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レナーテはふらふらと、不気味に魔法を恐れもせずに向かってくるF組の生徒達に恐怖している皆を見て、自分が彼らを先導しないといけないと感じる。
「ッ!サンダーランスッ!!」
レナーテは得意の雷魔法を使い、アーレスが作ったアースウォールの隙間からサンダーランスをF組の生徒達に向かって放った。
レナーテの放った魔法が1人の生徒に着弾すると、その生徒は体を小刻みに振動させて倒れる。
それを見たレナーテは、もう一度雷魔法を放とうとするが、
「アァァァァァァスゥゥゥゥバレッッッットォォォッ!!」
自身に向かって土魔法を放ってくる生徒がおり、それを避ける為に魔法を中断して即座に移動を開始する。
レナーテが移動をすると、一拍遅れて激しい衝撃と轟音が近くで発生するのを感じ、レナーテは耳を塞いだ状態で辺りを確認する。
轟音がした場所に視線を向けたレナーテは、その状況に戦慄する。
レナーテの視線の先には、練習場の土が割れ抉られている光景が見える。
練習場の土は、学院の講師が土魔法を使って固めてあるのを知っている。
それ故に今のF組の生徒のアースバレットの威力が、講師の魔法を打ち砕いた証明になってしまった。
しかし、その現実に臆して負ける訳にはいかないとレナーテは考え、少し恐怖心を宿しながらも前の見据える。
すると、そのF組の生徒達は仲間のアースバレットの威力を見て、自分達がどれだけ強力になったのか確認するために、魔法の準備を開始する。
それを見たG組の生徒達は、恐怖で身を引いてしまう。
レナーテも周りの仲間達と同様に身を引いてしまうが、どうすれば彼らに勝てるか考えて動きが鈍ってしまう。
それを見逃さなかったF組の生徒達は、一斉にレナーテやその周囲に向かって魔法を放ち始めた。
パプの効果で威力や速度が上がった魔法の所為で、レナーテが危ないと皆が思った時には遅く、F組の魔法はレナーテの周りや彼女自身に着弾した。
その光景にG組の皆は目を見開き驚きで何も出来なかった。
「ッ!…レナァァテェェッッ!!」
レナーテの友が悲鳴にも近い声でレナーテの名前を叫ぶ。
その声に皆は一斉にレナーテを護るために魔法で壁を作る。
G組の皆が作り出した壁により、レナーテに降り注いでいた魔法を食い止める事が出来たため、数人の生徒達が土煙を上げているレナーテの元まで走り寄っていくとそこには……。
「……その…大丈夫なの?」
少しポカンとした表情をして、尻餅を付いているレナーテがいた。
特に目立った外傷も無く、きめ細かい潤った肌に傷は一切ない。
反対に彼女の周りの地面は激しい衝撃に抉れており、F組の生徒達の魔法の威力を物語っていた。
少し遅れて、
「心配掛けてごめんね。少し驚いちゃって、声を掛けられても返事が出来なくて…」
レナーテが駆け寄って来た友にそう言い、ゆっくりと立ち上がって今もなお自分の事を護ってくれているクラスメイトの魔法で作られた壁に目を向ける。
そして、
「仮説なのだけれど、F組の人達の魔法は学院の先生以上の威力を誇っていると思うの。でも、それ以上にヴァルダ先生の魔法が上回っている。だから、練習場の地面はこんなに抉れてるけれど、私は無傷だと……。そうなると、今まで向こうの様子を気にして、一撃一撃の魔法の威力に怯えていたのも、馬鹿らしく感じるわ。現に今も、この壁は私達を護ってくれているわ」
そう言って、今もF組の生徒達の魔法を受け続けているアースウォールに触れる。
魔法が当たる度に衝撃が手に伝わってくるのが、壊れるどころかヒビすら入る気がしない。
レナーテがそう思っていると、
「皆無事か!?」
アーレスがレナーテ達の事を心配して声を掛けながら駆け寄って来る姿を見て、彼女は1つの提案が頭に浮かんだ。
「アーレス、ちょうど良かったわ」
近づいてくるアーレスにレナーテはそう言うと、彼はレナーテが怪我をしていない状態に安堵しつつも何が良かったのだろうと首を傾げてしまう。
「アーレス、これから私がここで囮をするから、皆の元に行って一斉に突撃する準備を整えて欲しいの。皆も見た通り、あんな威力の魔法を受けても怪我一つ無いこの状態、明らかにヴァルダ先生の魔法が効果が持続している証拠よ。でも、それもいつ切れるか分からない。今なら、F組の生徒達を一網打尽に出来るはず、お願い」
レナーテの言葉を聞いたアーレスは、
「分かった。ただ、囮は俺がやる。レナーテが皆の事を引っ張ってくれ」
そう言って土の壁の隙間から牽制の魔法を放つと、
「早くしないと、良い所全部持って行くからな!」
そう言って土の壁から飛び出した。
「…アーレスはたまに女子に無理させない様にするね」
「まぁ、そこが良いんだけどね」
「本人が気づいてないのが可哀想だよね…」
レナーテの友達がそう言い合っている間に、
「アーレスが代わりに引き受けてくれたので、私が行きます。皆はここで待っていて下さいね」
レナーテは心配で来てくれた友にそう声を掛けて、援護をしてくれているクラスメイトの元に走り出した。
レナーテさんがアースウォールの元から走り出して、クラスの皆の元に行く姿を確認した後、俺は彼女がこれから行う事を予想して安堵の息を吐く。
予想以上に向こうの攻撃が強くなっていたし、最初は不安だったがしっかりと魔法が皆を護っている光景を見て、少し安心した。
後は効果時間なのだが、それが少し心配な状況だった。
スキル取得で付与魔法などは少し時間を延長してあるが、あのままF組の生徒達の魔法の強さに動けずにいたら、危なかった可能性があった。
レナーテさんや、アーレス君が動いてくれて良かった。
俺がそう思っている内に、レナーテさん率いるG組生徒達が特攻を始めた。
パプの影響で冷静な判断が出来ていないF組の生徒達は、陣営を整える事も無く真っ向から勝負を仕掛けた。
…ギリギリではあるが、間に合いそうだな。
俺はクラス対抗戦決勝の結果が分かり安心をし、少し緊張を解す為に視線をキョロキョロと移す。
すると、偶々見てしまった視線の先に、何やら怪しい動きをしているゾルゼ先生が見えた。
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