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レベルデン王国魔法学院G組の生徒達に魔法を教えて12日が経ち、生徒達の技術とパウルの逃走能力が上がった。

俺も生徒達に指示を出したり、どのような攻撃手段をするかの実戦に対する指導は出来た。

魔法技術においては、リーゼロッテ先生がより熱心に授業に励んで生徒達に理解を深めてもらったお陰で、最初に出会った時よりも格段に成長してきている。

徐々にだった所為か生徒達はあまり実感できていない様子だったが、クラス対抗戦に限りなく近づけた模擬試合なども試し、生徒同士が戦う事で相手がどれだけ成長し、それに対抗できる自分の成長も確認する事が出来た。

クラス対抗戦は明後日、明日は大事を取って生徒達には休みを取る様に言っておいた。

軽い運動程度なら良いが、クラス一同で運動とかになると本気で動いてしまいそうだ。

という判断の元、リーゼロッテ先生と相談して生徒達にはなるべく体を休める様に伝えた。

まぁ、あの子達が私生活での俺の指示をしっかり聞こうと思っていないだろうが…。

そこは、やはり教師であるリーゼロッテ先生の指示を聞く方がよくある。

舐められている訳では無いだろうが、何とも言えない気持ちになってしまうな。

そう思いつつ、俺は夜になって帰っていく生徒達の後姿を見ながら見送り、誰もいなくなった後に塔に帰ってきた。

そう言えば、少し前に帰って来た時に闇オークション会場から連れてきた子供達の名前が決まったとルミルフル本人から教えてもらい、子供達が改めて挨拶兼自己紹介をしに来たな。

確か、2人のメアリーの凄く元気な方はサール・メアリー。

もう1人の元気だけど、冷静というか少し落ち着いているメアリーはソル・メアリー。

名無しの少女は、ヴィアンシエル。

やはり名前があると、呼びやすいな。

俺はそう思いながら、少し怯えていた様子が治まっていたヴィアンシエルの事を思い出す。

最初は言葉を話すだけでもビクビクしていたが、最近会った時は怯えてはいたが最初に比べると全然マシになっていたし、しっかりと話しが出来るほどだった。

ルミルフルさんにあの子達を託して正解だったな。

俺がそう思っていると、扉がノックされる音が聞こえる。


「失礼しますヴァルダ様、今よろしいでしょうか?」


扉の向こう側からシェーファの声が聞こえてくる。


「あぁ。構わないぞ」


俺が扉の向こう側にいるシェーファにそう返事をすると、扉が開いてシェーファが部屋へと入って来る。

足音をほとんどさせずに俺の元までやって来ると、


「お時間をいただき、ありがとうございます。ご報告したい事が……」


いつもより更に畏まった様子でそう言ってくる。

その言葉を聞いて、彼女が俺の元にやって来て報告したい事があるという事は、相当重要な事なのだろうと判断し、作業をしていた手を止めてしっかりとシェーファの事を見ると、


「ヴァルダ様、パウルと共に過ごしているフィリアが最近パウルがいないと寂しがっていましたよ」


そう言って、少し悲しそうな表情をする。

シェーファのそんな表情と言葉に俺は、


「…フィリアには申し訳ないことをしたな。外の世界で少しパウルに手伝って貰っていたのだが、パウルと一緒に生活しているフィリアの事までは考えていなかった。…今からでも会いに行こうと思ったが、折角パウルが帰ってきて夜を共に過ごすんだ。また明日にでも会いに行って謝罪をしよう」


謝罪の気持ちを心に宿しながら、シェーファの言葉にそう言って少し考える。

こう思うと、パウルとフィリアって普段どんな会話をしているんだ?

パウルは基本的に鳴き声というか、唸り声を出すのが基本だ。

声の出し方でどんな感情を表現しているかは理解しているつもりだが、それで会話をしているかと言われたら難しいと感じる。

それとも、同じグール同士で意思の疎通は出来るのだろうか?

……気になってしまうと、パウルとフィリアがどんな会話の仕方をしているのか色々と想像してしまうが、とりあえず今は考えないでおこう。

俺がそう思っていると、


「よろしくお願いいたしますヴァルダ様」


シェーファがそう言って席を外そうとする。

俺はそのシェーファの後ろ姿を見て、


「待てシェーファ」


引き留めてしまう。

俺が声を掛けると、シェーファは立ち止まって振り返る。

俺はその様子を見て、まだ自我を持った彼女と接してから日は経っていないが、それでも彼女がこれだけ静かなのは珍しい。

いつもなら、もう少し元気であるはずの彼女の様子に違和感を覚える。


「どうしましたかヴァルダ様?」


振り返って首を傾げ、俺が何故引き留めたのか聞いてくるシェーファ。

俺はそんなシェーファに、


「いや、勘違いなら言って欲しいのだが……。シェーファ、何か悩み事でもあるのか?いつものシェーファなら、もう少し部屋に留まって何か話をしようとする。だが、今のシェーファはすぐに部屋を出ようと感じたのだ。…何か気に障る事をしてしまっただろうか?」


そう聞いて、彼女の言葉を待つ。

少しシェーファは迷った表情をする。

少しして、


「ヴァルダ様、何故私は一緒に外に連れていって下さらないのですか?それがどうしても気になってしまって…」


俺にそう聞いてきた。

俺はその言葉を聞いて、


「シェーファは外の世界で目立つからな。外の世界はシェーファの様な綺麗で数が少ない種族の人は、普通に目立ってしまうからな。街中でシェーファと一緒に歩くのには、少し時間が必要だ。だが、一緒に歩いて大丈夫だと判断できた時は、一緒に外の世界を歩いてくれるか?」


シェーファに今感じている不安と、これからの約束を言葉にする。

すると、


「…お約束ですよね?」


シェーファがしおらしくそう聞いてくる。

俺はそんなシェーファに、


「あぁ。必ず約束しよう」


しっかりと約束の言葉を言い、その言葉を聞いたシェーファは安心した様な表情をした。

そして、


「ありがとうございます」


シェーファは嬉しそうに笑顔でお礼を言ってくれた。

シェーファと一緒に歩ける街にも、行く事が目標になったな。


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