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俺がG組の皆の所に行くと、


「さ、流石に辛い…」

「イテッ…」

「あと一試合、行けるかな…」


満身創痍のクラスの皆が、通路に座ってネガティブな言葉を呟いていた。


「…お疲れ様です皆。学校から支給されたこれ、飲んでくださいね」


流石のリーゼロッテ先生も、満身創痍の生徒達に元気に話し掛ける事は出来ず、優しい声でゆっくりと支給されたポーションを生徒に渡していく。

しっかりと鑑定をして、毒が入っていないのは確認をしたので安心だ。

しかし、前に店で見たあまり効果が薄いポーションを飲ませても、次の対抗戦までには回復が追い付かないだろう。

俺はそう思い、


「リーゼロッテ先生、対抗戦で支給されたポーションより良い物を使用しても大丈夫でしょうか?」


生徒達に寄り添って回復に徹している彼女にそう質問をする。

すると、


「いえ、そういった決まりはないですよ」


リーゼロッテ先生が俺の質問にそう答えてくれる。

俺はそれを聞いて、首から下げていた本の中の世界(ワールドブック)を持ち直して、倉庫からポーションを次々に取り出し始める。

怪我を治す普通のポーションに、魔力を回復するMPポーション。

状態異常にはなっていないと思うが、何かあったらいけないので状態異常を回復させるポーションの3つをセットで1人ずつ渡していく。

戦ってすぐのポーションを見て安心した様な顔をした生徒達も、俺の出した物を見て顔を顰めているのが分かる。

流石に嫌な顔をする理由も分かる故、特に言う事は無い。

が、出来れば飲み切って欲しい気持ちはある。

俺がそう思っていると、


「ヒヒッ…、まさかA組まで倒すなんて思っていませんでしたよぉ」


G組の皆が座っている通路の向こう側から、ゾルゼ先生がイヤらしい笑みを浮かべて登場した。

そういえば、リーゼロッテ先生がF組の生徒達に違法薬物パプの使用をしている可能性があると言っていたな。

ゾルゼ先生も初対面の時も嫌な感じの人だったが、今は危ない人の感じが明らかに出ている。

もし生徒達にパプを渡したのがゾルゼ先生だったら、次の対抗戦で何らかの妨害行為をしてくるかもしれない。

俺がそう思っていると、


「ゾルゼ先生、対抗戦相手の陣営に来るのは違反行為です。直ちに帰っていただけませんか?」


リーゼロッテ先生が、ゾルゼ先生を睨みつけながら鋭く言い放つ。

彼女がここまで冷たい声を出すという事に驚きつつゾルゼ先生の様子を見るが、彼はリーゼロッテ先生の言葉を無視して笑い続けている。

何がそんなに面白いのか聞いてみたい気持ちがあるが、わざわざ質問をする必要は無いだろう。

するとリーゼロッテ先生の言葉を聞いて笑い続けていたゾルゼ先生が、


「そんな反抗的な言葉を言っていられるのも、あと少しで出来なくなりますからねぇ。ヒヒヒッ、リーゼロッテ先生の大事な大事なゴミが、私の生徒達に無様に蹴散らされる光景をお届けしますからねぇ」


そう言って笑いながら去って行った。

まったく、今は生徒達の事に集中したいのに面倒な相手が来たものだ。

俺はそう思いつつ、


「さて、では次の対抗戦に向けて休憩兼作戦会議といきましょうか」


生徒達とリーゼロッテ先生に向かってそう言った。

それから数分程度の話し合いの後、不満そうな顔をした初老の男性が準備を始めてくれと言ってきて、俺は先程の休憩よりも早い事に疑問を感じつつも、生徒達の様子を見て大丈夫だと判断し抗議の声は出さない様にする。

変に抗議をして、出場停止になる事だけは避けたい。

リーゼロッテ先生や生徒の皆も同じ事を思ったのか、文句を言おうと口を少し開けた後言葉を飲み込んで、了承の言葉を口にした。

そうして次が最後の対抗戦になるのだが、色々と不安があり生徒達の事を見ながら彼らの事を心配してしまう。

対抗戦の開始を教えに来た男性の様子もおかしかったし、何かしらの準備をしておいた方が良いかもしれないな。

俺は生徒達の後ろ姿を見つつそう思い、


「リーゼロッテ先生、俺は少し学院側の様子を見てきても良いですか?」


俺の斜め前を歩いていたリーゼロッテ先生にそう聞くと、彼女は振り返って少し不安そうな表情をしたまま、


「分かりました。…そちらはお願いしてもよろしいでしょうか?」


そう聞いてきた。

俺はその言葉を聞いて、


「大丈夫です。何もなければすぐに戻るつもりですので、あまり生徒の皆に不安そうな顔を見せたら駄目ですよ」


リーゼロッテ先生に軽くそう言い、生徒達とは反対方向に向かって歩き始める。

さて、まずは学院の上層部の方に侵入してみるか。

その後はゾルゼ先生が何か悪だくみをしていないか見に行こう。

俺はそう考えつつ、毎回同じのアンジェの指輪を首から下げて装備をする。

相変わらず、この装備は優秀だな。

俺はアンジェの指輪の効果を確認してそう思いつつ、練習場を見渡せるくらいの高さまで階段を昇っていく。

すると、明らかに学院で身分が高そうな男性と女性を発見した。

そしてその近くには、ゾルゼ先生の姿も見える。

今は俺の姿が見えていない故に、気配をしっかりと消せていれば見つかる事はないだろうと考え、俺はその3人が固まって話している内容に耳を傾ける。


「わかっていますよねゾルゼ先生?まさかのA組までもあんな情けない負け方をしたのです。最後の砦が貴方達F組の子供達です」

「分かっていますよ校長先生ぇ…。ヒヒッ、うちの生徒達はこの短期間で飛躍的に成長したのですから」

「しかし、あのゴミ共の処分はどうしましょうか?A組の未熟さがあるとはいえ、勝ってしまう程の実力を有しているとなると、話は変わっていきますよ」


…どうやら、妨害工作の相談よりも自分達のこれからの対応の事を気にしている様な気がする。


「ここでゾルゼ先生のクラスが勝てば旧校舎は取り壊し、あのクラスのゴミは馬小屋などで十分でしょう。今までしっかりと身分相応の環境で生活をし、実力を伸ばす事が出来ていましたが…」

「なるほど。環境を更に劣悪な場所にしてしまえば、あんなモノ達はすぐに耐えきれなくなり勝手に堕ちていくということですか」


身分が高そうな2人の男女が名案の様に表情が晴れる姿を見ていると、対抗戦の合図である鐘の音が聞こえた……。


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