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109頁

少し経ち、シェーファが落ち着いたのを見計らってセシリアは、


「やっと落ち着きましたか?」


シェーファにそう声を掛ける。


「え、えぇ。ごめんなさいね。少し取り乱したわ」


シェーファの言葉を聞いたルミルフル、セシリア、シルは同時に、


『少し??』


と考えてしまったが、ここでまたツッコミを入れて取り乱されるのを防ぐために何も言わなかった。

すると、


「ね~シェーちゃん?いつも塔で過ごしている貴女が、今日は何で森林島に来てるの?」


シルが話を切り替える。

そのシルの言葉を聞いたシェーファは更に落ち着くために深呼吸をしながら、


「深い理由はないのだけれど、たまに無性に森へ行き木々の声を聞きたい事があるのよ。そういう時に、ここへ来るわ」


シルの問いに、シェーファはそう答える。

それを聞いたセシリアが、


「種族的な習慣という事でしょうか。私の様に家事をしていないと落ち着けないのと似ている気がします」


考察を述べる。

すると、


「エルフは木々に触れるだけで森の状況を把握するって言われているし、そういう事をしたくなる事があるのかもね」


ルミルフルがセシリアの言葉に更に付け足す。

ルミルフルの言葉を聞いたサールとソルは、互いに顔を合わせて、


「サールとソルと一緒!」

「触ると分かる!」


そう言って仲良く2人で触れ合っていたが、その様子を見ていたヴィアンを見ると、


「ヴィアンも~!」

「一緒!」

「え…??わッ!」


サールとソルはヴィアンにも触れ、2人は笑顔でヴィアンをサワサワ触る。

そんな2人にヴィアンはどうしようかをアワアワしていると、


「はぁ~……子供、良いわ~」


少し怪しげな目つきと頬の赤みをさせながらシェーファが3人を見ている。

そんなシェーファの状態に、セシリアはマズいと察し、


「それではシェーファはこのまま森で過ごして下さい。同じ症状と言うのはおかしいですが、同じ感覚を知っている者からしたら満たされるまでしたい事をしておいた方が良いと思います」


話を切り替え、自分達はシェーファの邪魔をしないと伝える。

それを聞いたシェーファは、セシリアの気遣いに感謝の言葉を口にする。

シェーファはセシリア達に軽い挨拶をしてから、再び森林島に生えている木々に触れて目を閉じた。

そんな様子を静かに見ていたセシリアは手で合図を送った後に歩き出し、ルミルフルやシル、子供達はそれに付いて行く。

シェーファの元から離れたセシリア一行は、次なる相手を求めて森を散策する。

すると、こちらに近づいてくる白い影が見えてセシリアは立ち止まる。

少ししてゆっくりと歩いて近づいてくる者が誰か理解すると、


「…ハァ……」

「そういえば、ここに住んでるんだよね~」


セシリアとシルがそんな声を出す。

それを聞いたルミルフルは、何故そんな面倒そうというか嫌な者にあった様な声を出すのだろうかと首を傾げる。


「しろーい!」

「角!」


すると、サールとソルは嬉しそうな顔をして近づいてきた者を歓迎する。

ルミルフルはその姿を見て、少しだけセシリア達が声を出した理由を理解した。


「ブブルゥッ!」


その者とは、ユニコーンである。

女性として、この者が清らかな乙女にしか近づかないのは知っている。

しかしその美しく優雅な姿とは反対にユニコーンの性格は、荒々しく獰猛である。

清らかな乙女には身を預け、乙女の膝に眠ると言われている。

だが、近寄った者が清らかな乙女では無かった場合や、男の場合その立派な角で串刺しにすると言われている。

ルミルフルはそのユニコーンを見て、はしゃいでいるサールとソルを見て、


『サールとソルは大丈夫よね?さ、流石に彼女達が経験しているとは思えないし……。ヴィアンは元奴隷であるけど、やはり危険な可能性もあるかしら?私は大丈夫だから、可能性が0じゃないヴィアンは私の後ろに避難させておいた方が良いかも』


色々と考え、行動をする。

自分の隣を歩いていたヴィアンの肩をそっと掴んで、自分の体をヴィアンの前に移動させる。

ヴィアンはルミルフルの行動に素直に従い、ルミルフルの背中にぴったりとくっ付く。

すると、


「……何の用ですかノエル?」


セシリアがユニコーンに問う。

声を掛けられたユニコーンは囁く様に鳴き声を出すと、近づいてくるサールとソルを見て、視線を移してルミルフルとその後ろにいるヴィアンを見る。

シルはその様子を見て、


「ノエル~?この人達はまだここに来たばかりの人達らしいから、いつもの貴方の様子で近づかれたら困るんだよ~」


ユニコーンにそんな注意をする。

ノエルはシルの言葉を聞いても、ルミルフルの事をジッと見つめる。

見つめられているルミルフルは、なぜ自分を見るのだろうと疑問に思いながらも、下手に刺激しない様に身動きをしない様にする。

すると、


「ブルルゥッ」


ノエルがゆっくりとルミルフルに近づく。

近づかれているルミルフルは、ノエルの額に生えている角を見て緊張しながら、


「は、はじめまして。私はルミルフル。この子がヴィアンシエルって……」


自己紹介をした瞬間、ノエルはルミルフルの脇から顔を出していたヴィアンに頭を垂れた。

それを見ていたその場にいた大人全員が、ノエルの動きに息を飲んだ。

セシリアとシルは、自分達の主であるヴァルダ以外に頭を下げるノエルに驚愕し、ルミルフルはヴィアンに頭を下げているユニコーンに単純に驚いている。

すると、


「な、何ですか?」


頭を下げたまま、動こうとしないユニコーンの姿に少し怯えつつもヴィアンが声を出す。

すると、


「ヒィーン……」


甘える様な、儚い声で鳴くノエル。

それを聞いたヴィアンは、少し怯えながらもルミルフルの後ろから前へ進み、ノエルに近づいて行く。

ルミルフルはノエルの様子を見て、ヴィアンに危害を加えそうにないと判断し事の成り行きを見守る。

そしてヴィアンとノエルの距離が縮まると、


「あ……」


立ち尽くしているヴィアンに、ノエルから近寄り体を擦り付ける様に動く。

それを見たサールとソルは、自分達もノエルにゆっくりと近づきノエルの体に触れる。

特にノエルが暴れる様子を見せない様子を見て、大人達は安心してその様子を眺めていた。


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