迷惑千万な女神たち 6
「わ、我的にはご遠慮願いたいです……」
「えー、どうして? 冥界で暮らせば、死を恐れる必要はないでしょ? だから冥界でも一番綺麗なエリュシオンに、まとめて移住しようと思うの! 名案でしょー?」
「いやまったく」
そもそも殺される側にすれば、迷惑なだけのような気がするが。
しかしアプロディテは引く気配がない。自分の案をよっぽど気に入っているようだ。
「旦那様、私は絶対に反対ですからね。アプロディテ様は、トラブルを持ち込むことにしか能がないんですから」
「ちょっとペルセポネちゃーん? どうしてヒドイこと言うの?」
「事実を述べただけです」
まったく、と嘆息交じりに、ペルセポネは美の女神を非難する。
「貴女は以前もそうでした。私の可愛い可愛いアドニス君のときだって……」
「どうしてー? あの子は、私が母親のようなものよー?」
「育ての親は私ですっ!」
ハーデスの目を押さえたまま、ペルセポネはしかと言い切った。
アドニスとは、ギリシャ神話でも一番の美少年と呼ばれる男性のこと。アプロディテは美しい彼に一目惚れし、その養育をペルセポネに託したという経緯がある。
問題だったのは、このアドニスをペルセポネが気に入ってしまったということだ。