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時は少し遡り、ジーグへの内偵依頼を受けたエルヴァンとアンリは馬車に揺られて草原を進んでいた。

冒険者ギルドで依頼を受けたエルヴァンとアンリは、その足で受付嬢に案内された馬車に乗り込んで帝都を出発したのだ。


「それにしても、ただの内偵依頼なのにどうして第一級冒険者しか受ける事が出来ないんでしょうか?」


アンリが首を傾げてエルヴァンにそう聞くと、


「分からない。だが、ジーグに依頼内容の詳細を説明をしてくれる者がいると言っていた。おそらく何か重要な意味があるのだろう」


エルヴァンはやや頭を横に振りながら、アンリの質問に答える。

すると、


「お客さん、これからジーグへ行くのかい?」


馬車を操縦している御者のおじさんが2人に声を掛ける。


「はい!」


御者のおじさんの質問に、アンリは元気良く返事をする。


「そうか。今のジーグは物騒な噂があるから、気をつけるんだよ」


御者のおじさんがそう言うと、アンリは首を傾げてエルヴァンを見てから、


「それはどんな噂ですか?」


おじさんに質問をした。

アンリに質問されたおじさんは、


「いや~、俺もそこまで知らないけど…。何でも元々ジーグはこの大陸からの貿易を全部断っていたんだけどね、それが最近それが緩んだって聞いたんだよ。商人だったらもっと詳しいんだろうが、馬車の御者にはここまでくらいしか知らないね~」


そう言って苦笑をする。

それを聞いたアンリは御者のおじさんにお礼の言葉を言い、


「どういう事でしょうかねエルヴァン様?」


隣にいるエルヴァンにそう聞いてみる。

しかし、


「私にも分からん。こういう時、ヴァルダ様ならば予想をする事が出来るのだろうが、私にはそれが出来ないな」


エルヴァンはそう言って、馬車の外に視線を送る。

そうして話は終わってしまい、馬車はどんどん進んでいく。

途中様々な村を経由し、エルヴァンとアンリは数日の馬車生活をしてようやくジーグに行く為の船がある港街に到着した。


「今までお世話になりました!」

「あいよ。あんたらも良い旅をな~」


アンリと御者のおじさんが最後にそう挨拶を交わし、エルヴァンとアンリは港街の街並みに視線を移す。


「凄いですねエルヴァン様!何か変な匂いがしますしベタベタしますけど、街並みは綺麗ですね!」


アンリが何とも言えない表情で感想を述べると、


「そうだな。体の撫でる風が帝都とは違う様だ」


エルヴァンも冑の下で、表情を顰めつつそう言って歩き出す。


「どこに行くんですかエルヴァン様?」


歩き出したエルヴァンの後に付いて行き、アンリはエルヴァンにそう質問をする。

アンリの質問を聞いたエルヴァンは、


「これから海を渡る。つまり先に船の予約を取らなければ、ここで立ち往生してしまうだろう」


そう言って船着き場へ向かって歩みを進めた。

船着き場まで歩いているエルヴァンは真っ直ぐと前を見つめて歩いていて、アンリは帝都とは違う街の風景を見て楽しそうにしている。

そして、そんな2人を見ている港街テンダールの町民。

そんな町民の視線を気にせず、エルヴァン達は船着き場へと真っ直ぐに移動した。

船着き場に着いたエルヴァンは、


「すまない。ジーグに行きたいのだが、どの船に乗れば行く事が出来るだろうか?」


近くを歩いていた船乗りにそう聞いてみる。

突然声を掛けられた船乗りは驚きつつ、


「あぁ?ジーグに行く船って言えばアレしかねえぞ」


一つの船を指差す。

エルヴァンとアンリは船乗りが指差した船を見て確認を取ると、教えてくれた船乗りにお礼を言ってその船に向かって歩き出す。

船乗りに教えて貰った船の近くに行くと、


「うわ~、こうしてみると大きいですねエルヴァン様」


アンリが船を見てそう声を出す。


「あぁ、しかしこのくらいの大きさなら塔でも同じ位の者がいるぞ」


アンリの言葉に、エルヴァンが塔にいる住人の事を思い浮かべながら言うと、


「それは分かってますよ。僕が言いたいのは、移動する建物では大きいなって意味で言ったんです!」


アンリがエルヴァンの言葉にそう返した。

アンリがエルヴァンにそう言った瞬間、


「あんたら、見ねえ顔だが俺達の船に用があんのかい?」


近くにいた上半身裸の男性が声を掛けてきた。


「はい!帝都の冒険者ギルドで依頼を受けたんですけど、僕達はジーグへ行きたいんです。先程人に聞いたら、この船が唯一ジーグに行くって聞いたので乗船出来ないか聞きにきました」


アンリが男性にそう聞くと、


「なるほどなぁ~、その身なりで奴隷商人とかじゃねえとは思っていたが、まさか冒険者だったとはな~。乗る事は可能だが、出港は明後日になるぞ。元々ジーグに用がある商人がまだ到着して無いんだ。そいつらが来るまでは、ジーグに船を出す訳にはいかねえんだ」


男性はアンリとエルヴァンの姿をマジマジと見ながら説明をしてくれる。


「了解した。では先に金を払おう」


エルヴァンはそう言うと、アンリに視線を送る。

アンリはエルヴァンからの視線に気づき、懐に入れている金銭入れの袋を取り出す。


「1人金貨3枚だ」

「えッ!?そんなに高いんですか!」


金額を聞いたアンリが、驚いてやや大きな声を出してしまう。

そんなアンリの声を聞いた男性は、


「まぁな。海に出ると、モンスターの連中が自分達の縄張りから追い出そうと攻撃を仕掛けてくるんだ。それを撃退するための物なんかは俺達が仕入れるからな。あんた達の安全の料金だと思ってくれたら良い」


少し面倒そうにそう言った。


「わ、分かりました。じゃあこれで」


アンリは仕方なく、袋から金貨を合計6枚取り出して男性に手渡すと、


「毎度。明後日の早朝に出港するから、それまでには港に来てくれ」


彼は集合時間をアンリ達に伝えて、仕事に戻って行った。

そんな男性の後ろ姿を見ていたエルヴァンは、


「アンリ、ここまで来たし時間もある。何か見に行かないか?」


目の前で少ししぼんでしまった金銭入れの袋を見ていたアンリにそう声を掛ける。

すると、


「本当ですか!ぜひ行きましょう!」


エルヴァンの誘いの言葉が嬉しくなったアンリは、先程とは全く違うテンションで声を出しいつもよりも早い歩みで歩き始めた。

そして、そんなアンリを見たエルヴァンも冑の下で苦笑しながら彼を追いかける。


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