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ゾルゼ先生の怪しい動きに、俺は警戒心を最大まで引き上げる。

あそこまで俺達を馬鹿にしてきて、ああやって真っ向から叩き潰される光景を見て黙っていられるタイプでは無さそうだよな。

俺はそんな事を思いながら、生徒達の戦いに少し視線を移す。

さて、学院とゾルゼ先生がどうするか気にしないといけないな。

俺はそう思いつつ、


「リーゼロッテ先生、すみませんがここをお願いしても良いですか?」


まだF組を攻めきれていない皆を、真剣な表情で見つめているリーゼロッテ先生に声をかけると、彼女は俺の方を見ずに、


「わかりました」


そう一言だけ呟いた。

皆の事が心配なんだな。

俺はリーゼロッテ先生の反応にそう思い、特に気にする事無く移動を開始する。

今回はアンジェの指輪を使わず、普通に適当な場所を見つけて身を隠す程度で良いだろうと考えたのだ。

俺がゾルゼ先生を追って早歩きをして練習場の通路に入っていく。

すると、


「どうするのだゾルゼッ!?!?貴様の生徒が、あんなゴミ共に負けるなんてッッ!!」


怒号が通路の奥から聞こえてくる。

ここで聞くことも十分に出来そうだが、とりあえず近づいておこう。

俺は足音を出さないように忍び足で奥へと進み、曲がり角で止まる。


「ま、まさかあそこまでとは……。が、学院側で不正を擦り付ける事は出来ないでしょうか?」


諦めが悪いなと、俺はゾルゼ先生の言葉を聞きながら思う。

そんなゾルゼ先生の言葉を、


「………ゾルゼ先生、今回の失態の責任は誰が負うのでしょうかね?馬鹿な部下の話を聞き、それを信じてしまいその部下の行動に口を出さなかった上の者でしょうか?それとも、上の者に頭を垂れて知恵を借りなかった部下の方でしょうか?」


ほとんど無視をして、まるで責めているかのように話をし始める学院の上層部。

その言葉に続いて、


「あんな()がされていない者達が、この学院に残る事は皇帝陛下もお喜びにならないでしょう。皇帝陛下の機嫌で、今回の責任者は家族諸共斬首でしょう」


男性はそう言って、やや俯いているゾルゼ先生の周りを歩き始める。

…ブラックにしか見えない。

俺がそう思っていると、


「さ、最後のお願いがッッ!少しでもお時間を作って頂けるなら、その間にあんな者達を事故に遭わせましょうッ!!」


ゾルゼ先生が、変な言葉遣いでそう言った。

遂に実力行使で潰しに来ると聞いた。

…俺の邪魔を、そして何より給金の為にも邪魔者は排除するに限る。

そう思い曲がり角から飛び出そうとした瞬間、俺は冷静にある事を考えてしまった。

それは、今すぐ近くにいる2人を葬った所為で、クラス対抗戦の結果がうやむやになる可能性も十分にある。

ゾルゼ先生は上からしたら、もう捨てる人材故に問題にならないかもしれないが……。

もう1人の上層部らしき人が対抗戦の途中でいなくなったら、何かしらの問題になってうやむやになってしまうかもしれない可能性が少なからずある…。

どうする、どうすれば勝ちが決まったこの状況を維持したまま、奴らを消せる?

俺がそう考えていると、


「……では、リーゼロッテ先生とゾルゼ先生の最後の一騎打ち…というのはどうでしょうか?」


男性がそう切り出した。


「一騎打ち…でしょうか?」


ゾルゼ先生も流石に困惑した声を出す。

そんなゾルゼ先生に、


「様々なクラスのご家族が来ているこの場で、下手に結果を隠蔽する事は私含め学院の上層部に影響が出ます。…残念ながら貴方のクラスの生徒達は、パプを使用していた事で対抗戦辞退。しかし、パプを使用していたのはG組との戦いの寸前。故に、実力は十分にあった。そこまで育て上げたゾルゼ先生と、リーゼロッテ先生が戦うのならば、文句は無いかと…」


男性はそう言って、ゾルゼ先生の肩に手を置いて、


「まだ、()()()いましたよね。……期待していますよ」


そう言って振り返り、俺のいる方向とは反対の方向に歩いて行った。

ゾルゼ先生は男性が去って行っても、立ち尽くして身動き一つ取らない。

しかしこうなってしまったのなら、彼はもう後戻りは出来ないはずだ。

先に行って、リーゼロッテ先生に伝えないといけないな。

俺はそう思い、未だにただ立っているゾルゼ先生を放置して来た道を戻り始めた。

練習場の通路を抜けると、アーレス君達が残り数名のF組の生徒達を倒そうとしている光景が見えて、後数分で決着が着くのが分かった。

そうしてリーゼロッテ先生の元に着くと、流石に真剣な表情で皆を見ていた彼女も対抗戦の様子から大丈夫だと安堵したのか、比較的落ち着いた柔らかい表情で対抗戦を見ていた。


「ただいま戻りました。リーゼロッテ先生、少しお伝えしたい事が…」

「は、はい。何ですか?」


俺が声を掛けると、俺が近づいていたのが気づかなかったのか少し驚いた様子で返事をするリーゼロッテ先生。

俺はそんな彼女に、先程の事を細かく説明をする。

それを聞いた彼女は、


「分かりました」


力強く一言そう呟くと、特に自分の事を心配した様子も無く生徒達の方を見る。

俺がその様子を見ていると、ブノア君が最後の相手クラスの生徒を倒して鐘の音が鳴った。

…本当ならこれで終わるはずだったんだがな。

俺がそう思っていると、ゾルゼ先生と話していた男性が今まで戦いが行われていた練習場に入って来て、先程話していた事をそのまま大きな声で周りに説明をした。

F組の生徒達の様子がおかしかったのは観に来ていた家族も同じようで、説明をする男性の言葉にうんうんと頷いている姿などが見える。

すると、


「リーゼロッテ先生、そういう事なのでこれからゾルゼ先生と最後の決勝を行いたいと思っています。よろしいでしょうか?」


最初にゾルゼ先生と練習場の中央で話をしている男性と一緒にいた女性が、俺とリーゼロッテ先生の元にやって来てそう質問をしてきた。

その問いにリーゼロッテ先生は、


「勿論構いません」


また力強く返事をした。

それを聞いた女性は、何やら企んでそうな笑みを向けて去って行った。

俺はそんな女性の様子を見て、


「生徒達と同じように、サポートします」


俺がそう提案すると、


「ありがとうございますヴァルダ先生。しかし、大丈夫です。最後は、私の力だけで戦ってみせます」


リーゼロッテ先生は真っ直ぐ俺の事を見つめて言った。


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