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リーゼロッテ先生の状況を知った生徒達が旧校舎へと登校してきた。

先に来ていた生徒も少しいて、緊張した面持ちで各々の席に座って大人しくしている。

昨日は休めていると思うが、流石に本番当日に緊張するのは仕方がないよな。

俺だって、緊張というか少し大丈夫かと心配してしまっている。

実力はすでに大幅に上がってはいるが、この緊張した表情を見てしまうと戦っている最中にミスをしてしまいそうだ。

俺がそう思っていると、俺の後ろにいたブノア君が仲が良い友達の元に行き声を掛ける。

俺はその様子を見ていると、


「おはようございますヴァルダ先生」

「あ、あぁ。おはようございますベッティーナさん」


後ろからやって来たベッティーナさんが、俺に挨拶をして教室に入ってきた。

すると、


「先生あれ、見ました?」


ベッティーナさんが、少し躊躇いがちにそう聞いてくるのを聞いて、俺は彼女も見たんだなと察する。


「はい、最初の一幕を見ました。……まだやっていますか?」


俺が詳細を説明せずに質問をすると、


「はい、やってました」


ベッティーナさんは、苦笑しながらそう答えて自分の席に移動する。

やがて、少しずつ生徒達が教室に入ってきて全員が揃った。

のだが、これから練習場での対抗戦が始まるというのに、リーゼロッテ先生が来ない…。

まさか、まだご両親と言い合いをしているのだろうか?

俺がそう思った矢先、旧校舎の廊下をパタパタ走る音が聞こえてくる。

生徒は全員いるし、リーゼロッテ先生だろうと思っていると、


パタパタパタパタカッ……ドテッ!

……パタパタ。


廊下からそんな音が聞こえてきた。

絶対に廊下で転んだなと思っていると、


「すみません!遅くなりましたぁ!」


リーゼロッテ先生が、謝罪をしながら教室に入ってきた。

俺は教室に入ってきたリーゼロッテ先生の表情を見て、少し違和感を感じた。

いつもなら、何事も無い様な表情で入ってくる先生の表情が、少し焦っているというか慌てている様な感じに見えた。


「おはようございますリーゼロッテ先生。…何かありましたか?」


俺は朝の挨拶を普通にし、ご両親の事については触れずにそう質問をする。

すると、


「クラス対抗戦の初戦の相手が、B組に決定しました」


リーゼロッテ先生が、不安そうな顔でそう言った。

そういえば、どうやって対戦クラスを決定するのか聞いていなかったな。

俺がそう思っていると、


「そんな!クラス対抗戦はクラスの実力を考えて、基本的には近いクラスで戦う事が当たり前だったじゃないですか!」


レナーテさんが、勢いよく立ってリーゼロッテ先生にそう言う。

レナーテさんの言葉を聞いたリーゼロッテ先生は少し考える様な表情をして、


「初戦の相手はB組、A組は準決勝まで戦う事が無いですから、おそらく初戦でG組を落とすつもりなのでしょう」


そう推測を答えた。

なるほど、下手に勝ってしまわれるのも魔法学院の上の立場は許さないって事か。

色々と、裏でやりとりがあったのだろう。

となると、初戦で勝ったとしても上からの工作や邪魔が入りそうだな。

俺がそう考えていると、生徒達の表情がどんどん暗くなっていくのが見える。

俺はその表情を見て、クラスの士気が下がると危惧し、


「はいはいそんな暗い顔しないでください!大丈夫、このクラスは初めて会った時より格段と成長しています。あとは皆さんが、緊張のし過ぎで体を硬くしないかが問題ですよ!A組だろうがB組だろうが、問題無いと俺が保証します。今まで行ってきた全力を、相手にぶつけるだけですからね!」


鼓舞する言葉を、生徒達に投げる。

だが流石に俺の言葉だけでは、完全に緊張を解してあげる事は出来ないな。

俺の言葉で少し暗い表情からやる気が出てきた生徒達の顔を見て、俺はもう一手何か彼らの緊張を解す事は無いかと思い、


「そうだリーゼロッテ先生、朝ご両親とお話している姿を見ましたよ。クラス対抗戦が終わりましたら、短い期間でしたけど同僚として、挨拶に行っても良いでしょうか?」


リーゼロッテ先生にそう声を掛けた。

すると、


「なッ!やっぱり見られてましたか!あ、あれはうちの父と母が勝手に観戦に来ただけで、私が招待した訳では無いんですよ!」


俺の思惑通り、リーゼロッテ先生は僅かに頬を染めて弁明を始める。

それを聞いた俺の後に来た生徒達は先程見た光景を思い出し、今の慌てて弁明をしているリーゼロッテ先生を見て少し気分が晴れた表情をしている。

それとは反対にリーゼロッテ先生の様子が分からない感じの生徒達は、俺よりも先に校舎に来ていた生徒達だろう。

どういう事かと生徒同士で話しが始まり、状況を知っていた生徒達の言葉でクラス全員が今日、リーゼロッテ先生のご両親がいる事を知った様子だ。

すると、


「いつもお世話になっているリーゼロッテ先生とご両親に、恥ずべき姿を見せる訳にはいきませんよね」


レナーテさんがそう言う。

それに続いて、


「そうだね。僕達がいつもお世話になっている先生に感謝の気持ちを伝えるには、言葉だけじゃ足りないよ。先生には、クラス対抗戦優勝を送らないとね」


金髪イケメンのアーレスが、爽やかな笑顔でそう言った。

それを聞いたクラスの皆は、アーレスの言葉にやる気の満ちた表情をし始める。

良かった、緊張は残っている様だが前向きに戦う事を意識し始めた様だ。

そう思っていると、遠くから鐘の音が聞こえる。

俺が鐘の音が聞こえて教室の窓から外を見ると、


「生徒及び教師全員集合の合図ですよ。さぁ、皆さん行きましょう


リーゼロッテ先生が俺にそう教えてくれて、生徒達に出発の合図をした。

それを聞いたG組の皆は、それぞれ大きな声で返事をして教室を出始める。

俺とリーゼロッテ先生も生徒達に続き、教室を出て魔法学院練習場へと進み始める。

あ、何か俺が戦う訳じゃないのに緊張して来た。

俺はそんな事を思いながら、生徒達の後に続いて練習場へ入っていく。


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