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102頁

本の中の世界(ワールドブック)、塔では………。


「流石にこれ以上名前が無いのは、色々と不便だし貴女達も名乗れる様になって欲しいから、数日悩んだけれど今日決めたいと思うわ」

「「はーい!」」

「よ、よろしく…お願いします…」


魔王の娘ルミルフルが塔の借りている自室に2人のメアリーと名無しの少女を連れてくると、3人をベッドに座らせて、自身は3人の前に立って腰に手を当てる。

ベッドに座っている3人はルミルフルの顔を見つめ、彼女の反応を窺う。

ルミルフルはその視線に更にプレッシャーを感じ、どの様な名前にしようかと考える。


「名付けなんて、子供が生まれる時に考えるモノだと思っていたけど、まさかこんなにも早く子供の名前を考える事になるなんて…。こんな事になるなら、もう少し私の名前の由来とか聞いておくべきだった…」


ルミルフルがそう呟くと、


「由来って何?」


片方のメアリーが、ルミルフルにそう質問をした。

メアリーの言葉を聞いたルミルフルは、少し難しい顔をして、


「そ、そうね。例えば私の名前はルミルフルだけど、それをどのような意味とか、どんな風に成長して欲しいかって考えてくれて名前を付けてくれたの。それが、名前の由来って覚えてくれたら嬉しいわ」


何とか自分の覚えている範囲で分かりやすく説明をする。

だが、その質問をしたメアリーはまだ分かっていないのか首を傾げている。

その様子を見たルミルフルは、苦笑をしてメアリー2人と名無しの少女の顔を見回し、


「これから付ける名前に、私は貴女達にこうなって欲しいと思ってるって事よ。あまり深く考えなくても大丈夫だから」


そう言って3人から離れた瞬間、ルミルフルの心に支えていたモノが無くなる様に感じた。

難しく考えすぎていた。

今私が言った様に、この子達にこれからどうやって成長して欲しいのか、純粋な願いを込めればいいんだ。

ルミルフルはそう思うと、


「メアリー・サール」

「メアリー・ソル」

「ヴィアンシエル」


3人を指差しながら、彼女達の名前を呼ぶ。

すると、


「さーる?」

「そる?」

「ヴィ…ヴィアンシエル…」


名付けられた3人は確認する様に自分達の名付けられた名前を復唱する。

そんな3人に、


「そう、サール、ソル、ヴィアンシエル」


ルミルフルは彼女達の心に刻み込む様にしっかりと名前を呼ぶと、メアリー・サールの頭に手を当てて、


「魔族の古い魔法語の意味で、陽の光って意味。暖かくて、皆を照らしてくれる無垢な貴女にぴったり」


そう言うと、今度はメアリー・ソルの頭に手を当てて、


「ソルもサールと同じ意味だけど、もっと詳しい意味をしているわ。陽の光が燦々と照りつけて、光り輝いている事を言うわ」


そう言うと、2人のメアリーは互いの手を握り、


「ソル」

「サール」


そう呼び合った。

すると、名前を呼び合うのに慣れていない2人は照れくさそうに笑い合い、互いの名前を呼び続ける。

その様子に自身の名前のセンスはとりあえず大丈夫かなと安心して、次に名前を言い辛そうに何回も復唱しているヴィアンシエルの火傷痕が残っている頬に触れると、


「ヴィアンシエル、意味は無垢、清らかな、穢れなき美しさって意味よ」


優しく頬を撫でながらヴィアンシエルにそう言う。

ヴィアンシエルが言葉を話そうと口を開いた瞬間、


「少し名前が強く見えてしまうのは、ごめんね。魔族寄りの名前になってしまったけれど、貴女にはこの名前が良いと思ったの。怪我をしているから、片腕を失っているから、火傷の痕が残っているからとか、貴女は言いたいと思うわ。でも、そんな過去があっても、貴女は最後まで諦めなかった強い子よ。意味も、私は貴女を見てそう感じたの。…それとも、気に入らなかった?」


ルミルフルは彼女が言葉を発する前に遮り、名前の意味を説明する。

彼女の外見に似合わずに、強そうな名前を選んでしまった事に対して駄目だろうかと心配をすると、


「……ありがとう、ございます」


ルミルフルの言葉を聞いたヴィアンシエルは、溢れてしまいそうな涙を瞳に溜めながらお礼の言葉を口にする。


「ゔぃ…ゔぃあーにゅえる?」

「ゔぃあんしーる」


すると、隣で名前を呼び合っていたサールとソルがヴィアンシエルの名前を呼ぼうとして、呼び辛そうに顔を顰めてながらなんとか名前を呼ぶ。

その言葉を聞いたルミルフルは、


「まだ呼びにくいわよね…。とりあえず呼べるようになるまで、ヴィアンって呼んだらいいと思うわ」


サールとソルにそう言うと、


「「ヴィアン!」」


2人は声を揃えてヴィアンシエルの名前を呼ぶ。

その言葉に、ヴィアンシエルは少し周りをキョロキョロと見回す。

その先には優しく微笑むルミルフルと、自分たちの名前を呼んで欲しそうにヴィアンシエルを見つめるサールとソルの2人。

そして、


「さ、サールちゃ…ん、ソルちゃん」


2人の名前を少し恥ずかしそうにしながら呼ぶ。

その瞬間、サールとソルがヴィアンに抱き着く。

そんな様子を見てルミルフルは3人が自分の付けた名前を嫌がっていない様子に安心する。

ルミルフルはヴィアンに抱き着いているサールとソルを眺めて少しした後、ふとある疑問が頭をよぎる。

聞いていいのか少し考えたが、いざという時に問題になる可能性と、彼女達の保護者の様な役割を担っている以上、ヴァルダに報告してもしなくても聞いておく必要があると判断し、


「サール、ソル。2人はどうして闇オークションに売られたか分かる?あそこは良くも悪くも貴重な者達が売られてしまうって聞いたわ。私は魔王の娘だし、帝都騎士団の団長に負けたけどそこそこ戦う力があるから、利用価値も商品としての価値もあったからあそこにいたのだけれど…。2人はまだ幼いのにあそこに売られたって事は、何かしらの理由があるんでしょう?」


意を決してサールとソルにそう質問をする。

ルミルフルの真剣な表情と質問を聞いて、サールとソルは少し思い出す様に頭を少し傾けると、


「たくさんのメアリー達がいて、本物を作り出すって言ってた!」

「サールとソルは、本物じゃないけど本物に近いから捨てられないで売られた!」


ルミルフルの質問にそう答えた。

あまりの話しに、ルミルフルは唖然としてしまった。


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