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陰惨な光景を眺めている訳にもいかず、俺とバルドゥは村を見回り始める。

どこへ行っても倒れている死体に、少し気が滅入っていくのを感じていると、俺はふとおかしい事に気が付く。

それは、俺個人が死体の山を見ても冷静でいるという事だ。

この死体の山が顔見知りだったら、俺も冷静ではいられないとは確実に言える。

だがそれでもこんな光景、見慣れた訳では無いのにここまで冷静に見れている自分に少し恐怖する。

俺がそう思っていると、


「ヴァルダ様、どうやら女と子供はいないようです」


バルドゥが俺にそう報告する。

今は目の前の事に集中しよう。

俺は気持ちを切り替えて、倒れている周りの死体を見ると、


「…確かに、男達の死体しかないな」


どの死体も男性だった。

小さい子供と女性の死体は1つも無い。

俺がそう思っていると、


「おそらく子供は餌をして、女は孕ませる為に連れて行ったんでしょう」


バルドゥが俺にそう教えてくれる。

そう言えば、ゴブリンなどの人型モンスターは他種族の女との性行為が可能だとかあったな…。

まさか、この世界でも適用されているとは…。


「この感じだと、どちらも救う事は出来ないですヴァルダ様。時間が経ちすぎています」


バルドゥが焼け焦げている家を見てそう言う。

…それでも、1人でも救う事が出来るなら助けにいかないといけない。


「…行くぞ。これ以上ここにいても意味は無い。洞窟を探すぞ」


俺がバルドゥにそう言うと、


「…足跡を探してすぐに行きましょう」


バルドゥが少し屈んで地面を見つめながら歩き出す。

方角は合っているはずだ。

俺はそれを確認しながらバルドゥの後ろを歩いていると、


「見つけました!行きます!」


バルドゥがゴブリン達の足跡を見つけて走り出す。

俺も遅れない様にバルドゥの後ろを走って追いかけ、森を走り抜ける!

そして遂に、洞窟を見つける事が出来た。

洞窟の周りを見ても、見張りのゴブリンはいない様に見える。

こういう時、気配感知のスキルが役立つんだけど、あいにく俺は習得していない。

ゲームの方では、マップにどんなモンスターが出現したか分かる程度だったから、必要なかったのだ。

だって姿を確認したら即倒しちゃったし…。

俺が1人で言い訳を述べていると、


「…見張りはいないようですが、罠が仕掛けられています。少しお待ち下さい」


バルドゥがそう言って先に入ってしまった。

待っていろと言われてしまったので、仕方なく洞窟の入り口の周りを見ると、何やら加工された石や木がある。

それを近づいて見てみると、石はおそらく形状的に鏃だと分かる。

木は槍なのだろう、先端が尖っている。

もしくは、このまま矢として使う可能性もある。

…ゴブリンは知性があるが、ここまで物を作ったりするのは知らなかった。

ちなみに、バルドゥが優秀なゴブリンなのは言うまでもない。

知性は勿論、理性と戦闘力も十分に育てたと思う。

まぁ、色々と大変なのだモンスター育成は。

俺がそう思っていると、


「ヴァルダ様、罠を解除してきました。どうぞ」


バルドゥが洞窟の入口から顔を出して手招きをしてくる。


「バルドゥ、ゴブリンが罠を作るのは普通の事なのか?」


俺が小さな声で質問をすると、


「簡単なモノなら出来ますが、先程解除した罠はどう考えてもただのゴブリンでは作れません。勿論私は、ヴァルダ様に育てられた唯一無二のゴブリンですから、そんな物すぐにでも解除してみせます」


バルドゥが俺にそう言ってくる。


「頼もしい限りだ。期待しているぞ」

「はッ」


俺とバルドゥがそう言い合いながら歩いていると、洞窟内の匂いが臭くなっていくのを感じる。

何かが腐った匂いと、排泄物の匂いだろうか。

目に染みてきそうな激臭になっていく。

死体を見ても吐き気を催さなかったのに、匂いで催してきてしまった…。

俺がそう思っていると、


「テキ!」


1匹のゴブリンが物陰から出てきて刃こぼれが凄い剣を構えた。

だが、


「ヴァルダ様に剣を向ける、愚行ですね!」


俺が攻撃する前にバルドゥが握っている曲刀でゴブリンの首を刎ねる。

すると、先程のゴブリンの声が聞こえたのか、こちらに向かってくる足音が聞こえてくる。

潜入とか、俺には出来ないしな。

結局こうなるよな。

俺がそう思って、本の中の世界(ワールドブック)を開くと、


「殲滅してきます!」


バルドゥが先に走って行ってしまう…。

これじゃあ、俺の出番がない気が…。

そう思っている内に、


「テキ!コロセ!」

「クッテヤル!」


ゴブリンの何とも言えない声が聞こえたのだが、それもすぐに何かが落ちる音と同時に静かになる。

バルドゥが負けるとは思えないし、単純に首が刎ねられたんだろう。

俺がそう思ってバルドゥを追いかけると、4匹のゴブリンの死体の中央で俺が装備させていた曲刀とは別の剣が握られている。


「この剣には毒が塗ってあります。鼻の奥がビリッとします」


バルドゥが俺に報告してくる。


「1つ持ち帰って調べてもらう事にしよう。もし知らない毒物であったなら、詳しく調べる必要がある」


俺がそう言うと、バルドゥは着ている装備の隙間に手を入れる。

そしてそこから布を取り出すと、剣のしっかりと包んで俺に渡してくる。


「悪いな。だが、わざわざ綺麗な布で包まなくても良かったんだぞ」


俺がそう言うと、バルドゥは首を振って、


「ヴァルダ様が触れる物は綺麗な物でないといけません。こんな薄汚い布などにヴァルダ様は触れてはいけません」


ゴブリン達が身に纏っている布を踏み付け、足元に転がっているゴブリンの首の無い体を蹴り飛ばして道を作り、


「道が出来ましたヴァルダ様。どうぞお通り下さい」


バルドゥはそう言って頭を垂れる。

…俺よりも紳士過ぎて、少し困ってしまう。

そうして先行しているバルドゥの後を付いて行くと、少し狭い通路が2つに分かれている。

すると、


「…ヴァルダ様、こちらから先に行ってもよろしいでしょうか?」


バルドゥが右の通路を指差してそう聞いてくる。

本当の気持ちを言うと、俺も戦闘がしたいから分かれたいのだが、バルドゥがそれを許してはくれないと判断して、


「構わない」


そう返事をした。

何故俺に忠義を尽くしてくれているバルドゥが許してくれないと思ったのか。

それはバルドゥの顔が怒りで染まっていたのが分かったからだ。


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