ハーピーの子供を拾った話。
ある日、仕事帰りの路地裏でハーピーの子供が必死にぴぃぴぃと鳴いているのを見つけた。
上を見ると彼女たちの巣が見えたが、子供の親は拾うこと無く子供を見ていなかった。
そういえば聞いたことがある。生後半年以内に巣から落ちたハーピーの子は死んだものと思われて無視されると。
それが分からないようで、ハーピーの子供は必死にぴぃぴぃと鳴いているが徐々にその鳴き声は泣き声へと変化していった。
オレは少し悩んだけれど……家に連れて帰ることに決めた。
「ぴぃー、ぴぃー……ぴっ!? ぴぃぃ~~!!?」
「あ、こら、痛! 暴れるなよ! おーい、この子貰うぞー?」
突然抱きあげられて驚いたのか、50センチのズングリムックリとした体型のハーピーの子供は暴れ始めた。
それを必死に抱き抱えながら、オレは巣に聞こえるように言う。すると勝手にしろと言う風に巣の中から翼が動いたのが見えた。
良いってことだろう。
そう思いながらオレは子供を連れ帰った。
「ぁいたた……。ほら、今日からここがお前の家だけど……言葉、分かるか?」
「ぴ、ぴぃ……ぴぃぃ……」
暴れ疲れたというのもあるだろうが、ハーピーの子供はオレを警戒しており、怯えたようにオレを見ていた。
そしてどうやら言葉はまだ理解出来ていない歳のようだ。
しかたないか。
「お腹空いてないか? お粥……は食べれるのか? スマホで検索してみるか……野良ハーピー、子供、育て方……お、あったあった」
スマホで検索するとあっさりとそれは見つかり、それを参考に子供用の餌を作る。
といっても、炊いたご飯に水を混ぜてドロドロにするだけだ。
というか……これで、良いんだよな?
そんな不安を抱きつつ、警戒してオレから離れようとする子供の前に置くとお腹が減っていたのかぐぅ~~と言う音を鳴らした。
「ぴ……ぴぃ……。ぱく……ぴ、ぴぃ、ぴぃぃ?」
「お、美味しいか? どんどん食えよー」
警戒しつつもご飯はキッチリ食べて安心した。
その日は、子供用にバスタオルを丸めた巣もどきを床に置いて見ると巣だと理解しているのか、子供は顔に粥をベッタリさせながらそこで眠りについた。……眠っているときに顔を拭うのはダメだろうから、明日だな。
オレはそう考えながら、自身の夕食を食べた。
それから一週間が過ぎた。
「ぴぃ、ぴぃ!」
「おー、元気になったなー。それに、少しは信頼してくれたのか?」
「ぴぃ?」
部屋の中を走り回る子供を見ながらオレが尋ねると、分かってないのか首を傾げる。
それを見ながらオレは久しぶりに笑った。
やっぱり仕事疲れには癒しが必要なんだろうなー……。
そんなことを思いながら、野良ハーピーを飼う場合に必要なことを調べる。すると役所に許可が必要だったらしい。
なので近い内に許可を取りに行こうと思う。
それに……こいつ用の日用品も買わないとな。
そう思いながらオレは子供の頭を撫でた。
「ぴぃ~♪」
嬉しそうに鳴いてくれた。
あ、役所に届けを出すときに名前も必要になるのか。
ぴぃぴぃ鳴くし……ピィかな?
半年が過ぎた。
「ぴぃ! ぱぱ、ごはん!」
「はいはい、ちょっと待ってろよピィ」
少し大きくなった翼を広げてオレに催促をするピィを見ながら、オレは彼女様にご飯を盛ると彼女の前に置いた。
「ありと! いただきす!」
「はい、いただきます」
笑顔で礼を言ってから、彼女はオレと同じように手を合わせて食事を取り始めた。
しかし、半年で育ったなー。
50センチのズングリムックリが、今じゃ1メートル小さなハーピーみたいな感じになってるし……。
あと、成長してようやく気づいた。
この子、ピィは女の子だったらしい。
下半身は羽毛で隠れているから分からないんだよ。でも、上は成長してようやく膨らみに気づいたから、女の子だって気づいたさ。
だからすぐにこの子用に上着を着せたね。
着せられた本人は嫌そうだったけど……。
「ぴぃ? ぱぱ、どしたの?」
「なんでもない」
首を傾げるピィへとそう言って、オレは食事を取り始める。
それを見たピィも食事を再開した。
この子はどんな風に成長するんだろうなー。ふとそんなことを思った。
1年が過ぎた。
バサ、バサっという羽ばたき音と共に、彼女の翼は大きく動き……彼女の体は浮かび始めた。
オレはそれをジッと見ていたけれど……、すぐに彼女は地面へと落ちてしまった。
「ぴぃ!? うぅ、お尻打っちゃった~……」
「またダメだったかー」
「うん、ごめんね。パパに良いとこ見せたかったんだけど……ダメだった」
しょんぼりしながらピィが言うので、オレは気にするなと頭を撫でる。
撫でられたピィは嬉しそうにしていたけれど、きっと巣から落ちた恐怖があるのだろうな……。
そんなことを思いながら、オレは彼女を見る。
1年で彼女の体は120センチほどになっていた。
髪も手入れが良かったのか、灰色ながら銀色に見える。
赤色の瞳も綺麗だ。
それに……胸が大きかった。
ハト胸と呼ばれるほどにハーピーも種族によっては大きく育つのも居るのだろうな。
そう思っていると、ピィはオレの手をぎゅっと握ってきた。
羽毛がふわふわで柔らかい。
「パパ、もし……ピィが飛べなかったら、ピィを見捨てない?」
「見捨てるわけないだろ? そうだったら初めから拾わない」
「ピ、ピィ……パパ、ピィ、嬉しい……♥」
オレの言葉が嬉しかったようで、ピィは嬉しそうに微笑んだ。
そこでオレは気づくべきだっただろう、この子は今オレに発情してしまっていたのだと……。
その日の夜、寝ているオレに被さる感触を感じ、目を覚ますとピィが圧し掛かっていた。
起きたことに気づいたピィは、瞳を潤ませながらオレへとこう言ってきた。
「ピィ……♥ パパ、ピィねパパの子供欲しい……♥」
その瞬間、行けないと思いつつもオレは娘のように育てていた彼女と一夜を共にしたのだった。
●
……それから、数年が経った。
ピィは今もオレの側に居る。
そして、その周りには彼女とオレの子供たちが居た。
子供たちは幸せそうだし、オレも幸せだ。
ピィは……もちろん幸せだろう。
「パパ、だーい好き?」
「ああ、オレもだ」
そう言ってオレとピィ、子供たちは楽しそうに笑うのだった。
突発的に気がついたらツイッターで書いてました。そしてあげてました。
そして、なろうにもあげていました。
どうしてだろうね……。