こっち来ないでください! 9
ちょっと失望の眼差しで彼を見つめながら、ハーデスは辺りを見回す。
ハーデスとケルベロス、アイアコスの他にいるのは、判決待ちの死者ばかりだ。みな生気のない表情で、待ち受ける裁きに戦々恐々としている。
「……なんだか、誤解されてる気分だなあ。我、彼らにヒドイことしないよ?」
「まあ先入観というやつです。こればかりは、我らでも解決できません」
「むむ……」
珍しく、ハーデスは腕を組んで考え始めた。
先のアイアコスの判決を受け入れる気は、あまり無いように思われる。今考えているのは、代案となるべきコトだろう。
これだけ大勢の人がいれば、公平な判決が下せるのでは――
ハーデスの横顔からは、そういう真面目な考えが見て取れた。
「よし、アンケートを取ろう」
「あ、アンケートですか?」
「そう。これから判決が下された人に、セポネ達の中で誰を支持するか聞くんだ。もちろん事情も説明してね」
「おお、それは良い考えです。アドニス君についても、私の方で話を聞きましょう」
「……事実を歪曲しないようにね」
「ええ、努力します。クク……」
では、と。
信用できない台詞を残して、アイアコスは自分の仕事に戻っていった。