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突然襲い掛かってくるモノに驚きつつ、エルヴァンは冷静に大剣を振るい切り落としていく。

しかし、何度も襲い掛かってくるモノを見て不審に思ったエルヴァンは、一旦甲板の端から少し距離をとる。


「先程の光は、雷魔法のショックに似ている。だが、人型でも無いモンスターが魔法を使えるのだろうか?動きも単調で、知恵を持っているとも考えにくい…」


エルヴァンはそう独り言を呟きながら、船乗り達の足止めを任せたアンリに視線を送る。

するとそこには、


「ふぅ~。エルヴァン様!終わりましたよ!」


下半身を凍らせられた船乗り達や冒険者達の姿と、その様子に凄く満足そうなアンリの笑顔が見えた…。

とりあえず全身凍らせていないのはアンリなりの気遣いだろうとエルヴァンは思い、


「そうか、ありがとうアンリ。すまないが、次はあれを攻撃してもらいたい。下手に近寄ると、ショックを使ってくる」


アンリにそうお願いをする。

エルヴァンのお願いの言葉を聞いたアンリは、


「任せて下さい!」


そう自信満々に言うと、


「アイスアロー!」


氷の矢を作り出し、それを一気に射出する。

アンリの氷の矢を受けたうねうねとしたモノは、そのままどんどん氷漬けにされていく。

すると、


「た、退却~!氷使いがいるわ!分が悪い!」


綺麗な女性の声が聞こえてきて、それと同時に少し海に何かが入る様な音がした。

その音が聞こえたエルヴァンは、少し警戒しつつも甲板の端に移動して冑を押さえながら下を覗き込む。

しかしそこには誰もいなく、少し波紋が広がりぶつかり合う海面しか見えなかった。


「モンスターの襲撃と言うよりも、意図的にこの船を襲った様だな…」


エルヴァンが海面を見ながらそう呟くと、


「エルヴァン様!こちらに来て下さい!」


アンリがエルヴァンの事を呼ぶ。

エルヴァンがアンリの元に歩いていくと、そこには海面にユラユラと揺らめいているモノが見えた。


「何だアレは?」


エルヴァンがそう声を出すが、


「分からないですけど、見た感じ気持ちが悪いですね…。エルヴァン様が斬ったモノがあるんですけど…うぇぇ」


アンリは見た感想を言い、更に甲板の床に落ちたモノを見て変な声を出す。

その声を聞いたエルヴァンがアンリと同じモノを見ると、


「確かに変なものだな。何なんだこれは?」


そう言って無造作に持ち上げてしまった。

エルヴァンの行動を見たアンリが、一瞬でエルヴァンから距離を取る。

アンリのそんな行動にエルヴァンが僅かに苦笑をすると、


「エルヴァン様、よくそんなもの触れますね…」


アンリが表情を歪めながらそう言う。

アンリの言葉を聞いたエルヴァンは、改めて手で掴んでいるモンスターの一部の感触を確かめる。


「布の様に薄いが、色は半透明だな。ブニュブニュ?ブヨブヨ?その様な感触がする」


エルヴァンがそう言うと、アンリの表情は更に歪む。

すると、


「………う…うぅ…あれ?ここは…」


甲板の床に倒れていたこの船に乗っている唯一の女性が目を覚ました。

しかし、


「え…ぇ…キャァァァッッッ!!」


自身の体に、何も身に着けていない状況に気が付いた女性は悲鳴を上げて船室へと繋がる扉の先へ消えていった。

その悲鳴を皮切りに、甲板の床に倒れている人や未だに氷が解け切っていない人達が目を覚まし始めた。

エルヴァンとアンリはそんな人達に先程の状況を説明し、安全を確保するために下半身を氷漬けにした事を謝罪をした。

そんな2人に、むしろこちらが助かったとお礼を返されてエルヴァンは、


「そういえば、これが何か分かるか?私達の船を襲ってきた者達が使役?従えていたモンスターの一部なのだが…」


手に持っているモノを船乗り達や冒険者達に見せると、


「こいつは…クラーケンの触手だな。しかもクラゲタイプの面倒なタイプだ」


船乗りの1人がそう言い、周りの船乗り達もその言葉に同調し頷く。


「ふむ、そのクラーケンは何種類もタイプがあるのか?」


エルヴァンがそう言うと、


「まぁ全部で3種類のクラーケンがいるが、一番厄介なのは今あんたが持っている奴だな。触れた瞬間に体を動かなくしてきやがるから、専用のポーションか遠距離の武器が必要なんだ」


船乗りがそう説明してくれる。

それを聞いたエルヴァンは、


「なるほど。それにしても、随分とこの付近の海は襲われやすいんだな」


そう言って海に視線を移すと、


「そう言う訳じゃなかったんだがな…。とりあえず、今日は色々と助かった。この航海が終わったら、謝礼金を受け取ってくれ」


何とも言い切れていない微妙な反応を返され、エルヴァンとアンリはその様子に少し気になりつつ、船乗り達に後始末を任せて自分達の船室へと戻っていった。




そんな事がジークへの航海で何度かありつつも、船乗り達も少しずつ状況に対応していき、セイレーン達の襲撃にも慌てずに戦っていた。

唯一クラーケンが出た際は、エルヴァンとアンリが活躍し負傷者などが出る事は無かった。

そうして遂に、ジークの港に着く事が出来た。

エルヴァンとアンリは船から降り立つと、


「ふむ。面白い。風景も何もかも新鮮に見える。人々の服装も帝都などの服装と違うな」

「うわあぁ~~~ッッ!!ここがジーク!凄い凄いッッ!」


2人は感想を言い、ジークの人達を見る。

すると、


「あれ?もしかして…」


アンリがそう呟いて、何度もジークの港を行き来している人達を見る。

そして確信したのか、アンリはエルヴァンの事を見上げると、


「エルヴァン様、ジークの人達って…」


まるで確認をするようにエルヴァンに声を掛ける。

そんなアンリの言葉を聞いたエルヴァンは、


「私も気づいた。ジークの人々はおそらく…全員亜人族だ」


そう言った。

エルヴァンとアンリの視線の先には、多種多様の獣人、エルフ、人型で意思疎通が出来るモンスター達が行き来していた。

それを見たエルヴァンとアンリは、


『『ヴァルダ様が見たら、とても瞳を輝かせそうだ』』


全く同じ事を思いながら、帝都ではあまり見られなかった光景を見ていた。


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