迷惑千万な女神たち 7
「まったく、どういうことですか。一年の三分の一を自由に出来るのに、それを養育者である私に使わないなんて」
「うふふ、それだけ彼が私のことを気に入っていたのよー。普通の道義を無視するぐらいにねー」
「そこは叱ってくださいよ! アドニス君が貴女みたいになったらどうするんですか!?」
「なるわけないでしょー。あの子は、私のことが一番好きなの。――分かったかぁ? 小娘」
「むっきいいぃぃいい!」
どうも、二柱の対立は収まりそうにない。
しかしハーデスは、我関せずを貫いていた。どうせ目隠しされているし、黙っていれば大丈夫という魂胆だろう。
「だいたいー、ゼウス様が決めたことでしょ? アドニスは一年の三分の一を、それぞれ私、アナタ、自分の自由に使える、って」
「ええ、そりゃそうですよ! でも礼儀を教えないでどうするんですか!? 普通、最後の時間は育ての親である私のところで過すべきですっ! ――旦那様もそう思いますよね?」
「えっ」
予想していなかった変化球。
相変わらずペルセポネに密着されたまま、ハーデスはうろたえ始めた。
「わ、わわ、我に意見を求めるの!?」
「当然です! 旦那様、あの子と面識あるんですから! どっちが正しいのか言ってください! ま、もちろん私でしょうけど?」
「う、うう……」
あまりにも恐ろしい選択である。
ペルセポネを裏切るのはもちろん、アプロディテだって敵に回せばどうなるか。ギリシャの女神はしつこいのがお決まりとも言えるし。