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こっち来ないでください! 8
「あ、あれ? 前フリは必要だったの?」
「雰囲気ということにしておいてください。――しかし、ハーデス様もそうだとは思いませんか? アプロディテ様は言ってしまえば、彼を拾っただけでしょう?」
「まあそうだけど……ほら、恋人関係、って考えればさ。アドニス君がアプロディテに時間を使うのも、自然じゃないかな?」
「ふむ、確かにそうかもしれません。ですがアプロディテ様は、自分が母親だと主張しておられるのですよね?」
「うん、そう言ってた。母親みたいなもんだ、って」
「でしたらアプロディテ様を糾弾すべきでしょう。ヘラ様については、そこで収まるでしょうし」
「そっか……って、アドニス君の意見はどうするのさ? 彼にも聞いた方が――」
「ハーデス様」
がっしりと冥界王の肩を掴むアイアコス。
いつもの彼とは思えないぐらい、怖い表情で語り始める。
「裁判において有利なのは、自分に好都合な事実を叩きつけ、そのまま勝ち逃げすることです」
「き、君からそういう台詞は聞きたくなかった!」
「人には誰しも闇があるのですよ。フフフ……」
アイアコスの株価、暴落。