたレオノーラさんは驚いた表情をして、


「ほぅ、君ほどの実力を持っているのにか」


そんな事を言ってきた。

正直な話、強くなるために色々と必要な事をしてこなかったから虐げられたんだけど、それを彼女に説明するのは少し大変だ。

おそらくボロが出て、怪しまれてしまうだろう。


「レオノーラさんにそう言っていただけると、虐げられても頑張った努力が報われます。とまぁ、おそらく同情も含んでいるんでしょう、かつての自分と重なる亜人族を守りたいと思ったのは」


簡潔に説明し、一応建前を述べる。

それから一度、目の前に置かれているティーカップを持ち上げて中の液体を一口含む。

それを聞いたレオノーラさんは、何故か少し納得がいっていない様な不満そうな、キリッとした瞳をジト目にして俺の事を見てくる。

おそらく、今の俺の言葉に納得していないだろう。

続きを話せと言う様に、ただ黙ってひたすらに俺の事をジトーッと見てくる。

俺はそんな彼女の視線に苦笑し、


「これは…建前と言いますか、理由の3割くらいなんですけどね…」


素直に建前だった事を吐露する。

俺のその言葉に、レオノーラさんはジト目で見てくるのを止めて、


「では、7割の理由はなんだい?」


そう聞いてきた。

別に言っても良いのだが、変に受け取られてレオノーラさんと周りの人達に嫌な思いをさせたくないんだよな…。

俺がそう思っていると、


「………」


レオノーラさんは俺が理由を言うのを黙って待っている。

俺はレオノーラさんのそんな様子に、ここで彼女に誤解されない様に注意して説明しようと考え、


「…一説によると、人は自分に持っていないモノを持っている人を好きになると言います」


回りくどい説明の仕方を始める。

しかし、


「…どうだろうな、人は自分達とは姿形が違うモノを嫌がるものも多い」


まさかの変な言い回しの所為で、彼女の友好度が下がり始めそうになってしまったッ!?

もう、無駄に考えるなんて止めだッ!

俺は覚悟を決めて、


「俺は、前にも言ったと思いますが亜人族の事が好きなんですッ!大好きなんですッ!」


そう言い切った。

あまりに俺の表情と言った言葉に驚いたのか、レオノーラさんは驚いた表情をする。

しかし彼女に俺の言葉に返す言葉を考えさせない様に、


「ある者は、柔らかい毛に覆われた耳を!ある者は、鋭く尖った牙を!ある者は、美しくしかし屈強に伸びた脚を!そのどんな姿も、俺からすれば愛おしく慈しみたいと思ってしまいます。レオノーラさんと剣を交えた時のあの腕、とても美しかったです。炎の様に紅蓮で、業物の剣の様な艶がある鱗、今思い出しただけでも思い浮かべる事が出来るほど、記憶に残っています」


捲し立てる。

少し褒めているのか疑問に思われるかもしれない例えを出してしまったが、俺は凄く褒めているつもりだ。

俺がそう思っていると、


「………亜人族の私が言うのも変な事だが、君はそれを本気で言っているのか?」


レオノーラさんが少し困惑した様に聞いてきた。

俺の突然の告白に、流石の彼女もどう対応したらいいのか考えている様だ。

心なしか、周りでお茶や食事を楽しんでいた亜人族の人達が距離を取られた気がする…。

俺がそう思っていると、


「ごく稀にだが、亜人族と人族の仲が普通の愛情で繋がる事もある。しかしそんな事は稀だ。ほとんどの場合が、邪な考えを持っている連中に、人族に従わないといけない立場の亜人族が無理矢理従わせられる事の方が圧倒的に多い」


レオノーラさんは続けてそう言ってきた。

彼女は言葉を発しながら表情を変えていき、今は困惑よりも怒りの方が強そうだ。


「………俺もその考えをしていないかと言われれば、答えるのが難しいでしょう」


俺がレオノーラさんの言葉に素直に答えると、彼女の表情が一気に怒りで染まる。

しかし彼女に怒られるよりも先に、


「なぜなら、俺は亜人族の事を愛情も含め、邪な目で見ていた事も事実なんですから」


日本で言っていたらセクハラになってしまう発言を、レオノーラさんに堂々と言い放った。

俺のセクハラ発言を聞いたレオノーラさんは怒りの表情から一転して時が止まったかの様に固まる。


「という事で、俺は決して亜人族の人達を憐れんでいる訳では無い事を知ってもらいたいです」


これ以上彼女を混乱させるのも申し訳ないと思った俺は、とりあえずそう言って一度話を切る。

俺のその言葉を聞いたレオノーラさんは、俺の締め括りの言葉を聞いてハッとして、


「ここまで思考停止したのは久しぶりに感じる。…それにしても、まさか本当に亜人族をそこまで思う者がいたとは…」


そう言ってきた。

俺はレオノーラさんの言葉を苦笑で流し、


「では、今度は俺が質問をしてもいいですか?」


彼女にそう聞いてみる。

すると、俺の言葉を聞いたレオノーラさんは、


「構わないが、騎士団の事は外に持ち出す事は出来ない。それ以外の事で頼む」


騎士団の質問をダメと言いつつ、それ以外なら大丈夫と俺に伝えた。

それを聞いた俺は、


「超越者になった経緯や、方法を」


レオノーラさんにしか答えられない事を質問した。


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