迷惑千万な女神たち 5
「ぶー、ひどくない? 神様に人間の法則を当てはめるなんてー!」
「い、いや、だったらどうして運転免許取ったのさ……」
「だって乗り方が分からないと困るでしょー?」
それはまあ、そうですけど。
正論っぽいことを言われて、ハーデスはどう答えたものか迷っていた。
しかしここでアプロディテを説き伏せれば、先ほどの妙な事件も止まるんだろう。面倒事を避けたい冥界王としては、食い下がること大切だった。
「あ、アプロディテさん? あのですね、不用意に人を殺されると、我は迷惑っていうか……」
「露骨に媚売ってますね」
「まあハーデス様ッスから」
「おお、素晴らしい説得力です」
変な意味で、人望があるというべきか。
ハーデスは冷や汗を流しながら、アプロディテの反応を待っている。ほんのりと顔を赤くしているのは、女神が持つ魅了の力に引っ掛かっているからだろう。
危機感を露わにしたのは、必然的にペルセポネだった。
「いけません旦那様! 目隠ししましょう、目隠し!」
「め、目隠しって……ちょっとセポネさん!? 当たってる! 当たってるんですけど!?」
「ふふ、ナニがですか?」
「そ、それは……」
純情ボーイには、答えることなんで出来なさそうだ。
ともあれ、話は再び進み始める。背後から嫁が密着しているハーデスは、それどころじゃなさそうだけど。
「え、えーっとさ! アプロディテはどうして事故を起こしたりしてるのかな!?」
「ふふん、それはねー? 私の気に入った子たちと、冥界で生活するためなのー!」