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ケルベロス、買い出しから戻る 5
「まあさ、義妹――いや、義母? まあとにかく、デメテルには誤解されちゃうしさ。新婚直後は大変だったよ」
「そりゃあ、攫われた、って噂が流れればねえ……」
そう、デメテルはゼウスの妻だ。
そのためペルセポネはハーデスの姪なわけで。人間界だったら、白い目で見られてもおかしくない。まあ神々に人間の道徳観なんて関係ないのだが。
「でも仲直りしたじゃないッスか。デメテル様と」
「まあね。彼女、冷静になってからさ、あの心優しいハーデスが誘拐なぞするわけがない、って言ってくれたんだよ。いやあ、あれは嬉しかったね、うん」
「ヘタレの間違いじゃないッスか?」
「……」
意気消沈するハーデス。
しかしこの主人を見ていると、本当にその表現が会う。引き籠りだし、仕事サボるし、ペルセポネと手を繋ぐだけで顔赤くするし。
いや、純情、と褒めた方がいいんだろう。彼が女性の扱いに不慣れなのは、けっこう有名な話だ。