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歓迎の言葉を言ったは良いものの……。
「ど、どういう事ですかビステル様が創り上げた世界というのはッ!」
ほとんど聞いてくれなかった様で、普通に質問をされてしまった。
それにその質問をされても、答える事をしても理解する事は出来ないだろうしな…。
俺がそう思っていると、
「あなた、落ち着いてください。ビステル様のお話をしっかりと聞きましょう?ね?」
エルフの女性がそう言って、夫である男性に言い聞かせる。
女性の方が大人びている外見の故に、何か胸にクるモノがある。
俺はそんなくだらない事を思いつつ、
「簡単に説明しますと、この本の中の世界という装備がこの世界の基盤となり、俺がその基盤に土地や家族…仲間を引き入れた世界がここという訳です。一応今のところ先程の方法でしかこちらの世界には来れないので、世界で一番と言って良い程安全な場所では無いかなと思います」
そう簡潔に説明をし、一回説明を中断する。
何故ならば、俺に質問をしてきたエルフの男性と女性は俺の話を聞いてくれているのだが、他の人達は周りの事が気になっている様子で俺の話を聞いている様に見えない。
一度気の済むまで辺りを見てもらった後、この世界で暮らす事の簡単な注意事項を教えるとしよう。
俺はそう思い目の前で凄い勢いで首を動かしている人達を見つつ、次に何をしようか考え始めた。
そうして奴隷の皆さんが落ち着くまでクラスチェンジをして、錬金術師になってから島を作る為の素材の数を確認していた。
そしてようやく皆が落ち着いた雰囲気になり、
「さて、では改めて説明させて頂きます。っとその前に……」
俺は声を出したのだが、奴隷の彼らの姿を改めて見て必要ない物を着けているのを確認し、俺はブルクハルトさんから貰った彼らの奴隷契約書を取り出すとそれを破った。
ブルクハルトさんの説明で、奴隷契約書がある限り彼らは奴隷だという事を聞いたのでそれを破ってしまえば奴隷から解放できる。
わざわざ課金ハズレアイテムを使わなくても良いというのは、この謎や未知が多いこの世界ではありがたい事だ。
「UFO」の時にはハズレだったアイテムも、この世界では重要なアイテムになる可能性は十分にある。
俺がそう思っていると、
「な、何をしてるッ!?」
獣人の女性が、困惑と怒りが混ざった表現しにくい表情で、俺にそう言ってきた。
そんな彼女に俺は、
「え?いや契約上と言いますか、ブルクハルトさんの利益の事を考えて貴方達を奴隷として買いましたが、俺は奴隷が欲しい訳では無いです。ので、契約はこれで解除させて頂きます。先程手に付けた契約印も、奴隷としての契約とかでは無くこの世界に入る通行書みたいな理由で付けたので、これで貴方達は一応自由の身になりました」
そう自分の考えを教える。
それを聞いた元奴隷の人達は、何故か信じられないと言った表情で俺の事を見てくる…。
え、そこまで変な事していないよな?
俺は目の前にいる皆の表情を見て不安に思いながらも、
「という事で、これからは貴女達を1人のヒトとして俺は話します。だから、何か質問があったり反論などがあっても自由に言ってくれて構いません。……と、前置きをして、これから皆さん?ここで一緒に暮らしませんか?ブルクハルトさんの商館でも話をしていた通り、これから農業をするのに貴方達の知恵と技術が必要なんです。生憎、俺の家族は皆そういった方には成長させなかったので、外から人材を入れるしかないんです」
そう言って苦笑をする。
その言葉を聞いた獣人の女性が、
「……信じられないッ!」
俺にそう怒鳴ってきた。
まぁ彼女の境遇を考えれば、怒りの声を出すのも仕方がないし人族の俺の事を信用できないのも仕方がない事だ。
こればっかりは、彼女の判断に任せるしかないだろう。
俺はそう思い、
「今貴女が外の世界に脱出したとしても、すぐに何かしらの問題が発生すると思います。考えを変えて、当分ここで俺の力を利用して、準備を整えると考えてはどうですか?」
とりあえず獣人の女性にそう提案してみる。
しかし、俺の言葉を聞いた女性は毛を逆立てて警戒を続行する…。
ううむ、どうしたものか…。
今俺が何を言っても彼女は警戒をするし、最悪周りの人達の不安になるかもしれない。
俺がそう危惧した瞬間、
「いっぱいいる!」
「いっぱい!」
後ろから声を掛けられ振り向くと、サールとソルが俺達の元へ駆け寄って来る姿が目に入る。
珍しく、彼女達の面倒を見ているルミルフルと常に一緒にいるヴィアンがいない光景に少し驚きつつ、
「気をつけるんだぞ~」
少し声を出して、2人にそう注意をすると、
「そうだ!怒られる!」
「怒られちゃう!」
サールとソルが思い出したかのように、駆け足からゆっくりとした足並みに変化する。
普通に歩いている分には転んだりする事は無いだろう。
俺がそう思って見守っている内に2人は俺達の元へと辿り着き、
「こんちわッ!」
「こんにちはッ!」
俺達にそう挨拶をしてきた…。
誰だ、サールに軽いノリを教えた奴はッ!?
見つけたら説教してやるッ!
俺はそう思いつつ、
「今日も元気だなサール、ソル。こんにちは」
彼女達の言葉に挨拶を返す。
その言葉を聞いた2人は顔をほころばせ、俺の後ろにいた人達にも挨拶をして回り始めた。
こんな所に子供がいるとは思っていなかったのだろう。
皆が戸惑いつつもサールとソルに挨拶をしている姿を見ながらそう思っていると、
「おかえりなさいませヴァルダ様」
また後ろから声を掛けられた。
「ただいまシェーファ。何か問題などはあったか?」
俺は振り返る事なくシェーファの言葉にそう返すと、彼女が俺の隣にスッとやって来る。
そんなシェーファに俺は質問をすると、
「いえ、特に問題は起きていません。それよりもこちらの方達は…」
シェーファはサールとソルに挨拶されている人達を見て、警戒した様子も無く聞いてきた。
もしかしたら、エルフがいるからかもしれないな。
俺はそう思いつつ、
「今度始める、農業を手伝ってくれるかもしれない人達だ」
そう答えた。
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