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ユニコーンのノエルと子供達3人が触れあって数分後、ノエルは満足した様子で森の奥へと去って行った。
いつもなら変に絡まれるセシリアとシルは、あまりにもサッパリとしたノエルの様子に驚きながらもその原因であるヴィアンの事を見る。
セシリアとシルに見られているヴィアンは、特に気にした様子は無くルミルフルの隣の位置に戻ってサールとソルの様子を見ている。
ルミルフルはセシリアとシルがヴィアンの事を見ている事に気がついたが、どうしてヴィアンを見ているのだろうかと考えて何も言わない。
そうして大人3人が何も言わずに、子供3人が話している状態が少し続いた後、
「ンン゛ッ!では、次に参りましょう」
セシリアは咳払いをして周りの意識を自分に集中させると、スタスタと歩き始めてしまう。
シルはそんなセシリアに待ってよ~と言いながらふわふわと付いて行き、ルミルフル達もその後ろを慌てて付いて行く。
ユニコーンのノエルとの出会いで、ヴィアンがあそこまでユニコーンに慕われている理由をルミルフルは考える。
清らかな乙女と言われているが、それが体的になのか心的なモノなのかは理解していなかった。
ルミルフルはそう思いながら歩き続け、隣を歩いているヴィアンをチラッと盗み見る。
この中では幼いサールとソルを差し置いて、ヴィアンに甘えると言うのはどうしてなのだろう?
考えがまとまらない状態で歩き続けていると、
「ガルアァッ!」
モンスターの威嚇の甲高い鳴き声が聞こえて、ルミルフルは今まで考えていた事を一旦忘れて警戒態勢を取る。
すると、
「ここより先は、マンティコアのガルーガの縄張りです。私やシルは特に何も言われませんが、まだここに来て浅いルミルフルさん達は仲間だと認識されていないようですので、ここから先は侵入禁止です」
セシリアがルミルフル達にそう説明をする。
それを聞いたサールとソルは、少し残念そうにしながらもはーいと返事をしてせめてマンティコアの姿だけでも見ようとする。
ルミルフルは気配でどの方向にいるのか把握しているが、姿までは視認していない。
ヴィアンは単純に威嚇してきたモンスターと近づく事が無い故に、安心して一息吐いている。
しかし、
「……姿だけでも見て貰いましょうか。ガルーガ、ヴァルダ様がお招きしたお客様です。挨拶は程度に姿だけでも見せなければ、ヴァルダ様のお顔に泥を塗る行為ですよ」
セシリアの気を遣った行動に、ヴィアンは小さく短い悲鳴を出した。
すると、森に生えている茂みからノソノソと進んでくるモンスターの姿が見えてくる。
ルミルフルはその姿を見て、自分が前に遭遇したマンティコアと同じ姿をしていると思った。
顔は人と同じで体は血の色の様に赤黒く、人そっくりの顔の瞳は空の様に青い。
体は獣の様な作りをしているが、背中にはコウモリの様な羽が生えている。
緩やかに動く尾の先端は丸くなっており、そこから細い針が生えている。
その針が毒を有しており、飛ばす事が可能。
獰猛で食欲が旺盛。
ルミルフルは以前知ったマンティコアの状態を思い出しつつ、目の前に現れたマンティコアを見る。
身体の特徴を見るに、雄のマンティコアね。
雌のマンティコアは、体は鱗で覆われていて目に見ても分かる。
尾の方も、少し雌雄で別の毒針の生え方をしている。
この個体は、その要素を見ても雄で間違いないわ。
ルミルフルがそう確信していると、
「ガルーガ、こちらはお客様のルミルフルさん。隣がヴィアンさん。貴方の事を見つめているのがサールさんとソルさんです」
セシリアがマンティコアのガルーガにルミルフルの紹介をする。
それを聞いたガルーガは瞳を一度細めた後、特に何も言わずに踵を返して森の奥へと行ってしまった。
ルミルフルは下手に声を出して刺激をしない様にしていたが、ガルーガが去った後、
「挨拶しなかったですけど、大丈夫だったでしょうか?」
セシリアにそう聞く。
その言葉を聞いたセシリアは、
「いえ、とりあえずは軽い挨拶で十分です。それよりも、ガルーガが不躾で申し訳ありません」
特に気にした様子も無く、むしろ自分達の仲間に非があると言って謝罪をする。
ルミルフルはセシリアに気にしていないと伝え、ヴィアン達が大丈夫か一度確認する。
特に問題無いとヴィアン達を見て安心していると、
「それじゃあセシリアちゃん~。私はそろそろ行くね~」
シルはのんびりとそう言うと、サールとソルの元に行き、
「サーちゃん、ソーちゃん。今日はありがとうね~。また今度、一緒に島を歩こうね~」
そう言ってサールとソルの頭を撫でると、
「また今度!」
「うん!」
2人は嬉しそうに返事をする。
それを確認したシルは、今度はルミルフルとヴィアンの元に移動すると、
「また今度、会いましょうね~。ヴィーちゃん、今度会った時はたくさんお話しましょうね~」
ルミルフルにそう挨拶をし、ヴィアンに次に会った時の約束をしようと微笑みながらヴィアンを見る。
「はい。今日はサールとソルの我儘に付き合ってくれてありがとう。また会いましょう」
「も、もっとお話出来る様に、頑張ります」
ルミルフルはシルに感謝の言葉を言い、ヴィアンは次に会うまでに話せる様にすると決意の言葉をシルに言う。
それを聞いたシルは嬉しそうに微笑みながら風を起こし、先程までとは全然違う速さのスピードで目の前から消えていった。
それを見送った後、
「では、シルも行ってしまったので今日はここまでにしておきましょう。また時間がありましたら、再度案内をさせてもらいます」
セシリアがそう言ってルミルフル達の顔を見る。
「分かりました。今日はわざわざありがとうございます。ほら、サールとソル、ヴィアンもセシリアさんにしっかりお礼をしなさい」
ルミルフルはセシリアの言葉を聞いてそう言い、
「ありがとう!」
「ありがとうございます!」
「あ、ありがとうございました。ま、またお願い…します」
サール、ソル、ヴィアンはそれぞれの言葉でセシリアに感謝の言葉を言う。
それを聞いたセシリアは4人の言葉を聞き、
「はい。では、塔へ戻りましょう」
塔へ帰ろうと、歩き始めた。
その後ろを、楽しかった感想を言いながらルミルフル達は付いて行く。
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