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セシリアと別れて食堂に来たルミルフル一行は、広い食堂のどこに座ろうかと考えてあまり人がいない隅の方に行くと、
「…どうも~」
「…こんにちは」
一瞬ルミルフル達が近づいてきた音に敏感に反応し、首から変な音が出てしまうんじゃないかという速度で首を回してルミルフル達の事を見たクラーラとイルゼは、近づいてきた人達がダイエットをサボっている自分達を捕まえに来たエリーゼ達では無いと安心すると、笑顔で挨拶をした。
2人の笑顔が少し引き攣っているのが見えたルミルフルは、疑問に思いながらも挨拶を返すと、
「こんにちあ~!」
「こんにちは~」
「こ、こん…にちは…」
ルミルフルと手と繋いでいた3人が2人に挨拶を返す。
その様子に、クラーラとイルゼは穏やかな笑みを浮かべて、
「自己紹介できて無かったね、クラーラっていいます。よろしくね」
「私はイルゼよ。よろしく」
自己紹介をすると、
「サール!」
「ソル!」
「ヴィアンシエル…。ヴィアンって…呼んで、下さい」
ルミルフルと手を繋いだ状態で3人が挨拶をする。
その微笑ましい光景に、
「癒されるなぁ~」
「可愛いわ~」
クラーラとイルゼはえへへと笑いながら彼女達を見る。
そんな様子を見て、
「えっと、さっき凄く怖い顔をしていたけど、大丈夫ですか?」
ルミルフルは少し彼女達の事を心配しながらそう聞いてみる。
すると、ルミルフルの質問を聞いたクラーラとイルゼは、
「「あ、あはは……」」
2人で乾いた笑い声をあげて、
「私達の知り合いが探しに来たんじゃないかと思っちゃってね。今ここにいる事がばれたら、それはもう恐ろしい事になるから」
「そうだよね……。改めて考えると、結構マズい事してるよね」
ルミルフル達に説明をすると、最初は笑っていた彼女達の笑い声がどんどん元気さを無くしていき、その代わり今の状況に頬が引き攣っていく。
その様子を見ていたサールとソルは、
「だいじょうぶ?」
「げんき出して」
そう言ってクラーラとイルゼを励ます。
2人の励ましの言葉を聞いたクラーラとイルゼは、近づいてきたサールとソルの頭に手を乗せて撫でながら、
「だ、大丈夫大丈夫!少し怒られると思うし、これまで以上に厳しくなるかもしれないけど…」
「そうそう!ちょっと今以上に走らされるだけだと思うし…」
これから先の自分たちの未来の姿を想像して、語気が弱まっていく2人。
そんな2人の様子を見ていたルミルフルは、
「いったい何から逃げてきたの?」
2人にそう質問をする。
ルミルフルに質問されたクラーラとイルゼは周りの様子を少し警戒して見回した後、
「私達、いつも草原島っていうこの塔の周りに浮いてる島の中の一つの島に住んでるんですけど、ここに来てからご飯食べては寝て、ご飯食べては寝ての繰り返しだったから、その…太っちゃって…」
クラーラがルミルフルの質問に素直に答える。
だが、その言葉を聞いたルミルフルはキョトンとした表情をしながら、
「失礼かもしれないけど、見た感じそこまで太っていないように見えるのだけれど?」
そう言うと、クラーラとイルゼは顔を見合わせて笑い合い、
「元々が痩せ過ぎてたのもあるんだけど、それでも肉付きが良くなり過ぎて不安になっちゃうんだよね…」
「うん、心の中で大丈夫だって思ってはいるんだけど、どうしても漠然と不安になって夜が眠れなくなっちゃうし」
そう言うと、
「ケーキ…」
「シフォンケーキ…」
ルミルフルと手を繋ぎながら呟いたサールとソルの様子に改めて皆は気づき、ルミルフルとクラーラとイルゼは純粋な呟きに苦笑をし、ヴィアンも少し表情を和らげる。
ルミルフルはサールとヴィアンから手を放し、
「お菓子、貰ってきて良いわよ。ごめんね長話しちゃって」
そう言うと、サールがうん!と元気に返事をしてヴィアンの手を握ると、3人は仲良く注文をしに歩いていく。
そんな3人の後ろ姿を見守りやや遠くなると、
「貴女達がどういった経緯でここへ来たのかは分からないけれど、同じ場所に住む隣人として少しアドバイスとまでは言わないけど、私の思った事を言っても良い?」
ルミルフルは振り返って、クラーラとイルゼにそう言う。
その言葉を聞いた2人は少し緊張した表情をして、
「何でしょうか?」
「何ですか?」
ルミルフルの言葉を待つ。
そして、
「漠然と不安になっているのは、やっぱり何かしらの理由があって不安になると思うの。例えば、明日には出ていけって言われて放り出されるかもしれないっていう不安とか、もしかしたら今塔の周りを優雅に飛んでいるモンスターに食べられるかもとか、自分達でも些細だけれど気にしている事とかあると思うの。でも貴女達よりもここに来て過ごした時間は短いけれど、ハッキリと言える事があるわ。それは、ここの人達は私達に危害を加えるつもりはない事と、貴女達は今のままでも十分魅力的だと私は思うわ。痩せる必要がない様に見えるし、無理をして仲が悪くなる方が駄目だと思う。簡単な事では無いかもしれないけど、貴女達を探しに来るかもしれない人と、しっかりと腹を割って話した方が良いと思う」
ルミルフルは自分が感じた事を、クラーラとイルゼに素直に話す。
その言葉を聞いたクラーラとイルゼは、
「しっかりと話す」
「皆と、腹を割って…」
ルミルフルの言葉を心に浸透させる様に、小さな声で呟く。
ルミルフルがそんな2人の様子を観察していると、
「もらってきたー!」
「おいしそう!」
「あ、危ないから…足元、気をつけて…」
後ろからお菓子を取りに行っていた3人の声が聞こえて振り返ると、シフォンケーキの乗った皿を嬉しそうに持って来た3人の姿が目に入る。
サールは少しトッピングを乗せ過ぎたのか、シフォンケーキの姿がトッピングで見えない皿を両手で持っている。
ソルの手には、適量のシフォンケーキとトッピングの量が乗った皿を片手に一枚ずつ持っている。
ヴィアンは、片手に負担にならなそうに気持ち少なめのシフォンケーキとトッピングがされている皿を大事そうに持って来ていた。
「しっかりと3人で行って来れたのね。偉いわ、それじゃあ席に座って食べて良いわよ」
ルミルフルがそう言うと、
「これは、お姉ちゃんの。一緒に食べよ?」
ソルがそう言って一枚の皿を差し出してくる。
てっきり両方食べるモノだと思っていたルミルフルは、ソルの気遣いに嬉しく思いながら、
「ありがとうソル。じゃあ、一緒に食べましょうか」
感謝の言葉を3人に伝えて、席に座った。
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