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とりあえず目標は出来た。
過去の俺の様に理不尽に苦しんでいる奴隷や人達を救う。
だが待ってくれ…。
奴隷を救うとか言ったが、肝心のお金の事情とか問題が山積みだ。
それに、皆も許してくれるか分からない。
俺がそう思っていると、
「どうしましたビステルさん?」
村長が俺に声を掛けてくる。
どうやら、黙って考え事をしていたから心配しているのだろう。
「いえ、何でもありません。お話、ありがとうございました」
俺はそう言って頭を少し下げた後、椅子から立ち上がり村長の家を後にしようとする。
すると、
「お、お待ちください!」
後ろから村長に声を掛けられた。
村長に声を掛けられた俺は、その場に立ち止まって振り返る。
あ、そういえば情報提供のお返しをしないといけない!
でもお金は無いし、それよりもこの村ではあまりお金は使って無いと言っていたな。
なら、物の方が良いのか?
俺がそう思っていると、
「今はまだ日が傾く前でございますが、傾いてからが早いのです。今日は村に泊まり、朝から出発された方が良いと思います」
村長がそう教えてくれて、更には村に泊めてくれると言ってくれる。
…まだ地形が把握してない状態で夜道を歩くのは危険だし、まだお礼も出来ていない。
今日はお言葉に甘えよう。
「そうですか。それならお言葉に甘えても良いですか?」
俺がそう言うと、村長はどうぞどうぞと言って今は空き家となっている建物に案内してくれた。
食事を出すとも言われたのだが、村を見る限りそこまでしてもらう訳にはいかないので、自分の持っている物を食べると言って丁重に断った。
空を見るとまだ明るい。
ふむ、ここで変な事をしないように気をつけながら少し村を見て回るか。
俺はそう思って歩き出し、村の様子を観察する。
家、井戸、畑、人。
それだけくらいしか見る物が無かった。
特に気になる物は無かったな。
俺はそう思いながら歩いていると、先程通った村の入り口まで来てしまっていた様だ。
すると、
「あ、どうでした?」
先程、村長の家まで案内してくれた青年…名前が思い出せない…。
「とても有意義な話を聞きました。案内をして下さってありがとうございます。改めて、私はヴァルダ・ビステルと言います」
俺が自然な感じで自己紹介をする。
これで彼の名前も知る事が出来る。
俺がそう思っていると、
「あ、こちらこそ…。俺はアシルって言います」
アシルさんが俺に頭を下げて自己紹介をしてくれる。
よし、これで名前は聞けた。
「今日はこちらで一泊させてもらう事になりましたので、よろしくお願いしますアシルさん。それと…」
俺が言葉を濁した状態でアシルさんの隣にいる男性の事を見る。
すると、俺の視線に気づいた男性がチラッと俺の事を見た後、
「ダミアンだ」
そう言う。
どうやら、自己紹介の様だ。
俺がそう思っていると、
「なぁなぁビステルさん。ビステルさんはどんな所から来たんだ?」
アシルさんが俺にそんな質問をしてくる。
「そうですね。人も数人しかいない所からですかね」
俺は「UFO」のサービス終了日を思い出して、アシルさんの質問に答える。
嘘は言っていない。
すると、
「数人って、それでどうやって生活してるんだ?」
アシルさんが難しそうな顔をして考えてしまう。
あまり詮索されると困るな。
俺も嘘とか隠し事とか上手い方じゃないし。
俺はそう思い、
「そう言えば、この村の周りには森の他に何かあったりするんですか?」
アシルさんの質問をスルーして、今だに難しい顔をしているアシルさんに質問をする。
この村に入る前に見た男女3人組を村の中で見ていない事が気になって、俺はアシルさんにそう質問をする。
すると、
「あ、あぁ。この村のもう少し奥に行くともう1つ村があるんだ。それを更に北西に歩くと洞窟があるくらいだ。
アシルさんが俺の質問に答えてくれる。
なるほど、つまりあの3人組はその村か洞窟に向かったのか。
俺がそう思っていると、
「そう言えば、ここ最近村の周りに足跡が増えたな」
ダミアンさんが思い出したようにそう言う。
「あぁ、俺もそれは気になってたんだ。子供達は外に出ない様にしてあるし、大人だって決まった道しか歩かないんだろ?」
ダミアンさんの言葉を聞いたアシルさんが、ダミアンさんにそう問いかける。
「そうだ、それに確認された足跡はデカいのが1つと、子供位の大きさが何個もらしい」
ダミアンさんがそう答えると、
「おそらくゴブリンが近くまで来ているのだろう。警戒は怠らない様にしないといけない。あいつ等は1匹1匹は弱くても、数を揃われたら脅威になる」
更にそう続けて黙る。
どうやら、無駄話をし過ぎてしまった様だ。
俺がそう思っていると、
「…俺はゴブリンを見た事ないんだけど、ビステルさんは見た事ありますか?」
アシルさんが俺にそう聞いてきた。
「はい。緑色の肌をしていて、知能が少しだけではあります。大きさは子供と同じくらいで、統率力が高いですね。ダミアンさんのおっしゃった通り、数で来られたら苦労しますね」
俺がそう答えると、アシルさんが何故か感心した様子だ。
「ただの迷子ってわけでもない無いようだな」
ダミアンさんがボソッと言葉を発する。
…酷いな。
俺はそう思いながら、この世界にもゴブリンなどが生息している事に考える。
野生のゴブリンがどれくらい強いのか、それを確認したい気持ちがある。
だが、1人で行くのも危険だ。
もし俺が想像していたよりも強かったら、俺は死んでゴブリン達のエサになるだろう。
とりあえず、この村を出るときはエルヴァンを連れて歩いた方が良いかもしれない。
そうして村で少しではあるが情報収集出来た俺は、その日は早い内に案内された空き家に籠って装備などの確認をする。
回復薬などもすぐに使えるように準備をしておき、全ての準備が出来てから俺は木材で作ってあるベッドに横たわる。
ベッドと言っても、ふかふかではないから明日起きた時に体が大変な事になっていそうだと思いながら、俺は眠りについた。
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