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甲板に響き渡る怒声の発生源に視線を向けるエルヴァンとアンリ。


「申し訳ありません」

「あの鳥共、変に知恵を付けまして…」


商人の男が、周りでヘトヘトになっている冒険者や船乗り達に叱咤の声を出す。

その声に、商人の周りにいる者達は申し訳無さそうな顔や、不満そうな表情をしているのに気づく2人。


「何もしていなかったのに、何であんなに偉そうなんですかね?」


そんな様子にアンリがそう言ってやや不満声を出す。

アンリの不満そうな言葉を聞いたエルヴァンは、


「立場が上なのだろう。冒険者ギルドでも、依頼の手続きを新人にやらせていた者がいただろう?それと同じ事だ」


アンリにそう説明をするが、


「それとこれとは少し違いますよ。命の危機に陥っても頑張って敵を追い払えたのに、何もしないで隠れていた臆病者が危機が去るなり、頑張っていた者達を罵倒するなんておかしいです!」


アンリは納得できずにそう声を出す。

すると、


「ガキの分際がッ!俺に何か言いたい事があるのかッ!?」


商人の男性にアンリの言葉が聞かれたのか、男性がアンリに向かって怒鳴りつける。

それを聞いたアンリが、


「僕はガキじゃないです~!変に威張って格好悪いって本当の事を言ったんです!自分は安全な所で隠れていただけなのに、頑張って戦ってた人達を叱りつけるなんて変です!」


怒った様子で商人の男性に反論する。

アンリに面と向かってそんな事を言われた男性は、


「キ、キサマァッ!おいお前ら!今すぐあのガキをここへ連れてこい!」


周りにいた者達にそう指示を出す。

しかし、商人の男性の指示を聞いても周りにいる者達はすぐに行動を移す事が出来ない。

船室内に隠れていた商人の男性は知らないが、自分達を襲ってきたセイレーンの群れを撃退したのはアンリとエルヴァンだとしっかりと見ていた。

それと同時に、自分達はあれほどのセイレーンの群れに息も絶え絶えの状況になったというのに、エルヴァンとアンリは消耗が見られない。

圧倒的に自分達との差を理解している商人の男性を除いた全員が、エルヴァンとアンリを前にしてたじろいでしまう。

しかし、自分の指示に従わない周りの者達を見て怒りの感情が更に上がった商人の男性は、ドスドスと床から大きな音を出すように歩いてアンリの元に向かおうとする。

それを見ていた商人の周りの者達が必死に止めようと試みる。


「アンリ、お前の気持ちは十分に分かる。しかし、あまり相手を挑発するような言葉は控えろ。あまり良い事では無い」


そんな様子を見ていたエルヴァンがアンリにそう注意をすると、


「…そうですね。少し頭に血が昇ってしまいました…。反省しています」


流石にエルヴァンに注意させた事に、自分の行動を恥じて反省するアンリ。

その様子を見たエルヴァンは少しゆっくりと、警戒されないように歩き出しごちゃごちゃとしている商人達の元に行く。

しかしエルヴァンの気遣いとは反対に、商人の周りにいる者達は警戒して緊張した表情をする。

それに気づいたエルヴァンではあったが、今自分が何をしても警戒されてしまうと察し、


「私の仲間が失礼した。しかし、彼らも精一杯撃退をしようと努力していた。責めるのは可哀想だ」


エルヴァンはそう言って船乗りに部屋に戻ると言い、アンリを連れて船室に戻って行った。

その後は船室で大人しく過ごし、エルヴァンは大剣の手入れをしたり頭を体の上から外して簡易的なベッドの上に置いてリラックスをした。

アンリは、船室の小さな小窓から見える海の様子を見ていたのだが、代わり映えしない景色に眠気を誘われ、ベッドに横になって昼寝を始めてしまった。

そうして船が海を進む、波の衝突音や海鳥の鳴き声を聞きながら過ごしていき、その日はそれから何も起きずに夜へとなった。

夜になっても船室から出る予定が無いエルヴァンとアンリは、外の月明かりで光る海面を見ている事しかする事が無い。

特にアンリは、昼寝をしてしまった所為でいつもだったら寝る時間になっていても未だに眠気すら来ていないのだ。

それとは反対に、エルヴァンはベッドに入る準備を始めていく。

それを横目で確認しつつ、海の水面を呆然と眺めているアンリ。

すると一瞬、海面に何やら岩などでは無さそうなシルエットが見えたアンリは、


「エルヴァン様、今外に何か…」


小窓の方を指差しながらそう言う。

アンリの言葉を聞いたエルヴァンが、


「…外という事は、海だな。夜の方が見えるアンリがそう言うという事は、おそらく外に何かいるのだろう。確認しに行こう」


そう言ってベッドから立ち上がり、すぐに準備を始める。

エルヴァンとアンリが準備を終えて船室を飛び出すと、外から微かに聞こえてくる声。


「エルヴァン様、昼の時の声では無いですけど、歌声が…」


アンリがそう報告をすると、


「昼の時は見張りがいたお陰で耳をある程度聞こえないようにしていた。奇襲を受けていると考えると、急がなければマズいな」


エルヴァンが最悪の状況になっている可能性を声に出す。

そうして船の甲板に出た瞬間、船の周りに生えているモノにエルヴァンとアンリは止まってしまう。


「何だあれは?」

「う、うねうねしていて気持ち悪いです…」


2人がそう言い合っていると、自分達が出てきた通路や他の船室に繋がる扉から虚ろな目をしている船乗りや冒険者達がゆっくりと出てきた。

それを見たエルヴァンは、自身が予想した状況になっている事を察し、


「アンリ、船乗りや他の人達を頼む。私は蠢いているモノをどうにかする」


アンリにそう指示を出して、背中に背負っている大剣を抜き構える。


「分かりました!」


エルヴァンの指示を聞いたアンリがそう答えると、フラフラと甲板の端の方に移動しようとする船乗り達を魔法で強制的に動けないようにする。

エルヴァンは海に落ちない様に気を付けながら駆け、うねうねと動いているモノを一本切り裂く!

その瞬間、エルヴァンの体に僅かな光が走る。

それと同時に、今までただうねうねと動いていたモノが一気にエルヴァンに襲いかかる!


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