表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥界王だって働きたくないでござる! ~ハーデス様の素敵な引き籠りライフ~  作者: 軌跡
第三章 女神に公共のルールを求めてはいけない
75/79

取り戻せアンケート! 10

「カナートスの泉で身体を清めてくるがよい。あの時のお主は、どの女神にも劣らぬ美しさよ」


「ほ、本当? み、見たい?」


「無論だ。ワシは誰よりも、身を清めたそなたの美しさを知っておる。男として無視できるわけがあるまい?」


「そ、そう。なら仕方ないわね」


 ヘラは満足気に頷くと、ゼウスと腕を組んで去っていった。

 残された面々は、彼女の変貌っぷりに唖然とするしかない。


「ゼウス、適当なこと言ってなかったかな……?」


「それで籠絡ろうらくできる辺り、ヘラ様もゼウス様には弱いってことですね。そう、まるで私達のように!」


「そ、そうだね」


 ともあれ、最大の危機は去った。

 ペルセポネとアプロディテの勝負も決着したようなものだし、これでハーデス達は冥界に戻れる。


「でも駄目よー? まだ、私には切り札があるですからねー!」


「クソビッチが何か言ってますよ、旦那様」


「ちょ、ちょっとペルセポネちゃん!? その呼び方は酷くない!?」


「いいえ、正常です。だって私達、アドニス君を奪い合う敵でしょう? 罵倒し合うのは当然だと思いますが……」


「そ、それもそうね。だったら私も、本気で相手をするわー!」


 高らかに宣戦布告しながら、彼女が取り出したのは一本の矢だった。

 金の矢じりを持つソレは、生殖の神エロスに由来する品。


「ふふふ、コレが突き刺さると、その人は恋の炎に燃え上がるの! だからハーデスちゃんへ使って、私の虜にさせて――」


「ていっ」


 ペルセポネは、いつの間に近づいたのか。

 効果を説明するアプロディテから、容易く矢を叩き落す。

 落ちた矢は美の女神に刺さり、辺りの空気も静まり返った。


「あ、あ、ああ……」


 まさかの展開に、ワナワナと震えるアプロディテ。してやったり、とペルセポネは嘲笑を浮かべている。

 果たして、矢の力はどのように発揮されるのか。

 アプロディテは小さく震えたまま、自分の両手を見つめながら言う。


「なんて美しいのかしら、私……」


 彼女の口から出てきたのは、普段とあまり変わらない台詞だった。


「この手も、指も、足も、顔も! 惚れ惚れするわ……ああっ抱きしめたい!」


 などと。

 身を悶えさせながら、自分で自分を抱きしめている。

 もうハーデスとペルセポネのことは眼中にないようだ。意味のない一人芝居を続けて、彼女を助けようとする神もいない。


「さて、帰りましょうか」


「え? い、いいの?」


「しばらくすれば元に戻りますよ。確証はありませんけど」


「不安しかない……」


 まあ本来の目的は達成したのだ。天界に長居する必要はない。

 本心からの安堵を零して、ハーデスは踵を返す。


「……ところで我が王。私とケルベロス殿は、同行する必要があったのでしょうか?」


「え、えっと……」


 アイアコスはいつも通り真剣かつ、悪気のない表情で問いかけている。

 ハーデスは必死に考えるが、手頃な答えなど見つかる筈もなく。

 とりあえず謝罪して、一件落着? となるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ