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13頁

バルドゥの意見を聞いて右側の通路を通っていくと、奥から嫌な臭いがする。

おそらく、バルドゥの鼻があの分かれ道の時に嗅ぎ取ったのだろう。

俺がそう思っていると、今までの洞窟の通路とは違って少し開けている空間に辿り着く。

そして、そこには裸にされた女性達が横たわっている。

すると、


「ひッ…」

「もう…やめて…」

「ころして…ころして‥」


俺の前に立っているバルドゥを見て、女性達が這いつくばる様に距離を取ろうとする。

中にはもう身動きすらしない女性もいる。

彼女達は総じて瞳に光が無く、絶望の表情をしている。

そして、彼女達の体に付着しているモノと臭いで、ここで何が行われていたのかが分かる。

胸糞悪いな。

俺がそう思っていると、


「ヴァルダ様、私では彼女達に話しかけるのは不可能です。どうか…お願いしても…」


バルドゥが俺に懇願してくる。

それは別に構わないのだが、それではバルドゥが辛すぎる。

彼はあんな野生のゴブリンとは違う事を、証明する事が出来れば良いのだが…。

俺がそう思いながら、


「大丈夫ですか?助けに来ました」


1人の女性に出来るだけやんわりと声を掛ける。

だが、


「ひぃッ!!」


女性は短い悲鳴を出して体を引きずらせて俺から距離を取ろうとする。

暗い洞窟内で見えにくいのだが、彼女の両足が膝より少し下から失っている。

見ると、汚い布か何かを巻かれて止血してある様だが、傷がまだ新しい事からゴブリン達の仕業だろう。

彼女達の心も体も、すでに破壊し尽くされている。

誰か、少しでも話せる人がいれば…。

俺はそう思って1人1人に話しかけるが、皆悲鳴を出して逃げてしまう。

もしかすると、俺が男だから怖いのかもしれない。

なら女性に任せるしかないのだが…。

今ここで誰かを出しても、安心して治療や意思の疎通ができる訳では無い。

話している途中にまたゴブリン達がここに来てパニック状態にでもなれば、今度は女性に対してもパニックを起こす可能性もゼロではない。

俺はそう判断して、


「バルドゥ、今彼女達と意思疎通する事は無理だ。先にゴブリン達の殲滅を優先する」


少し離れた所にいるバルドゥに声を掛けると、


「分かりましたヴァルダ様。…1つ私の願いを聞いて下さいませんか?」


俺にそう言ってくる。


「その願いとは何だ?」


俺がバルドゥに質問すると、バルドゥは震えた声で、


「ここのゴブリン達の殲滅、私1人でさせて貰えないでしょうか?」


そう言った。


「構わない。だが、完全なる勝利をしてこそ意味がある。手こずったり一太刀でも斬られれば、それは殲滅ではないと思え。それが出来るなら、俺は何も言わない」


俺がバルドゥにそう言うと、彼は頭を垂れてお礼の言葉を言ってきた。

俺とバルドゥは女性達をこの場に残して来た道を戻り、今度は左側の通路を進み始める。

そうして先程よりも広い空間に出ると、そこには13体のゴブリンと1体のオークがいた。

オーク、ゴブリンと同じ緑色の肌だが体の大きさが違い、俺よりも大きい。

筋肉質なその腕で殴られれば、結構なダメージになる。

そして、ゴブリン以上に交配力が強い。

おそらく女性達が俺に対しても怖がっていたのはこれが原因の1つだろう。

俺はそう思いながら、敵であるオークとゴブリンを観察する。

オークを見ると、その体にはいくつもの古い傷痕と真新しい傷が複数ある。

手には大き過ぎない斧が握られている。

次にゴブリンだが、こいつらは先程バルドゥの手によって死体になったゴブリン達とそこまで変わらない。

手作りした武器を持っているのは変わらないが、槍と弓が追加されている。

まぁ、槍はあの通路じゃあまり使いこなせないから仕方ないだろうが…。

俺はそう思いつつ、13体のゴブリンの内の異様な1匹を見る。

防具と服を装備して、少し装飾されている剣を握っている。

それとは別に腰に真新しい剣を帯剣している。

明らかにゴブリン内での階級が違うのだろう。

俺がそう思っていると、


「愚カナ人ガ、俺様の棲ミ処ニ何ノ様ダッ!?」


異様なゴブリンが突然声を荒げる。

それと同時に、その他のゴブリンとオークが威嚇してくる。

ただのゴブリンではあそこまで話す事は出来ない。

おそらく上位種であるゴブリンキングだろう。

だが、オークまで従わせているのは凄いな。

俺がそう思っていると、


「貴様達の行いに軽蔑し、これ以上被害が広がらないために殺しに来た!」


バルドゥがそう言う。

…異世界に紛れ込んでしまった主人公みたいな俺より、遥かに主人公をしている気がする。

俺がそう思っていると、


「同ジゴブリン同士、分カリ合エルト思ウガネ。ソンナ人間風情ニ仕エルヨリ、俺ニ従エ」


ゴブリンキングが握っている剣を上に掲げる。

すると、


「あぁ、なるほど。だからオークが従っているんですか」


バルドゥが納得した声でそう言う。

何が分かったのか俺には分からん…。

話に付いていけないでいると、


「あの剣、ゴブリンや様々なモンスターの血の匂いがしみ込んでいます。その匂いでオーク達を支配しているんでしょう」


バルドゥが俺にどういう事かを教えてくれる。

なるほど、だからゴブリンよりも強いオークがあのゴブリンキングに従っているのか。

すると、


「それはそうと、貴方今なんて言いました?ヴァルダ様の事を人間風情と言いましたよね?」


バルドゥが低い声で声を発する。

俺は別に気にしていないぞ?


「貴様達の様なクズがッ!我らの主を侮辱した罪、万死に値するッ!」


バルドゥは咆哮すると曲刀を構えて一気に走り出してゴブリン達を斬り裂く。

ゴブリン達はあまりの身体能力の違いに困惑して、上手く身動きが取れないで首を刎ねられていく。


「行ケ!オークノ力を見セツケロ!」


バルドゥがゴブリンの首を刎ね終えるのと同時にゴブリンキングがオークに指示を出す。

ゴブリンキングはオークがいる事で余裕の表情をしている。

冷静に殺す事を考えているバルドゥと、威嚇をしているオークが対峙する。

俺はそんな光景を見て、


「諦めろ、ゴブリンキング」


俺はゴブリンキングに声を掛ける。


「何ヲ…」


俺の声に反応してゴブリンキングが声を出した瞬間、バルドゥが曲刀を振り下ろす!

バルドゥが曲刀を振り下ろした瞬間、オークの体が頭から綺麗に割れて地面に倒れる。


「バルドゥは、俺の育てたゴブリンだからな。レベルが圧倒的に違う」


俺が発した言葉を理解したゴブリンキングは、あんぐりと口を開けたまま呆然をしている。


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