ケルベロス、買い出しから戻る 7
「しかし、だからッスかね? ハーデス様に良いイメージが少ないのって」
「ゼウスの変なアドバイスの所為、ってこと?」
うーん、とハーデスはゲームのコントローラーから手を離して考える。
まあきっと、冥界、という場所のイメージが原因だろう。確かにここは地下の国。基本的に暗いし、死者の魂を集める、ということで明るいイメージは持たれていない。
ハーデスもそれは理解しているだろう。そうだねえ、と前置きを作る。
「普通の人って、死ぬことに対して前向きなイメージはないよね。冥界だって、地獄とイコールで思ってる人は多そうだし」
「でも、実際は違うッスよね」
「うん。我の国は確かに死者ばっかりだけど、きちんと天国と地獄があるからね」
前者はエリュシオン。冥界において最も美しい場所であり、生前に善行をつんだ魂はこちらへ向かう。人々の認識から言えば、これが天国に当たる。
後者はタルタロス。かつてゼウスやハーデスと争った巨神族などが封じ込められている場所で、生前に悪行を詰んだ魂はこちらへ、つまるところは地獄だ。
で、そのどちらにも該当しない者はハーデスの元で暮らすことになっている。主人が主人なので、近代的な生活をすることも可能――かもしれない。