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俺が謝罪をすると、ブルクハルトさんの後ろに立っていた人達が少し安心した様に感じた。

不安にさせてしまったのは申し訳なく思うが、そこまで変な表情をしていたのだろうか?

俺がそう思っていると、ブルクハルトさんが軽く咳払いをした後、


「では続きまして、ヒャルダ。獣人の女性で年齢は16歳。奴隷になった経緯は不正の奴隷商人一行による捕縛。親は殺されてしまい、身内は無し。そのため人族に対しては敵意を剥き出しにしており、流石の私にもこの有様です」


奴隷紹介を続けてそう言うと、彼は後ろの獣人の女性を見る。

そんなブルクハルトさんに対して、ヒャルダと呼ばれた女性は怒りを露わにして唸り声を出す。

先程の獣人の男性とは違い、人寄りではなく獣寄りの見た目の所為か迫力がある。

しかし、良い牙をしているなと俺はヒャルダさんを見てそう思う。

普通にしていればおっとりしていそうな顔立ちをしているのに、怒りを露わにした表情はそれとは反対の雰囲気を出している。

毛が逆立ち触ってみたくなるが、彼女の境遇を考えるとそんな不謹慎な事を言うのも考えるのだって良くない。


「正直、ビステル様にオススメするのは考えたのですが…。ビステル様ならば、彼女の事をどうにかしてくれるかもという希望がありまして…」


ブルクハルトさんが俺の様子を窺うように見ながらそう言ってくる。

そんな事を言われてもな…。

俺にも出来る事と出来ない事があるし…。

俺はそう思いながら、


「次の紹介をお願いしても良いですか?」


ブルクハルトさんに促す。

それを聞いたブルクハルトさんは、


「次は2人を紹介させていただきます。エルフのユルゲンとテクラです。見た目は若いですがお2人は35歳です。夫婦でエルフの森から逃げ出したまでは良かったのですが、人族の世界に馴染めなくどうする事も出来なくなり、私の元に自分達から奴隷になりたいと来てもらいました。夫のユルゲンは風魔法が使え、妻のテクラは編み物などの裁縫や軽い植物の育成が出来る様で、紹介させていただきました」


エルフの人達の説明をしてくれた。

なるほど、夫婦だから少し他の奴隷達よりも寄り添っているくらい2人の距離が近いのか。

俺がそう思っていると、エルフの2人が俺に軽く頭を下げてきた。

逃げて来た…か。

何があったのかは、後で聞くとしよう。

俺が気になる事を考えてそう思っていると、


「ビステル様の懐の事を考え、彼らの事を紹介させて頂きました。エルフはその種族の珍しさと容姿で値段が上がってしまいますが、それでもビステル様が持って来て下さった金貨で十分に払える者達です。ただ申し訳ないのですが、私共も生活や仕事の事がありますので、料金は少しだけしか割り引く事が出来ません。申し訳ない」


ブルクハルトさんがそう言って、謝罪の言葉と共に頭を下げてきた。

何故そんな当然の事で謝ってくるのだろう?

もしかしてブルクハルトさんは、値下げをしなかったら俺が怒るとでも思っているのだろうか?

俺はそう思いつつ、


「いえ、支払いは割り引く事はせずに、しっかりと払わせていただきます。変に値引く必要はありません。これからも対等の立場で取引をさせていただきたい故、そういう事はしっかりとさせて下さい。それに……」


彼の言葉にそう言い、一度言葉を区切る。

「UFO」の売買で、変に値引きをすると再度買い物をしてもらった時に値引いてくれるのが当たり前みたいな事を言う人意外にいたからな~、こういう事はしっかりとして取引していたい。

それに、買うのは感情がある「人」なのだ。

彼らの事を値引いて買うなど、絶対にしたくは無い。


「彼らは俺と契約する人達です。その様な人材を、値引いて貰う必要などありません。まだ完全に契約するとは決まっていませんが、それでも言わせてください。…彼らのこれからの人生を、値引いて安く買うなど論外です」


俺がそう言い切ると、何故だかブルクハルトさんは涙を堪えているのか瞳をうるうるキラキラさせて俺の事を見つめ、彼の後ろにいた人達は驚いた様な表情をしている。

あ、獣人の男性の牙カッコいい。


「ありがとうございますビステル様!貴方に出会えて、そしてこのような繋がりが持てて私は嬉しいですッ!」


俺が男性の牙にそんな感想を思っていると、ブルクハルトさんが興奮した様子で俺の手を握りしめてきた。

痛くは無いが、小太りの中年男性に手を握りしめられて、涙目で見つめられる状況はどうやって対処すればいいのだろうか?

そんな感じでブルクハルトさんが1人でテンションを上げている間、俺は彼に手を握られて困惑しており、奴隷の皆さんも彼がここまで興奮している姿を見たのは初めてだったのだろう、俺よりも困惑した表情をしていた。

そうして時間が経過し、ブルクハルトさんが落ち着いたのを見計らって、


「ブルクハルトさんが紹介してくれた人達、個人的には迎え入れたい人材ではあります。…でもその前に、少し彼らと話をする事は出来ませんか?」


そう聞いてみた。

ブルクハルトさんの説明はしっかりとしていたし、俺が知りたい情報も教えてくれてはいた。

だがやはり、彼らとしっかりと話して彼らの意思を聞かないと、俺は彼らと契約をしようと思えない。

俺がそう思っていると、


「えぇ!えぇッ!大丈夫です!私は部屋を出るので、思う存分に話して下さい!誰か、ビステル様と話が終わったら伝えに来てくれ」


ブルクハルトさんは俺の問いにそう答え、奴隷の人達に指示を出してから部屋を去って行った。

あまりの早い動きに、彼が未だに興奮しているのが分かる。

しかし、今は目の前でただ立っている彼らだ。

俺はそう思いつつ、


「とりあえず立ちっぱなしは辛いだろうし、座りませんか?」


先程までブルクハルトさんが座っていたソファと俺の座っているソファの空きを、手で示しながらそう聞いてみる。

しかし、そんな事を言われるとは思っていなかったのか奴隷の皆さんがどうしようかと互いに顔を見て様子を窺う。

そんな皆に俺は、


「ブルクハルトさんだって怒る事は無いでしょうし、俺は立ったまま話をするつもりもないですから。お願いします」


そう言って軽く頭を下げた。


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