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喧騒に客引きの声、レベルデン王国を遥かに凌駕する人の多さ。


「…人多いな」


俺はそう呟いて、とりあえずブルクハルトさんの屋敷に行こうと歩き出す。

後ろからの人波と前からの人の逆流に、人混みが苦手な俺は体力と精神的に大ダメージを受けて、ブルクハルトさんの屋敷に着く頃にはヘトヘトになっていた。

ブルクハルトさんの屋敷の前まで辿り着いた俺は、前回ここへ来た時とは違う門番をしている女性達に笑顔を向けて、


「ここの主、ブルクハルトさんに会いに来ました。ヴァルダ・ビステルです」


そう自己紹介をする。

すると、門番をしている2人の女性は俺の事を嫌そうな表情で見た後、


「ブルクハルト様に連絡を」

「はい」


そう言い合って1人の門番の女性が駆け足で屋敷に入って行った。

…おそらく単純な客だと思われているのだろうな。

それ以外でここまで嫌そうな表情をされるとは思えない。

………もしかして、笑顔を向けたのがいけなかったのか?

俺がそう思っていると、


「お久しぶりですビステル様ッ!!」


女性が入って行った屋敷の扉が勢いよく開け放たれ、屋敷からブルクハルトさんが大声で挨拶をしてきた…。


「お久しぶりですブルクハルトさん。そろそろ事態も落ち着いてきた頃だと思い、帰って来ました」


俺がそう挨拶を返すと、ブルクハルトさんは嬉しそうに俺を屋敷の中へと歓迎してくれる。

門番の女性達には、引き続き門番を続ける様に言ってから俺とブルクハルトさんは屋敷の中へと入る。


「あぁそうだ!ビステル様の伝言、しっかりと聞きましたよ。エルヴァン様と言いましたよね?それと、アンリ様?」


屋敷の中に入って通路を進んでいると、ブルクハルトさんがそう報告をしてくれる。


「そうです。しっかりと伝わっていて良かったです。俺が帝都を抜け出した後、どうでしたか?」


俺がそう聞くとそれは座ってゆっくりと、と言われてしまったので、俺は前を歩くブルクハルトさんに付いて行く。

そうして屋敷の一室に通された俺は、ブルクハルトさんと向き合う形でソファーに座った。

座ってからほんの数秒で部屋の扉がノックされ、ブルクハルトさんが許可すると扉が開いて紅茶らしき物が注がれたティーカップが目の前の低いテーブルに置かれる。


「ありがとうございます」


俺がお礼の言葉を言うと、驚いた表情で俺の事を見た後そそくさと部屋から出て行ってしまった。

そこまで驚かれる様な事をしただろうか?

俺がそう思っていると、


「申し訳ないですビステル様。ティナはまだここへ来て日が浅いので、ビステル様の感謝の言葉を自分に向けられるとは思っていなかったのでしょうな」


ブルクハルトさんがそう説明をしてくれる。

なるほど、そういう事だったのか。

俺はブルクハルトさんの言葉を聞いて、自分に変な事を言っていない事に安堵し、


「そういう事でしたか、良かったです。……それで、俺が帝都を出た後の事を教えて頂けませんか?」


ブルクハルトさんにそう切り出した。

俺の言葉を聞いたブルクハルトさんは一口紅茶らしき物を飲んで喉を潤すと、


「ではまず、報告から始めましょう。魔王の娘の脱走はオークション側の者達が気づいてから静かに捜索が進められました。その仮定で、オークション会場にいた者達は私も含めて怪しい動きをしていないか監視と調査されました。ビステル様は私に会う事もせずに帝都を出て下さったお陰で、私はすぐに難を逃れましたね。オークション側の人達からしたら、私が今回の犯人だと確信していたようですので。日頃の行いでしょうね」


そう説明をしてくれた。

笑いながらそう言うという事は、前回にも同じ様な事があったのだろう。


「なるほど。魔王の娘の他にも同じ様にオークションにかけられる人達がいたので、まとめて連れて来たのも目撃者が少ない理由だと思います。最後の最後で出会った………えーと、名前は確か…ジルなんとか公爵。あのゴミはどうなりましたか?」


俺がブルクハルトさんにそう聞くと、彼は何故か凄く良い笑顔で、


「気が狂っていました!四肢の痛みで地べたを這いずりながら奇声を発し、時に発狂する姿を見た時は声を張り上げて喜びたいと思いましたよ。流石にすぐには喜べませんでしたが、あの男の所為で人生を踏みにじられた亜人の人達に会いに行って、彼らに報告した時の静かに涙を流す姿を見て、今まで彼らをどのような状況になっても手放さなかった事が報われた気がします」


そう言ってくれた。

そ、そこまで喜ぶとは思っていなかったが、ブルクハルトさんがここまで喜んでくれたら良かった。

俺がそう思っていると、


「あの男の周りには護衛がいるので、あそこまで出来るのはビステル様だけだと思っていましたよ」


そこまで察する事が出来るブルクハルトさんが凄いわ…。

俺はそう思いながら、


「それで、今は帝都の方は大丈夫なんですか?未だにオークション側の人達が魔王の娘を探していたり、騎士団が公爵を潰した犯人を捜しているとか」


今あり得る心配事を聞いてみると、ブルクハルトさんはその事について、


「それは大丈夫でしょう。手がかりがほぼ無い状態ですし、公爵はその爵位と今までの行動の所為で命を狙われる事が多いと判断されると思いますし、生き残った者達も恐怖で支離滅裂な事を言っているそうですよ」


俺が怪しまれる事は無い説明をしてくれた。

ブルクハルトさんの言葉を聞いた俺は、とりあえず俺が帝都で行動する事に問題ない事を再確認すると、次にブルクハルトさんにそこそこ良い農具が買える店を紹介してもらおうと話をし始めるが、


「それならば、私の方である程度の見定めをしておくのでお待ち頂けますかな?」


まさかのブルクハルトさんが紹介どころか、話を通して自らピックアップしてると言ってくれた。

ブルクハルトさんの言葉に甘え、俺は彼にある程度任せる事をお願いし、


「そうだ。改めて、ここで奴隷を引き取らせて頂きたいのですが、良いでしょうか?」


彼の本業である、奴隷売買の話を切り出した。


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