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こっち来ないでください! 6
直後に溜め息を零したのはアイアコスだった。生前を思い出しているのか、その顔には怒りがにじみ出ている。
「アイアコスはやっぱり、ヘラのことが嫌いなの?」
「好きにはなれませんね。私の民は、あの女神によって殺されました。それもただ殺されるだけではなく、少しずつ少しずつ追い詰められていったのです。簡単には許せません」
「だよねえ」
餓死。
ヘラはアイアコスの出生から彼を憎み、彼が統べる島に無数の毒蛇を向かわせる。
これによって島の川は、疫病が蔓延する毒の水に。さらにヘラは追い打ちをかけ、猛烈な日照りによって島の環境を乱しに乱した。
「我が民は、渇きと飢えに苦しみました。しかし川から水を汲もうにも、ヘラ様が放った毒蛇によって汚染されて……仕方なく、酒を飲むことにしたんです」
「……でもお酒って、利尿作用があるから体の水分無くしやすいんじゃなかったっけ? アルコールがどうとか」
「まあ、確かに」
逆効果でしたとさ。