こっち来ないでください! 2
「んー、どういう勝負にします? 前回は私が勝ちましたしー、ヘラちゃんが決めていいですよー?」
「ぐっ、相変わらずムカつくやつね……」
「……」
人の部屋に押し入って、さらに主導権を奪った人の台詞だろうか。
気持ちが重なったのか、冥界夫婦とその愛犬が目を合わせる。
触らぬ神に祟りなし。ここまで来ると、傍観者に徹した方が良さそうな気がする。
「じゃあまず審判員から決めましょ。ゼウスは確定ね」
「あー! ヘラちゃんズルい! じゃあ私はアレスとヘパイストスを呼びますからねー!」
「はっ、上等よ。母親であるアタシに味方するに決まってんだから」
「むむっ」
ここに来て、アプロディテの表情が崩れる。いや最初に気付けよ。
まあアプロディテが特に親しい人物を呼ぼうとすると、あの二人を外すことは出来ないだろう。ヘラが言った通り、どちらもゼウス夫妻の子供なのだが。
「おら、他に人はいないわけ? いないんだったら、ゼウス・アレス・ヘパイストスの三人で行くわよ?」
「……いいえ、ここは当初の予定通り、ハーデスちゃんに頼みましょ!」
「う、うわああぁぁぁあああ!」
とりあえず。
ハーデスは全力疾走で、部屋から逃げることにした。